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4. 最終強度推定法
 第3章で述べたFEM結果により得られた知見を基に、実用的最終強度推定法を導く。
4.1 防撓材方向圧縮とこれに直角方向の引張及び横圧を受ける場合
 防撓材方向の圧縮と横圧を受ける連続防撓パネルの最終強度推定式は文献5)において、また、引張と横圧下の最終強度は上述した検討からσYと近似できることから、防撓材方向の圧縮とこれに直角方向の引張及び横圧下の最終強度相関関係がわかれば、この組み合わせ荷重条件下の最終強度を推定できる。
 まず、式(1)に示す無次元量Rx、Ryを算出し、これをグラフにプロットした結果をFig. 6(a)に示す。Fig. 6(a)より、厚板パネルの場合には、最終強度相関関係は、Misesの降伏関数とほぼ相似となっている。一方、薄板パネルの場合には、防撓材方向の圧縮が支配的な範囲で引張の影響はほとんど見られない。
 
 
 ここで、σux:防撓材方向の圧縮最終強度
σ*ux: 組み合わせ荷重下における防撓材方向の圧縮最終強度
σ*uy: 組み合わせ荷重下における防撓材と直角方向の引張最終強度
 以上より、最終強度相関式として、式(2)のMisesの降伏関数を用いるが、FEM結果からパネルの細長比βが2.0より大きい場合にはRxの修正を行なう。この修正は上述した薄板パネルであって防撓材方向の圧縮が支配的な範囲では、圧縮最終強度は引張の影響をほとんど受けないことを考慮したものである。
 
Rx2-RxRy+Ry2=1.0  (2)
 
 ここで、Rx、Ryは式(1)によるが、β>2のとき、Rxはσ*uxYに置き換える。但し、σ*uxはσuxを超えないこととする。βはパネルの細長比でβ=b/t(σY/E)1/2
 次に、横圧が加わる場合についても同様に、式(1)で定義したRx、Ryを描いた結果をFig. 6(b)に示す。図より明らかなように、横圧の大きさにかかわらず最終強度相関曲線はぼほ相似である。従って、横圧が加わる場合においても、式(2)の相関関係式をそのまま適用する。
 
Fig. 6 Ultimate strength interaction relation (1).
(a)  Combined compression parallel to stiffener and tension perpendicular to stiffener.
 
(b)  Combined compression parallel to stiffener, tension perpendicular to stiffener and lateral pressure.
 
4.2 防撓材方向引張とこれに直角方向の圧縮及び横圧を受ける場合
 本荷重条件の場合も、防撓材と直角方向の圧縮と横圧下の連続防撓パネルの最終強度推定式が文献6)で導かれており、また、引張と横圧下の最終強度はσYと近似できることから、防撓材方向の引張とこれに直角方向の圧縮及び横圧下の最終強度相関関係がわかれば、この組み合わせ荷重条件下の最終強度を推定できる。
 前4.1節と同様に、式(3)に示す組み合わせ荷重下の最終強度を単軸荷重下の最終強度で無次元化した値Rx、Ryをグラフにプロットした結果をFig. 7(a)に示す。
 
 
 ここで、σuy:防撓材と直角方向の圧縮最終強度
 Fig. 7(a)より、最終強度相関関係はMisesの降伏関数よりかなり外側に位置する。特に、防撓材と直角方向の圧縮が支配的な範囲でパネルが薄板の場合には、防撓材方向の引張の影響はほとんど見られない。
 以上より、最終強度相関式は、式(2)のMisesの降伏関数を用いるが、Rxはσ*uxYに置き換える。ただし、σ*ux*uyはそれぞれσuxuyを超えないこととする。
 次に、横圧が加わる場合についても同様に、Rx、Ryを描いた結果をFig. 7(b)に示すが、横圧の大きさにかかわらず最終強度相関曲線はぼほ相似である。従って、この場合においても、横圧のない条件下の相関関係式をそのまま適用する。
 最後に、二軸引張及び二軸引張と横圧を受ける連続防撓パネルの最終強度も、詳細は省略するがFEM結果からMisesの降伏関数で表せることを確認している。
 以上の検討より導いた最終強度推定式による推定値とFEM結果の比較を、組み合わせ荷重を受ける代表的な連続防撓パネルに対してFig. 8に示す。Fig. 8より、推定値は組み合わせ荷重のどの領域においてもFEM結果と概ね良好な一致を示している。
 
Fig. 7 Ultimate strength interaction relation (2).
(a)  Combined tension parallel to stiffener and compression perpendicular to stiffener.
 
(b)  Combined tension parallel to stiffener, compression perpendicular to stiffener and lateral pressure.
 
Fig. 8  Comparisons of ultimate strength under combined loads obtained by proposed simple formula and FEM results
(a) t=10mm
 
(b) t=15mm
 
(c) t=20mm
 
4.3 せん断応力の影響の考慮
 Fig. 5のFEM結果より、圧縮最終強度に及ぼすせん断応力の影響は、それ程大きくなく、また、横圧によってこの影響が大きくは変化することはないことが確認できる。これより、下記の影響係数czをそれぞれの圧縮最終強度に乗じることにより、せん断応力の影響を考慮する。
 
 
 上記の係数を乗じて最終強度を推定した結果とFEM結果の比較をFig. 5に実線などの線分で示すが、FEM結果と良い相関を示していることが確認できる。
 さらに、引張最終強度に及ぼすせん断応力の影響についてもFEM結果に基づき検討を行った結果、式(4)における係数czを引張最終強度、即ち降伏強度σYに乗じることで精度良く推定できることを確認している。


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