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第II章 障害者自立支援法による生活への影響
1. 『障害者自立支援法の施行による、生活への影響』アンケート
『障害者自立支援法の施行による、生活への影響』アンケート
 障害者自立支援法が4月に施行され、障害程度区分の判定が行われ10月から本格施行されました。障害者自立支援法施行より半年以上が経過し、施行前からの不安、施行後、障害者自立支援法の課題や問題点が浮き彫りになっています。障害のある人たちの地域生活の移行支援について、障害のある人の住まい(住むこと、住んでいる所(家):在宅・施設・ケアホーム・グループホーム・福祉ホーム等々)、暮らしの場(生活の場、家計、生活状態など)は、自立支援法の福祉サービス体系に変わり、障害のある人の生活へどのような影響や負担を与え、どのようなことが変わったのか。地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれているのか。障害のある本人、家族、支援者の皆様から活動事例やケース事例をお伺いいたします。
 
対象者:研修会参加者、講師、グループホームの運営にたずさわる方、障害者福祉に関係する方々など
※アンケートの回答は、例えばグループホームの施設長、支援員の視点から入居者を対象に、父母の視点からご回答頂く。
 また、ご本人からの意見などもご回答頂く。
 
アンケート内容:
I. 障害者自立支援法の施行による生活への影響や負担
 新しい制度に変わり、障害のある人の生活にどのような影響や負担を与えていますか。
例えば:自立支援法の施行前と施行後の生活の比較。
利用する福祉サービス、日中活動等で影響や負担を受けていることなど。
グループホーム等の入居者が受けている影響や負担。
 
II. 地域での支援(団体、施設、支援者及び行政等の取り組み)
 地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれていますか。
1. 市区町村の独自の軽減策や施策はありますか。
例えば:行政施策として取り組まれていること。独自の軽減策。
 
2. 地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれていますか。
例えば:地域の関係者が取り組んでいる支援。相談支援、グループホームにおける支援、日中活動支援、施設が取り組んでいること。
 
III. 地域生活移行支援 活動事例/ケース事例
【活動事例】
例えば:グループホームにおける支援。体験や地域の資源の充実。
入所施設のない地域で地域生活を支える資源づくりを進めている。
家族と暮らす在宅障害者の自立生活体験を実施している。
【ケース事例】
例えば:簡単なプロフィール(年齢・障害・現在の生活場所など)
地域生活移行の経過(体験談等)
事例を通じた課題提起
(地域生活を送る中で何が必要か。課題は何か。どんな支援策が必要か。)
 
[北海道伊逹市では]
II. 地域での支援(団体、施設、支援者及び行政等の取り組み)
 地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれていますか。
 
1. 市区町村の独自の軽減策や施策はありますか。
北海道も伊達市にもない。
 
2. 地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれていますか。
(1)日中活動支援
 知的障害者通所授産施設「ふみだす」で重度重複障害のある方を受け入れている。気管切開と胃ろうの方も利用しているため職員配置基準にはない看護士を配置している他OTも配置し、さらに週一回のPTによる訪問リハも無料で受けられる体制をとっている。活動は10名のボランティアに支えられながらレクを中心に組まれている。
 
(2)居住サービス
 重度重複障害者が入居利用できるケアホーム「野ぶどう」を平成17年12月に新築し開設。全館バリアフリー、各居室に洗面台を設置し生活場面では起床時から就寝時までマン・ツー・マンのホームヘルプサービスを付けている。
(※経過的居宅介護利用型共同生活介護事業の指定)
 
(3)ホームヘルプサービス
 重度重複障害児者や知的・身体障害児者を利用対象とした居宅介護・重度訪問介護・行動援護のホームヘルプサービスを実施。
 
(4)福祉有償運送サービス
 重度重複障害児者や知的・身体障害児者を利用対象とした登録制の福祉有償運送サービスを実施。遠距離の通院等に利用されている。
 
III. 地域生活移行支援 活動事例/ケース事例
【活動事例】
 経過的ケアホームの開設運営と通所授産施設で重度重複障害者の日中活動の受け入れを行っている。
 また、北海道の単独事業として障害者地域生活体験事業の指定を受け(道内3ヶ所)バリアフリーの2LDKの住居で在宅の障害者及び高等養護学校3年生(重心が中心)の生活体験を実施している。今年度は180日の体験利用者があり、来春は養護学校高等部から直接経過的ケアホームに移行する予定である。
 
