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(クロアチアの主要造船所)
【BRODOSPLIT Shipyard Ltd】
 従業員数5,500人と船台4台を持つ同造船所は、最近、客船のデザインと建造に進出した。新造船建造に加え、同造船所はMAN B & Wディーゼル・エンジンのライセンス製造、甲板クレーン、エア・コンプレッサその他の舶用機器の製造も行っている。また、関連会社のSPECIJALNA PROIZVODNJA社は、潜水艦を含む艦艇とアルミ船の建造が専門である。
 
【TROGIR Shipbuilding Industry】
 第二次世界大戦後に創立された同造船所は、数種類の船種の新造に加え、最大60,000トンの浮きドックの建造を専門に行っている。また、船台2台と全長700m、10,000トンの浮きドックを持ち、船舶修繕業も行っている。
 
【KRALJEVICA Shipbuilding Industry】
 同造船所は、1729年創業のクロアチア最古の造船所である。現在は中規模の造船所で、全長100mまでの船舶とヨット、タグボート、高速旅客船等と建造している。また、8,000トンの浮きドックを持ち、修繕も行っている。
 
【TRECI (3) MAJ Shipbuilding Industry】
 20世紀初頭創立の同造船所は、新技術採用に積極的なクロアチア最新鋭の造船所である。現在の従業員数は約2,800人で、船台3台(うち2台は300トン級クレーン付)での新造船建造、及びSULZERディーゼル・エンジン主機、JADRANBROD-PIELSTICK補機、甲板機器、その他の舶用機器製造を行っている。
 
【ULJANIK Shipbuilding Industry】
 同造船所は、1852年、オーストリア・ハンガリー帝国の艦艇造船所として発足した。300,000DWTまでのあらゆる船種の建造実績があり、特に鉄道フェリー建造に強い。新造船建造に加え、MAN B & Wディーゼル・エンジン、SEMT-PIELSTICKエンジン、ピストン・ハイドロ・エンジン、ディーゼル発電機、電気機器、溶接機械等の製造も行っている。
 
【VIKTOR LENAC Shipyard】
 1896年創業の同造船所は、クロアチア最大手の造修所である。1967年以降、同造船所は改造を主要業務としており、タンカー及び貨客船から自動車船への改造12隻等の実績がある。TRECI MAJ、ULJANIK、BRODOSPLITの各造船所と共同で、VIKTOR LENAC造船所は、クロアチア初のオフショア調査プラットフォームの艤装を担当した。70最近の実績は、ケーブル敷設船の改造、アドリア海ガス田向けリグ2基の建造等がある。
 
 クロアチアの貨物取扱機械は、Ganz、Samsung、Walmet、Litostroj、Indos and Clark、Mercedes、Buhler等が供給している。
 
 
(クロアチア造船・造修セクターの動向)
 東欧諸国の中ではクロアチアとポーランドが2大造船国であり、クロアチアはタンカー建造では欧州第1位である。クロアチアの産業構造はイタリアと似ている71。現在、クロアチアの造船所の建造船種は、ケミカル・タンカー、プロダクト・タンカーが中心であるが、RORO船建造も近年増加している。
 
 クロアチアの造船所は2008年末まで船台が埋まっており、中期的予測は楽観的である72。クロアチア5大造船所の受注残は、2003年末の150万GTから2004年末には270万GTに大幅増加した。新造船建造では、クロアチアは欧州第3位、世界第7位の造船国である。プロダクト・タンカーと自動車船建造が、受注を牽引している。クロアチアの国営造船所Treci-MajとUljanikは2008年半ばまで、TrogirとSplitは2009年初頭までの新造船建造が決定している。73
 
 2003年の受注残は16隻であったが、2004年半ばには36隻、135万トンに急上昇した。これにはクロアチア造船業の生産性改善と労働力の安さが貢献している74。クロアチアを始めとする欧州造船所の多くは、複雑な船舶建造で世界の主要造船所と競合する能力を持っているが、長期的には生産性と価格で不利となる可能性も指摘されている。75
 
