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1 調査研究の概要
1 事業の目的
 海上安全の分野における国際的な動向を調査・研究し、もって我が国対応のあり方の検討に資することを目的とする。
 
2 方策
(1)IMO各委員会における審議結果の報告と対処方針の検討
(2)調査テーマに基づいた調査の報告と検討
(3)調査結果の発表
 
3 事業の年間実施結果
平成18年
4月27日
〈第一回委員会〉
・実施計画案の承認
・調査テーマ案の承認
・MSC81対処方針案検討
5月10日〜19日 MSC81
7月17日〜21日 NAV52
7月12日
〈第二回委員会〉
・MSC81結果報告
・NAV52対処方針案検討
・マ・シ海峡における新しい協力の枠組み構築に向けて
11月24日
〈第三回委員会〉
・NAV52結果報告
・MSC82対処方針案検討
・その他
*LRITの導入にかかる国際動向
*VMSセミナー概要
*「クアラルンプール会議」結果報告
11月29日〜12月8日 MSC82
 
平成19年
2月19日〜23日 COMSAR11
2月23日 ○シンガポールにおける小型船舶動静把握システム調査
3月8日
〈第四回委員会〉
・MSC82結果報告
・COMSAR11結果報告
・シンガポールHARTSに関する調査報告
 
2 IMO委員会
第81回海上安全委員会(MSC81)
1 日程
 5月10日(水)0930〜19日(金)1730
 
2 開催場所
 IMO本部
 
3 日本側参加者:41名
◎:本委員会所属者の出席者 ○:英国からの出席者
○在英国日本国大使館参事官 山上範芳
○在英国日本国大使館一等書記官 植村忠之
○在英国日本国大使館一等書記官 小磯 康
◎国土交通省海事局総務課海事保安・事故保障対策室長 大野秀敏
◎国土交通省海事局安全基準課課長 安藤 昇
国土交通省海事局安全基準課国際第一係長 矢加部文
国土交通省海事局船員政策課国際企画室長 鈴木史朗
国土交通省港湾局建設課国際業務室国際調整官 石橋洋信
国土交通省政策統括官付政策調整官付課長補佐 村上強志
◎海上保安庁総務部情報通信企画課専門官 小池貞利
◎海上保安庁警備救難部警備課課長補佐 渡部一夫
◎海上保安庁警備救難部警備課運用司令室運用官 有川 孝
(独)海上技術安全研究所研究連携統括主幹 今出秀則
(独)海上技術安全研究所国際連携センター長 吉田公一
(独)海上技術安全研究所構造・材料部門 構造基準研究グループ主任研究員 平方 勝
(独)海上技術安全研究所構造・材料部門 構造基準研究グループ主任研究員 岡 正義
◎(独)航海訓練所安全推進室室長 吉本誠義
大阪大学教授 矢尾哲也
◎日本財団海洋グループ海洋安全チームリーダー 海野光行
電気事業連合会  岡村 敏
(財)日本海事協会開発部部長 小西 煕
(財)日本海事協会開発部主管 有馬俊朗
(財)日本船舶技術研究協会技術顧問 篠村義夫
◎(財)日本船舶技術研究協会主任研究員 今井 新
(財)日本船舶技術研究協会主任研究員 岡部亮介
(財)日本船舶技術研究協会主任研究員 貴島高啓
(財)日本船舶技術研究協会(MHI) 北村 欧
(財)日本船舶技術研究協会(IHI MU) 佐々木高幸
(財)日本船舶技術研究協会(IHI MU) 中島喜之
(財)日本船舶技術研究協会(MHI) 郡 正信
(財)運輸政策研究機構国際問題研究所主任調査役 伊崎朋康
(財)日本海技協会調査部長 大久保尚
◎(社)日本船主協会海務部課長 宮坂真人
(社)日本塗装工業会国際部長 藤原治郎
(社)日本塗装工業会 吉川榮一
○(社)日本船主協会欧州地区事務局 中村憲吾
○全日本海員組合欧州事務所長 飯嶋雄二
○ロンドンジェトロ、ジャパン・シップ・センター次長 大坪新一郎
○ロンドンジェトロ、ジャパン・シップ・センター次長 山下裕二
◎(社)日本海難防止協会企画国際部国際室長 河野 優
○(社)日本海難防止協会ロンドン連絡事務所長 相馬 淳
 
4 議題
(1)議題の採択
(2)他のIMO機関の決定
(3)強制要件の改正の検討及び採択
(4)旅客船の安全
(5)海事保安の強化に係る措置
(6)ゴールベースの新造船建造基準
(7)船舶の設計・設備
(8)旗国の実施
(9)ばら積み液体物質と気体物質
(10)航行の安全
(11)復原性・満載喫水線・漁船安全
(12)危険物・固体貨物・コンテナ
(13)防火
(14)訓練及び当直
(15)無線通信及び捜索救助
(16)技術援助プログラム
(17)人的要因の役割
(18)フォーマル・セーフティ・アセスメント
(19)船舶への海賊と武装強盗
(20)規則の実施及び関連する事項
(21)他の機関との関係
(22)委員会のガイドラインの適用
(23)作業計画
(24)その他の議題
 
