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II 平成18年度調査報告
1 ドイツ
ドイツにおける調査の概要
1 調査対応者
半谷 俊彦(和光大学経済経営学部助教授)
2 実施時期
平成18年10月〜11月
3 調査事項及び調査先
(調査事項)
・共同税と州間財政調整
・州財政の再建計画
・地方自治体の財政調整制度
・小規模町村の役割と財政
・その他
 
(調査先)
10月30日(月)・・・
ラインラント・プファルツ州財務省
マインツ市
10月31日(火)・・・
アイヒェンバッハ市
11月2日(木)・・・
ザールラント州財務省
ザールラント州内務省
11月3日(金)・・・
ザルブリュッケン市
 
ドイツ地方財政における課税自主権について
和光大学経済経営学部助教授 半谷俊彦
 ドイツでは地方自治体の基幹税である営業税と不動産税の実質的な税率決定権が市町村に与えられている。またその他の地方税(地域諸税)についても、多くの州で、徴税の有無、課税標準、税率などに関する決定権の一部が、市町村に委譲されている。日本では課税自主権の拡大が検討されているところであるが、それが行われたときには何が起きるのかと。地方自治体が与えられた課税自主権を発揮するためには、どのような条件を必要とするのか。本稿では、ドイツの事例を検討することにより、そうした疑問への示唆を得たいと考える。以下では、まずドイツの地方財政制度を整理し、次に課税自主権の行使状況を分析する。
 
1. 政府部門の構造
 ドイツでは、政府部門は連邦・州・地方自治体の3つのレベルからなっている。州は、国際統計上では地方政府に含まれるが、実際の行政においては連邦と共に国家的機能を担っている。他方、地方自治体は原則として、基礎的自治体である市町村と広域自治体である郡からなっており、ドイツの政府部門は国家2層と地方自治体2層で構成される4層構造であると見ることができる。歴史的に自立性が高く人口の多い市町村は、郡に属さない郡独立市町村として郡の機能を兼ねることがある。また州によっては、市町村と郡との中間に小規模広域自治体として「市町村少連合」を、郡と州の中間に大規模広域自治体として「広域組合」を設けている。図1はドイツの地方制度イメージを表したものである。
 
2. 市町村の財源
 地方基幹税の徴税権は基礎的自治体である市町村が有し、広域自治体(広域組合、郡、市町村連合)は、市町村が負担する分担金と州が負担する交付金を主たる財源としている。広域自治体は、料金(分担金、負担金、手数料、使用料など)を自らの決定に基づいて徴収する権利を有するうえ、州によっては一部の地域諸税について徴収権ならびに課税自主権を持たされており、その意味では歳入について自主決定権をある程度有するものであるが、課税自主権の主役は、あくまで地方基幹税の課税主体たる市町村である。
 表1ならびに表2は地方自治体(市町村と全ての広域自治体)の経常会計における歳入の内訳を示したものである。地方自治体全体を集合的に示したものであるので、市町村から広域自治体への分担金など、地方自治体間の支払いは示されていない(相殺されている)。地方基幹税たる営業税と不動産税からの税収は、合わせて全歳入の19.3%を占めている。市町村は共同税である所得税と売上税から税収の配分を受けているが、これは合わせて18.3%に及ぶ。州からの交付金は市町村と広域自治体に給付されているが、一般交付金の給付額は全歳入額の22%にも及ぶ。料金の構成比が12%と比較的高いのも、ドイツ地方財政の特徴である。旧東ドイツ地域では、租税の割合が低く州からの交付金に依存する割合が高くなっている。
 
図1: 地方制度のイメージ図
*数字は団体数。
 
表1: 経常会計の歳入内訳(2003年度:単位10億ユーロ)
出所:Bundesministerium der Finanzen, Finanzbericht 2005, S.170より作成。(1)営業税分担金拠出後。(2)その他の収入から同一レベル政府間の支払を控除した額。
 
表2: 経常会計の歳入内訳(2003年度:構成比)
出所:Bundesministerium der Finanzen, Finanzbericht 2005, S.170より作成。(1)営業税分担金拠出後。(2)その他の収入から同一レベル政府間の支払を控除した額。


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