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第2章. 既往研究の成果、法令等
2-1 車いすの乗降・固定装置の現状
 本章では既往研究の成果を調査し、課題として明確になっているものと解決の方向性が示されている部分について整理した。
 
2-1-1 乗降装置(スロープ)
 
(1)勾配と長さ
(1)ノンステップバス(ニーリング中)と歩道の関係
 一例としてスロープの長さを、標準仕様で定められた105cm(L)として考えてみると次の例1、2のようになる。
 
例1: 停車時のステップ地上高24cm、道路面へ直接スロープ(1.05m)を展開した場合は、約14度、25%となり介助が必要で、電動車いすの登板能力(10度)を超えた傾斜となり、介助者の負担や危険性も大きくなる。
 
図2-1 ノンステップバスのスロープを路面へ展開
 
例2: 停車時のステップ地上高24cm、高さ15cmの歩道縁石ヘスロープ(1.05m)を展開した場合は勾配がかなり緩やかになり、約5度となり、介助無しで自力使用も十分可能である。
 
図2-2 ノンステップバスのスロープを歩道へ展開
 
注)長さ1.05mのスロープの勾配を電動車いすの登板能力10度以下にするためには、ステップと道路又は歩道との高低差を18cm以下にする必要がある。
 
 なお、歩道のない場所又は交差点等歩道の段差が切り下げられている場所において、スロープの勾配をゆるやかにするためには、長さの調節できるスロープ又は長さの異なるスロープを2本用意する方法もある。
 
(2)ワンステップバスと歩道の関係
 
例1: 停車時のステップ地上高55cm、道路面へ直接1.71mのスロープを展開した場合は、約20度、上部は約25度の急勾配となり、介助する乗務員がスロープを登りきるのにかなりの力を要する。
 
図2-3 ワンステップバスのスロープを車道に展開
 
例2: 停車時のステップ地上高55cm、高さ15cmの歩道縁石へ1.71mのスロープを展開した場合、歩道に接する下部は約13度に緩和されるが、上部は約25度の急勾配である。
 
図2-4 ワンステップバスのスロープを歩道に展開
 
(2)幅員、操作性、雨天時の滑り止め等
 スロープは手動式の可搬型、又は手動式引き出し型の利用が多い。
 
 
※ノンステップバス車両におけるスロープの事例
ステップからの引き出し型スロープ
 
引き出し型スロープを引き出しているところ
 
可搬型スロープ
 
可搬型スロープ(折りたたんだ状態)
 
可搬型スロープ収納箱
 
※ワンステップバス車両におけるスロープの事例
可搬型スロープ(ステップに収納されている)
 
ステップからの引き出し型スロープ
 
※欧州ローフロアバス車両におけるスロープの事例
バンホールA309・中扉のスロープ(電動)
 
バンホールA309・展開中の中扉スロープ
動作中は「ピーピー音」が鳴る。
 
ベンツCitaro(連節)・ノルウェー仕様
中扉のスロープ(手動)
耐荷重は基準以上の350kg。
 
ベンツCitaro(連節)・ノルウェー仕様
中扉のスロープ(展開中)
手すりは識別しやすい色。


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