【ケース事例】
(1)ケース紹介
S.Kさん 22歳 男性 伊達市出身
原発性免疫不全、脳性麻痺、てんかん、言語障害、気管切開、胃ろう
四肢麻痺、身障手帳1種1級、療育手帳A、全介助
重度包括支援の対象者
所得収入(障害年金83,000円、特別障害者手当25,000円)
家族と世帯分離しており個別減免を利用しているため定率負担は月額5,187円(通所授産、経過的ケアホーム、ホームヘルプ210時間)
 
 平成15年4月に札幌市内の養護学校からの直接伊達市内のグループホーム(住居の一部をバリアフリー化)に入居。現在は、経過的ケアホーム「野ぶどう」に入居し通所授産(19年度より多機能型に切り替え生活介護事業を実施予定)に通っている。ケアホームではホームヘルプサービス(重度訪問介護を月210時間)を利用。
 日々の吸引処置と胃ろうのための経管栄養を必要としている。経過的ケアホームでは訪問看護を週5日(原則週3日だが有期限で現在は週5日)利用し経管栄養の処置をしてもらい、吸引については小児科医から指導を受けたヘルパーが本人・家族から同意書をとり対応している。
 
(2)重度重複の方が地域生活を送る上での課題
(1)必要十分な介助の手の確保
 現在は経過的居宅介護利用型ケアホームの指定を受けヘルパーによるマン・ツー・マンの介助を行っているが、19年度で経過的期間も終了するため人件費の確保が困難になる。自立支援法における新程度区分6における生活支援員の配置が2.5対1であり、とても必要十分な介助のできる生活支援員を配置することができず、年額で1,500万円前後の赤字となる予定。
 
(2)日常生活の中で医療行為を必要とする人たちの支援体制の確保
 S.Kさんは胃ろうのため訪問看護を利用しているが、本来、週3日、一日あたり3回となっている。現在は、主治医の特別指示書により週5日利用しているが長期間は利用できないことになっている。また、現在は気管と食堂の分離手術により一日2回となっているが、先般までは夜間も含め一日5回の経管栄養や水分摂取が必要であり、有償ボランティアの看護士や家族がケアホームにわざわざ来所し処置するなどしていた。
 重度重複障害者の方が地域生活を送るとき日々の医療行為を必要とする場合が多い。訪問看護がもっと利用しやすい制度に改善すべきであろうし、「どんなに障害が重くとも町のなかで〜」と理念やスローガンには看護士を配置できるだけの制度の充実が欲しい。
 
[青森県内では(1)]
I. 障害者自立支援法の施行による生活への影響や負担
 新しい制度に変わり、障害のある人の生活にどのような影響や負担を与えていますか。
 障害者自立支援法での最も大きな影響は、1割負担です。特にグループホームから授産施設を利用している人にとっては、いまだに「働きに行くのにどうしてお金を取られるのかわからない。」といったことが聞かれています。グループホーム利用者は、4月以降、雇用されている人と福祉サービス(授産施設やデイサービス)を利用している人との負担の格差が大きく心配しています。
 また、負担の仕組みが難しく知的障害のある利用者にはほとんど理解できない状況です。例えば、自分が個別減免を受けられるのかどうか。個別減免がある場合の負担額とない場合の負担額の違い、サービスにより異なる負担額、障害程度区分によって負担が違うこと、社会福祉法人減免を行っている事業所かどうかで負担額が違うこと等々。これでは、自己選択・自己決定はできません。
 
II. 地域での支援(団体、施設、支援者及び行政等の取り組み)
 地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれていますか。
 
1. 市区町村の独自の軽減策や施策はありますか。
 私たちが住んでいる青森県の市町村は、1ヶ所も独自の軽減策を行っている自治体はありません。
 
2. 地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれていますか。
知的障害者通勤寮を中心として
 生活支援は、グループホーム、ケアホーム、法人単独事業の生活寮がある。
 就労支援は、就労生活支援センター、ジョブコーチ支援事業、法人単独事業の就労訓練施設、就労継続支援B型事業がある。
 余暇支援は、グループホーム利用者自治会の支援の実施、また地域関係者の取り組みとして、障害者によるボランティア活動、青年学級的余暇サークルがある。
 
