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精神障害者の訪問看護実践
2006年10月20日(金)
社団法人 日本精神科看護技術協会
常務理事 仲野 栄
訪問看護の特徴と意義
病院という環境がもつ「治療的意味(枠組み)」;行動制限・代理行為
生活のしづらさを感じさせない空間に慣れる
自分の生活や治療について主体的に考える機会や体験を失う
 「やろうと思えばできる」と思っていた地域での生活
 ストレスの処理が苦手な精神障害者が「病気とつきあいながら自分らしく生活する」ということをリアルに考える作業につきあう
 
訪問看護の効果
(1)医療従事者側の効果
・患者を理解する上で貴重な情報を得る
(2)利用者側の効果
・日常生活上の問題解決技術を習得する
・受容される体験・自己表現・自己洞察
 ケアを一方的に提供するのではなく、看護者がたてたプランを情報提供という形で利用者に示し、それを利用者が主体的に選択できるようにする。
 
具体的援助内容
「地域での生活の中で生じてくる困難に対する具体的な関わりを通して、精神障害をもつ人に安心感を届け、周囲の人々とのつながりをもちながら、地域で暮らしていけるように支えていくこと。」
 
・病状の観察
・心理的援助(情緒的援助)
・服薬継続のための援助 
・金銭管理がうまくできない人への金銭管理
・通院を継続できるような教育・支援
・他診療科の受診指導や同行
・昼夜逆転しがちな人への生活リズムの維持
・閉じこもりがちの人と外出する等のリフレッシュへの援助
・職安に同行する等の就業・就学支援
・公共機関の使い方等の社会資源の活用援助
・対人関係能力向上への支援
・掃除・洗濯・食事等の家事援助
・食事のとり方や買い物の仕方等の日常生活上の指導及び援助
・今後の生活設計等に関する相談
・家族関係の調整
・家族の悩み事や不安の解消
・近隣とのトラブル時の対応
・社会生活する上での権利擁護 他
 
訪問看護のポイント
(1)リスクマネジメント
《性的トラブルなど》
患者−看護者関係の距離のとりかた
患者・利用者の双方の立場を明確化させる「Nsは何をしに行くのか?」
 
《不穏時や自傷他害の怖れのある時等の危機介入》
病院と訪問看護の役割の違い(訪問看護の限界)
介入困難になる前のケア提供=訪問看護
訪問看護の契約をとる
→利用者が恐怖を感じずに訪問看護を受けることができるようにする
*先を読むことの必要性
 
(2)正しい患者理解(病状の観察・アセスメント)
ストレス脆弱モデル・危機理論による患者理解
→観察・援助のポイント
情報収集の重要性;病歴(悪化時のエピソード・パターン)
過去最高レベル
*Nsでならなければならない部分
 
(3)インフォームドコンセントを行う際の工夫
精神障害者にはインフォームドコンセントが不可能という思い込み
精神疾患に対する医療従事者の偏見
精神疾患=特別な病気という考え
患者と病気のことについて話し合うことに対するNsの抵抗感
利用者の「判断能力」に合わせることができる「伝える技術」
精神科医療でこれまで曖昧にされてきた「契約」を見直す
*「選ばない」という選択


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