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3.3 周波数特性
 ここでは、全ての運動計測結果から運動周波数特性を解析した結果について述べる。
 Fig. 9には、計測された横揺れ周波数と、水槽固定の波高計で計測された入射波周波数の比較を示す。この図から円周波数が6付近で、横揺れ周波数が急変しており、これより低周波数域では波周波数と一致し、高周波数域では波周波数のほぼ1/2に近い周波数での横揺れとなっており、円周波数が6以上の高周波数域での横揺れがパラメトリック横揺れである可能性を示唆している。しかし、この結果を詳細に見ると、高周波数になるほど1/2の関係から次第に外れていく傾向が見られる。
 この原因を調べるために、出会い周波数の変化について調べてみた。Fig. 10は、上下揺れの周波数と入射波周波数を比較した図である。同図から、上下揺れの周波数は高周波数域において入射波周波数より短くなっており、これは波による船体の横漂流の影響と考えられる。このような比較的高い波の中で、高周波数域においては、横漂流が急増し、横揺れ等の横運動に与える影響が大きいことが、黒田らによって指摘されており7)8)、今回の実験でも最大10%程度の周波数減少が見られる。
 この横漂流による出会い周期の変化を考慮に入れた上での横揺れの周波数特性を明らかにするために、Fig. 11では上下揺れの周波数と、横揺れの周波数との比較を行なった。このように実験値をプロットすると、横揺れおよび上下揺れのいずれも出会い周波数となっており、特に上下揺れの周波数は、入射波の出会い周波数と考えてもよい。この図から、横揺れ周波数が急変する6以下の周波数では、横揺れは上下揺れ周波数と一致しており、この周波数より高周波数域においては横揺れ周波数は波の出会周波数のちょうど半分になっており、従来からパラメトリック横揺れで見られる特性と一致していることが確認できた。
 
Fig. 9  Comparison between measured roll frequency and wave frequency obtained by wave meter fixed in tank.
 
Fig. 10  Comparison between heaving encounter frequency and incident wave frequency of wave height of 0.04m.
 
Fig. 11  Comparison between measured encounter frequencies of heaving and rolling motions.
 
 次に、高周波数域(ここでは横揺れ固有周波数の2倍前後の周波数域を指す)における横揺れ運動の周期と、横揺れ固有周期との関係について調べた結果について述べる。Fig. 12には、横軸に入射波の出会い周期(ここでは上下揺れの周期で代用)を横揺れ固有周期で割った値をとって、Hw=0.04mの時の横揺れ振幅をまとめた結果を示す。短い周期域での横揺れは、横揺れ固有周期の1/2よりも16%近く小さい周期でピークを持っている。
 
Fig. 12  Re-plotting of non-dimensional roll amplitudes for naked hull in beam regular waves of 0.04m wave height.
 
 この原因を調べるために、復原力曲線の非線形性について調査を行った。Fig. 13に模型船の復原力曲線を示す。また同図中にはGM・φの値も実線で示している。横傾斜角が5度程度以下の小さな範囲では復原力曲線はほぼ直線であるが、横傾斜角が大きくなるに従い非線形性が強くなり、前述の実験で現れた最大横揺れ振幅である27度付近では、線形のGM・φの値に比べて16%程度大きな値となることがわかる。このことは、大振幅横揺れ発生時に、復原力曲線の非線形性により横揺れ固有周波数が約8%余り大きくなることを示しているが、定量的には実験値における差異を説明ができない。この点については、さらに詳細な調査が必要と考えられる。
 
Fig. 13 GZ-curve of the model in calm water.


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