5 審議内容
(1)旅客船の安全(議題4)
 IMOでは、旅客船の大型化に鑑み、旅客船の安全性確保の取り組みとして5年来検討し、今次会合では、各小委員会からの本件に係る報告を集大成し、非常時の安全な帰港のための要件、安全センターの要件等に関してSOLAS条約改正案及び関連技術指針等が作成・承認された。また、本年3月に発生したStar Princess号の火災事故を契機として、旅客船の客室バルコニーの防火要件に関する改正案が緊急対策として作成・承認された。
 これらは、2008年7月1日の発効を目指して、次回MSCで採択予定である。
 一方、旅客船事故で多くの乗客乗員が海上を浮遊している場合等を想定して、人員回収装置を全船舶(SOLAS対象船)に搭載する改正案については、2012年7月1日以降の適用を目指し、当該装置の性能基準を設計設備小委員会で作成することとなった。
 
(2)海上セキュリティの強化(議題5)
 本年1月12日及び13日に東京で開催した「国際交通セキュリティ大臣会合」の結果の報告を日本から行うとともに、同会合で採択された海事分野の大臣声明に従い、コンテナ輸送のセキュリティ対策及びSOLAS条約非適用船舶のセキュリティ対策についてIMOでの検討を要請したところ、前者については簡易化委員会で、後者についてはMSCで検討を行うこととなった。
 
(3)海上保安の強化(LRIT関連)に係る措置(議題3及び議題5)
 海上セキュリティ関係の案件については、委員会としての方向性を決定した後、詳細な検討を行うためWGが設けられた。
 なお、WGにおいては、議長の提案により主要関係国(アメリカ、イギリス、ノルウェー、ブラジル、中国、ロシア、インドネシア)からなる小グループを設けられた。
 最終的に、次のような内容の条約附属書改正草案が合意され、委員会で採択された。
イ. 改正概要
(1)適用船舶:国際航海に従事する300トン以上の貨物船等
(2)現存船舶への設備搭載期限:
・2008年12月31日(A1、A2、A3海域航行船舶)
・2009年7月1日(A1、A2、A3に加えA4海域も航行する船舶)
(3)提供情報:船舶ID、位置及び送信日時
(4)船上からの情報送信の停止:
・安全又はセキュリティ上の理由に基づき、船長の裁量により、情報送信停止が可能(ただし、主管官庁への報告が必要)
・情報送信の停止は、機械的なスイッチオフだけでなく、データセンターおけるソフトウエアの措置等によっても対応可能
(5)対象範囲:
・旗国政府・・・全世界の自国船舶
・寄港国政府・・・自国に入港しようとする船舶(他国の内水内にある船舶を除く)
・沿岸国政府・・・自国の沿岸から最大1000海里内において航行する船舶。(他国の内水内にある船舶を除く。)ただし、他国の領海内にある当該他国籍船を除く。
(6)情報入手に係る通報:
 寄港国及び沿岸国は、情報入手に際して自国の設定する範囲をIMOへ通報
(7)旗国の拒否権
 沿岸国としての情報の入手権限にかかわらず、主管庁の判断によって、いつでも特定の国への情報送信拒否が可能
(8)通信費用:
 原則、船舶側の負担とせず、利用頻度に応じ締約国政府が負担する。ただし、捜索救助目的のための受信については、無料
 
ロ. LRITシステム構築のための作業計画
(1)LRIT Data Distribution Plan設立のための必要な情報については、2008年1月1日までにIMOに通報。
(2)International LRIT Data Center及びInternational Data Exchangeは、2008年7月1日までにシステムの試行及びテストを実施。
(3)LRIT Data CenterまたはInternational Data Centerは、2008年7月1日以降のできる限り早い時期、可能であれば、2008年10月1日までに運用開始。
(4)Data Center及びInternational Data Exchangeの設立に必要となる通信プロトコル、テスト手順、技術的な詳細等を検討するために、アドホック・タスクフォースをカナダの調整の下で開催することで合意。アドホック・タスクフォースの検討の結果は、本年11月に開催される次回海上安全委員会に提出される予定。
 
(4)航行の安全(議題10関連)
 NAV51の報告であったコロンビア提案の分離通航方式・避航水域については、技術的な見直しが必要との理由から、提案が取り下げられた。本件以外については、提案文書どおり承認された。
 また、マラッカ・シンガポール海峡の電子海図の発刊に関連し、シンガポールから国際水路機関及び日本の協力に対して感謝の意が表された。
 AISに衝突防止のためのアラームを追加するというエジプト提案に対し、多数の国が今回審議することは時期尚早との意向を示したため、委員会はエジプトに対しNAV52で新規作業計画として再度提出しても良いこととした。
 
(5)作業計画(議題23関連)
(1)ガリレオ受信機の性能要件の作成については、特段の議論なく承認され、今後NAVにて検討されることとなった。
(2)e-Navigation戦略の作成については、支持国多数により承認され、今後NAV及びCOMSARにて検討されることとなった。
(3)ECDIS(電子海図システム)の設置要件と訓練要件について、NAVの作業計画において2008年を目標年次とする優先項目とされるとともに、訓練当直基準小委員会の作業計画においてSTCW条約の包括的見直しの作業の中で検討することとなった。
(4)ドイツ提案の乗船中のアルコール制限の強制化について、今後訓練当直基準小委員会において、STCW条約の包括的見直しの作業の中で検討することとなった。


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