III. 地域生活移行支援 活動事例/ケース事例
【活動事例】
 今年10月より、グループホームが新体系に移行し、住居の形態が緩和されました。最小単位2名からとなったため、以下の形のグループホーム、ケアホームになりました。
(1)一軒屋に6人タイプ
(2)一軒家に4人と一軒家に2人タイプ
(3)マンション1室を2人で使用×3室タイプ
(4)6世帯入居アパート(1世帯分2DK)に6人入居タイプ
 なるべく利用者の希望に合うよう努力している。
 
【ケース事例】
M.S 25歳 女性 知的障害
 高等養護学校卒業後、同じく知的障害のある妹と2人で暮らし、スーパーマーケットに勤めていた。(2人は児童養護施設を終えた)
 妹がしっかりしていたが、ちょっとしたことで別々に暮らすことになり、本人は通勤寮入所となった。その時、既に妊娠しており、勤めていたスーパーも辞めることになった。通勤寮入所中に出産、子どもを乳児院にお願いし、就労訓練の成果があり就職した。その後、子どもは里親に本人は生活訓練を継続している。
 現在、就労も安定し、生活面も落ち着いてきたため、グループホームヘの移行を目指し、準備している。将来は子どもを含めた支援の仕組みを作って一緒に生活できることを夢見ている。
 この事例からも、ひとり一人の課題に対応する仕組みづくりをしながら、それを拡大して全体の仕組みにしていくことが大切であると思う。
 
[青森県内では(2)]
I. 障害者自立支援法の施行による生活への影響や負担
 新しい制度に変わり、障害のある人の生活にどのような影響や負担を与えていますか。
 授産施設や更生施設に通う障害者は、工賃より利用料が高くなり、また食費もかかるため、利用回数を減らしている方も少なくない。それにより運営している事業所も経営が難しくなっている所もある。
 新体系と旧体系のサービスが混在しているため、自立支援法の中の日中活動が思うように利用できない状況。
 福祉サービスの利用料、医療費、消耗品など日常生活で最低限かかるものを支払うと、在宅・施設の方を問わず、余暇や自分の活動などで自由に使えるお金が1〜2万円しか残らないという方が少なくない。
 厚生労働省の試算した「手元に残るお金」と実際ではギャップがある。また、負担軽減策(特に社会福祉法人減免は預貯金等の申告が必要で、心理的抵抗感もあるため)十分活用されていない状況で利用者負担が重くなっている。
 
II. 地域での支援(団体、施設、支援者及び行政等の取り組み)
 地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれていますか。
 
1. 市区町村の独自の軽減策や施策はありますか。
 利用者の負担する地域生活支援事業の利用料は、国が定めた負担上限額の負担に収まるように上限額管理を行うことが決定している。
 
2. 地域での支援はどのようなことが、どう取り組まれていますか。
 多くの対象児が放課後利用していた児童短期入所の日帰り分が無くなったことと、児童デイサービスの存続が不透明だったことをきっかけに、児童を支援する事業者と親が行政へ働きかけを行うことを目的とした会が結成され、児童分野のでは地域の結束が強くなりつつある。
 
III. 地域生活移行支援 活動事例/ケース事例
【ケース事例】
40代後半、身体障害者(肢体)、施設入所、区分判定2
 地域生活を希望している。
 区分判定では施設入所対象者では、いずれなくなるため、経過措置期間内に地域移行したいと考えている。
 現在の生活の中では(収入:年金のみ)、生活費をいろいろ支払うと手元に残るお金が少なく、思うように貯金できない状況。また、地域生活においては年金で足りない部分を生活保護で補いたいと担当者に相談するが、生活保護支給を抑える傾向にあり、年金のみで暮らすようにと言われたと話す。
 経済基盤がなかなか整えられず、また地域に出たとしても経済的に余裕がないため、本人が希望する生活が本当にできるのか疑問が残る。
 地域生活移行がスムーズに行くためには、経済的基盤を整えるための施策が必要と考える。


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