72 CESA 2004-2005
 
 2004年の造船業は世界的に好調であった。特に、クロアチアの造船所は24隻、約100万DWTを竣工し、現在の受注残は70隻、約290万DWTで、2009年まで船台が埋まっている造船所もある。クロアチアはアフラマックス型タンカー等の大型船の建造が可能であるため、トン数(DWT)べースでは世界第5位の、CGTベースでは世界第7位の造船国となっている。(表4-2-3)
 
 なお、クロアチア造船業の再建と民営化の促進をめざし、欧州復興開発銀行(EBRD)は5大国営造船所のひとつUljanik造船所の新造タンカー建造向けに、1,500万ユーロの担保を引き受ける予定である76
 
表4-2-3A 世界の新造船受注実績(2004年)
国名 受注実績(百万CGT) シェア
韓国 17.3 36.7
日本 12.2 25.9
中国 6.6 14.0
ドイツ 1.6 3.4
イタリア 1.2 2.5
ポーランド 1.1 2.3
クロアチア 0.9 1.9
台湾 0.8 1.7
その他アジア諸国 1.5 3.2
その他欧州諸国 3.7 7.9
 
表4-2-3B 世界の新造船竣工実績(2004年)
国名 竣工実績(百万CGT) シェア
韓国 8.3 34.2
日本 8.0 32.9
中国 2.6 10.7
ドイツ 0.9 3.7
イタリア 0.8 3.3
ポーランド 0.5 2.1
クロアチア 0.4 1.6
台湾 0.4 1.6
その他アジア諸国 0.3 1.2
その他欧州諸国 1.7 7.0
出典:Clarkson Research77
 
 クロアチアの6大造船所は約12,400人を直接雇用している。また、下請け企業、舶用機器メーカー、サービス企業、セールス企業等の舶用企業は1,500社に上り、2004年の総売上高は210万クロアチア・クーナである。2005年3月時点の受注残状況では、クロアチアは69隻、170,000dwtで、日本、韓国、中国に次ぐ世界第4位に上昇している。
 
 
 クロアチアの大手造船所の主要建造船種は以下の通りである。
●タンカー
●乾貨物船
●貨客船
●特殊船
●浮きドック
●洋上構造物
 
 また、大手造船所は、世界中の顧客向けに船舶改造やモデリングも行っている。
 
 一方、クロアチアの中規模造船所は20社で、従業員数は約1,800人である。中規模造船所は、主にフェリー、クルーズ船、漁船、公共サービス船、レジャーボート等の建造と修繕を行っている。
 
 小規模造船所は約200社、従業員数約1,700人で、クロアチアの観光業、海洋レジャー産業向けのスポーツ船、レジャーボートの建造、修繕を行っている。
 
 クロアチアの舶用機器製造業、舶用サービス産業は、同国の大造船所とともに発展してきた。
 
表4-2-3C  クロアチア6大造船所(ULJANIK、3MAJ、KRALJEVICA、BRODOSPLIT、BRODOTROGl、VIKTOR LENAC)新造船竣工実績
(1994〜2004年)
隻数 dwt gt cgt 百万ドル
1994 10 403,319 275,047 206,048 400.6
1995 5 252,973 145,552 87,431 142.6
1996 14 571,511 365,006 270,661 405.1
1997 8 190,912 122,224 88,188 148.7
1998 12 462,342 280,433 223,188 336.5
1999 11 319,059 232,772 180,754 276.3
2000 14 324,572 330,700 237,017 373.6
2001 14 411,972 307,645 210,828 284.4
2002 20 525,175 417,165 317,982 424.2
2003 18 725,603 494,592 331,810 433.6
2004 26 956,808 625,620 442,750 596.3
152 5,144,246 3,596,756 2,596,657 3,821.9
出典:Croatian Shipbuilding Corporation
 
表4-2-3D  クロアチアの主要造船所別新造船竣工実績
(1994〜2004年の合計)
隻数 dwt gt cgt 百万ドル
Uljanik 41 1,272,444 1,197,448 860,673 1.278
3. Mai 25 1,049,595 688,768 505,322 0.705
Brodosplit 39 2,170,635 1,308,996 884,544 1.303
Kraljevica 7 12,995 10,862 16,034 0.030
Brodotrogir 18 634,165 383,398 312,966 0.436
Viktor Lenac 4 2,755 4,591 10,752 0.028
152 5,144,246 3,596,756 2,596,657 3.821


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