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2. 3次元板骨構造の複数き裂同時進展解析
2.1 き裂を有する3次元板組構造の境界値問題の定義
 Fig. 3に示すように有限な平板を組み合わせた3次元物体を考える。物体を各領域に1つ以下のき裂先端が存在するM個の領域Ωl(l=1,...,M)に分割し、それぞれに直交座標系(Ol-x1lx2lx3l)を定義する。各領域はx1l-x2l平面での2次元問題として扱い、物体力filは領域Ωlに、外力tilは応力境界Stl及びき裂面Sclに、強制変位vilは変位境界Sulにそれぞれ作用する。領域Ωlの境界はΓlで表し、領域Ωlとその隣接する領域Ωnとの境界はΓl∩Γnで表される。またnjl(j=1,2)を領域Ωlの境界の外向き方向余弦とし、βkmlg及びβkmng(k,m=1,2,3)をそれぞれ領域ΩlとΩnで定義されている座標系の全体座標系に対する方向余弦とする。このとき、き裂進展前に対する境界値問題は以下のように表される。
 
 
 ここでσijlとuilは領域Ωl内での応力テンソルと変位ベクトルを表す。上式の第4式、第5式はそれぞれ隣接領域との変位の適合、力の釣り合い条件を表している。本シミュレーションプログラムでは各領域をFig. 4のように長さが零で十分剛な棒要素により結合する。そのため上式の第4式、第5式は自動的に満たされる。また本研究で対象とする問題では、き裂伝播領域における面外曲げ成分の影響は小さいと考えられるので、有限要素解析にはメンブレイン要素を使用する。
 
Fig. 3  A cracked 3-dimensional structure consist of thin plates.
 
Fig. 4  Two neighboring domains connected by connecting elements.
 
2.2 き裂伝播経路の推定
 Fig. 5のように第1番目のき裂先端を座標原点としてき裂方向とそれに垂直な方向をそれぞれx1lC、x2lC軸とする直交座標系を定義する。各き裂がx1lC軸上への投影長hlだけ緩やかに折れ曲がって進展するものとし、そのき裂伝播経路のx1lC軸からの外れλl(hl)を
λl(hl)=αlhll(hl3/2l(hl2  (2)
と表す。き裂進展後の状態を解析する場合、き裂進展経路上Sbに作用している内力を打ち消す力対分布tilを作用させ、それ以外の境界条件は全て零とする境界値問題
 
 
を定義し、その解を(1)の解に加算すればよい。得られたき裂進展後の応力拡大係数に局所対称性規準(KII=0)を適用することで、き裂伝播経路を求めることができる。伝播経路の形状パラメータは文献5)と同様に
 
 
と定められる。ここに、kI, kIIはき裂進展前(式(1))に対するモードI及びモードIIの応力拡大係数、Tはき裂先端線に平行な応力成分、bI, bIIはモードI及びモードIIのき裂先端からの距離の平方根に比例する応力項の係数である。また(i,j=1,2)は第l番目のき裂と第n番目のき裂がそれぞれ進展することで生じる相互干渉効果を表す係数である。
 
Fig. 5 Extension of the l-th crack.


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