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平成17年度社会貢献者の記録

 事業名 海難救助等社会貢献者の表彰
 団体名 社会貢献支援財団 注目度注目度5


「社会貢献者表彰」選考を終えて
 教育基本法に、公のためとか国家のためを匂わす表現はどこにもない。教育勅語にそんな表現が散りばめられていたから戦争が起きた、ということで削られてしまったのである。その代わりに、教育勅語になかった個の尊厳とか個の尊重が加わった。
 そのおかげもあって、世は個人主義全盛となり公の精神や国家に報ずる精神は見出すのが難しくなった。これではいずれ国家や社会は立ち行かなくなる。「GHQと日教組にしてやられた」と私は長年歯ぎしりしてきた。
 数年前に、社会貢献者表彰の選考に加わることとなった。参加の意向を聞かれた時、「そんな人いるのかな」とか「いたとしてもうさん臭そうな人ばかりでは」などと意地悪く思ったが、社会貢献者を表彰するのも社会貢献と思い直して引き受けた。
 選考会の二週間ほど前に大部の資料が送られてきた。「こんなにいたのか」と驚き、ついで「大変なことを引き受けた」と溜め息をついた。
 内容がまたすごかった。人命救助のため荒れ狂う海や濁流にとびこんだまま帰らなかった者とか、猛火にとびこんで生命を落とした者などもいた。
 うさん臭いどころではない。自分と比べてみて恥ずかしくなった。武士道精神復活などを偉そうに唱えている私だが、そんな場面に出食わしたらどうするだろうか。
 そもそも私は泳げない。満州からの引き揚げ時、三歳になったばかりの私は母に背負われ北鮮の赤い濁流を命からがら渡河したが、その時の恐怖がしみついている。明瞭な記憶ではないのに、身体が憶えてしまっていて、水が恐いのである。
 火もだめだ。近所の火事を、学生の頃、二度ばかり経験した。無論馳せ参じて消火活動に協力した。というと格好よいが、最初の火事では、母屋が燃えさかっている最中に、バケツにくんだ池の水を離れにかけていただけだし、次の火事では、隣家の火がうつりくすぶり始めた住宅の壁に消火液をぶちまけていただけである。ともに身の危険はなかった。実は逆巻く火が心中恐かった。
 毎年の資料には、長年内外の僻地で医療や公共福祉につくしている人も必らずいる。これも私には不可能である。僻地では音楽会や展覧会には行けそうもないし、好物の豆大福や餃子も食べられそうにないし、美しい女性とレストランに行けそうにもないからだ。
 生命を賭けた人命救助なら、ことと次第によっては、もののはずみで私にもあり得るが、何十年にもわたって僻地で人につくす、というのはまったくあり得ない。頭が下がるとはこういった人々に対しての言葉であろう。
 私がとれる可能性があるのは、ハッピーファミリー賞だけである。「多くの子供を育て苦労を重ねながらも明るく生きてきた人」に与える賞で、受賞者は十人以上の子供を育てた苦労人の場合が多い。
 ただし私が受賞するのは、一回り若く健康そのものの女房が頓死し、若い女性と再婚し、その女性があと七人をせっせと産むという、奇跡的幸運あるいは奇跡的不運が続いた場合のみである。
選考委員 藤原正彦
 
「こども読書推進賞」選考を終えて
 私が永年文芸雑誌の編集にたずさわってきてつくづく感じたことの一つは、作家誕生の源泉は幼少年時代の生い立ちとともにその頃の心的体験であり、そこにはかけがえのない本との出会いも存在しているということである。大江健三郎さんのノーベル文学賞受賞式には私も担当者として出席したが、大江さんが記念スピーチの際、戦時中の幼年時代に出会った『ハックルベリー・フィンの冒険』と、『ニルス・ホーゲルソンの不思議な旅』の魅力を語って、世界中から集った聴衆に深い感銘を与えたことは記憶に新しい。
 今回受賞された3グループは各地域の独自性をしっかりと踏まえて、そこから子ども達の自由な読書を推進させ、その活動の輪が着実に広げられていったことに、将来への視野も十分取りこんだ成果が認められる。
 まず「国際児童文庫(ICBA)」は東京で英国人のダン夫人と日本人の母親五人が設立した「だんだん文庫」から発足した。これは帰国子女のみならず、日本に住む各国の子どもや海外居住の日本人の子どもにそれぞれの母国語の本を読ませて自国の文化を身につけさせるため、各国の本を準備したり送付するという活動である。バイリンガルの老人が認知症になると第二語学はすっかり忘れても母国語だけを覚えている例があると聞いたことがあるが、最も大切な母国語習得の幼年期を異国で育つという一種の危機を、それは見事に救っているわけである。この卓抜な発想が今や国内での13の文庫活動、海外の27の日本語文庫の活動に発展したのは、国際的文化運動の本質をよく見とどけての実績であろう。
 次に「紫波町ほん太ネット」は、公立図書館のない岩手県紫波町での公民館の図書室や小中学校図書室の蔵書をデータベース化して、インターネットを通じて同町の子ども達が読める図書の量を飛躍的にふやした。公立図書館がないというマイナス面を最新技術の能力をフルに生かしてプラス方向に転じさせた、過疎地なればこそ案出された英知の結晶である。私がことに感心したのは、今や小学生も使っているインターネットをあくまで手段として活用し、本来の活字による読書体験を充実させようとする工夫である。その結果子ども達一人一人、均質化から抜け出て個性を育む宝庫として、当町の所有する11万冊の蔵書の利用を、学校の図書室その他の開放で可能にした「町民図書館」の出現は真に現代的である。
 最後になったが、広島市の「こころにミルク編集部」は小竹由美子氏を中心にしたボランティア活動で、平成9年に「ガイドページ児童文学への招待状」を創刊した。その小雑誌が市内の全小学校、公民館、図書館に配布され、同市の児童文学良書の情報発信源となっている。毎号テーマ別に12〜14冊の紹介を行っているが、これをA5版20ページにコンパクトに編集するのは、並大抵の創意や精進ではできないことは自らの編集経験からも十分感知できることである。
 昨今地方自治の教育制度の確立について色々と議論があるようだが、受賞の3グループが読書という青少年教育の基本を考えぬいて、未来の教育をも豊かに示唆する大きな成果をあげていることに心から敬意を表したい。
選考委員 坂本忠雄


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