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医療面の取り組み
私もハンセン病にかかっていましたが、
1992年に治りました。
この病気の人たちに伝えたいと思います。
自分自身を愛しなさい。
治療を受けなさい。
そして病気を治しなさい。
ハンセン病は治る病気なのですから
リャニ・クラウディア・バロス(ブラジル)
 
写真提供:フランシスコ・ファウスティーノ・ピント
 
ハンセン病とは
 ハンセン病は、らい菌(Mycobacterium Leprae)によって引き起こされる病気です。感染後平均3年という長い期間を経て主に皮膚や神経に症状が現れます。しかし、世界の人口の95%以上は生まれながらハンセン病に対する免疫を持っていますから、たとえらい菌が体内に入っても発病はしません。
 
病原
 ハンセン病はらい菌(Mycobacterium Leprae)による慢性の感染症です。らい菌は人の体内に入ってから長い時間をかけて増殖し、長い場合には20年も経ってから症状が現れることもあります。MDTによる治療を開始していない人との緊密かつ頻繁な接触が続いた場合には感染する可能性がありますが、ほとんどの場合自然に治り、発病するまで進むことは極めて少ない弱い菌です。
 
徴候
 徴候としては、白っぽいものまたは赤・赤褐色の皮膚斑紋があります。平らなものと、隆起したものがあり、かゆみは全くありません。たいていは痛みも伴いません。斑紋部の知覚は麻痺していて、温覚、痛覚、触覚がありません。身体のどこにでも現れます。
 
種類
 ハンセン病は大きく2種類に分けられます。
PB(Paucibacillary=少菌性)
 1〜5つの知覚麻痺の皮膚斑紋がある。
MB(Multibacillary=多菌性)
 5つを超える知覚麻痺の皮膚斑紋があるか、神経肥厚が2つ以上ある。
 
 何千年も昔から存在するハンセン病が本格的な研究、治療の対象となるのは、ハンセン病が細菌感染により引き起こされることが確認された1873年以降です。その後の100年余りの間にハンセン病医療は大きな変貌を遂げました。その間、以下に述べるようなハンセン病医学・医療上の幾つかの重要な進歩と展開がありました。
治療薬の変遷
〜1940年代
 インド原産の大風子の種から作られた大風子油が筋肉注射として広く使用されましたが、注射時の激痛、不特定の有効性、症状が再発しやすいなどの問題がありました。
 
大風子油
 
1943年〜
 プロミン(スルフォン剤)のハンセン病に対する有効性がアメリカ、カーヴィル療養所のファジェイ博士により1943年に確認され、「カーヴィルの奇跡」といわれました。
 日本では石館守三博士らの努力で1948年から導入されましたが、静脈注射を必要としたプロミンから有効成分を抽出して経口剤としたダプソンが、1950年代から世界的に使われるようになりました。1960年代〜1970年代に入りダプソンに対する耐性菌の発現が世界的に報告されるようになり、単独使用による危険性が議論されるようになりました。
 
プロミン
 
1981年〜
 単独使用によるダプソンに対する耐性菌の発現が確認されると、研究者は複数の薬剤を併用することにより耐性菌の発現を防ごうと、新しい治療法の開発を行いました。その結果、1981年、WHOの研究班により、リファンピシン、ダプソン、クロファジミンの2または3剤を併用する治療法が開発されました。MDT(Multidrug Therapy: 多剤併用療法)と呼ばれ、以降世界中で使用されるようになりました。MDTは現在でも最も効果的で、再発率は低く安全で、服用方法の簡単なハンセン病治療法です。
 
治療薬 MDT(Multidrug Therapy)
治療薬の種類
 少菌性(PB)の大人・子供用と多菌性(MB)の大人・子供用の4種類があります。
 1カ月分の服用量が1枚のブリスターパック(シート)に包装されています。裏には服用の順番に番号が書かれてあり、誰でも間違わずに服用できるように作られています。
 
服用期間
 少菌性(PB)の患者は6カ月。
 多菌性(MB)の患者は12カ月。
 
ブリスターパック
 ブリスターパックと呼ばれる薬剤パックは、成人・子供のそれぞれMB用・PB用の4種類に色分けされています。どの日にその薬剤を飲めばいいのか分かるように、裏面には1日目から28日目まで4週間の日付が記載されています。


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