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日本船舶海洋工学会論文集 第2号

 事業名 造船学術の振興
 団体名 日本船舶海洋工学会 注目度注目度5


4. 非線形応答計算
 前述の通り、設計不規則波に最大岨度の制限を導入することによって、ある程度以上の有義波高を持つ短期海象中では線形理論による最大応答値はほとんど変化しないことがわかった。そこで、応答に対する非線形影響を調べるため、設計不規則波中で非線形応答計算を行った。用いた計算コードはTSLAMである13)。この計算コードでは船体を剛体・弾性体の両方に仮定できる。
 
Fig. 9  Maximum VBM at midship
(Nonlinear calculation)
(Rigid body, Fn=0.1O, β=2, δ=1/10)
 
Fig. 10  Time history of VBM at midship
(Nonlinear calculation)
(Rigid body, Fn=0.10, β=2, δ=1/10)
 
 まず、船体を剛体と仮定した計算結果をFigs. 9, 10に示す。Fig. 9は設計不規則波中で非線形計算により得られた最大曲げモーメントを短期海象の有義波高に対して示したものであり、Fig. 10は有義波高12.5mの場合の縦曲げモーメントの時間変化である。なお、設計不規則波の最大岨度はδ=1/10とした。縦曲げモーメントは船底露出のためにホギング側(+側)で減少し、船首フレアスラミングのためにサギング側(−側)で増加しており、サギングモーメントの最大値は長期予測の10-8値程度になっている。次に、船体を弾性体と仮定した計算結果をFigs. 11,12に示す。計算条件は剛体の場合と同じである。スラミングによって生ずるwhipping振動のため、剛体の場合に比べて曲げモーメント値が増加していることがわかる。船体を剛体と仮定した場合も弾性体と仮定した場合も最大曲げモーメントの値は10-8の長期予測値や船級協会のルール値を若干越えているが、その継続時間は剛体計算で約2秒、弾性体計算で約0.5秒であり、これが船体構造に対してどのくらい有意であるのかは船体構造の動的応答解析を行って検討する必要がある。
 
Fig. 11  Maximum VBM at midship
(Nonlinear calculation)
(Flexible body, Fn=0.10, β=2, δ=1/10)
 
Fig. 12  Time history of VBM at midship
(Nonlinear calculation)
(Flexible body, Fn=0.10, β=2, δ=1/10)
 
5. 船体構造設計への適用と問題点
 これまでの計算結果より、最大波高と最大岨度の制限を加えて計算された最大サギングモーメントは、whipping振動成分を除けば現行のIACS縦強度基準値を若干超える程度の大きさで、その継続時間は船体を剛体とした場合約2秒であった。これは現行のIACS縦強度基準による値に大きな問題が無いことを示唆するとともに、腐食・衰耗のない健全な船が縦強度上の問題を起こした例は無いという事実と合致している。また、設計不規則波と同じコンセプトによるMLER法の検討結果より、有義波高のそれほど高くないところで設計不規則波による最大値は不規則波中のシミュレーションから得られる最大値が推定できることがわかっているので7), 8)、ここでは縦曲げモーメントを対象として、設計不規則波を船体構造設計に適用する手順をまとめてみる。
1)ストリップ法などを用いて縦曲げモーメントの応答関数を求め、短期予測を行う。
2)設計短期海象を設定する。平均波周期については、短期予測から得られる短期パラメータを最大にする波周期、または長期予測から得られる超過確率の密度関数の最大確率を与える波周期を選択する。有義波高については、10m程度の適当な値に設定する。
3)選択した短期海象における縦曲げモーメントの応答スペクトルより応答が有意となる周波数範囲を選び(ISSCスペクトルの場合はa=0.2程度)、その周波数範囲の素成波を波スペクトルから発生させる。ただし、周波数範囲の分割数は、最大波高β・Hと最大岨度δを規定することによって、自動的に定まる。βは通常2とし、δはNormal Conditionについては1/10、Survival Conditionについては1/7とする。
4)得られた各素成波の位相を縦曲げモーメントの位相を基準にとり、それらを重ねあわせて設計不規則波を生成し、その中で非線形シミュレーションを行って最大縦曲げモーメントを求める。
 なお、今回は縦曲げモーメントを対象として設計不規則波を設定したが、その他の荷重や強度、たとえば、ねじりモーメントや船首上下加速度などについては縦曲げモーメントと全く同じように設定できる。しかしながら、船体の局部応力の最大値など、応答関数が得られていない場合、または応答関数を得るために大規模なFEM解析が必要であるような場合は、設計不規則波の位相を簡単に決定できないため、別途検討が必要となる。これについては次報で報告する。
 
6. 結言
 本論文では、S175コンテナ船の縦曲げモーメントを対象とし、船体構造設計に設計不規則波を適用する方法と問題点について検討を行った。得られた結論は以下のとおりである。
 
1)設計不規則波を用いることによって、与えられた短期海象中での最大曲げモーメント値を、荷重の非線形性と同時性を考慮し、わずかな計算工数で求めることが可能となる。
2)設計不規則波に最大岨度の制限を設けることにより、ある程度有義波高の大きな短期海象では、最大曲げモーメント値がほぼ一定となる。
3)このような設計不規則波中での非線形応答計算により得られた最大縦曲げモーメントはIACSによる縦強度基準値を若干超える程度となり、現状、腐食・衰耗のない健全な船が縦強度上の問題を起こした例は無いという事実と合致する。
4)船体の局部応力の最大値など、応答関数が得られていない場合、または得るために大規模なFEM解析が必要であるような場合は、設計不規則波の位相を簡単に決定できないため、別途検討が必要となる。
 
参考文献
1) T. Fukasawa: On the Design Wave for Collapse Strength of a Ship, 9th Technical Exchange and Advisory Meeting, TEAM'95, (1995), pp.187-201.
2) T. Fukasawa: Behavior of 20,000 DWT Tanker in Japan Sea, Proc. International Conference on Shipbuilding and Ocean Engineering, SOPP-98, (1998), pp.187-191.
3) T. Fukasawa and S.R. Cho: On the Design Criteria for Ultimate Longitudinal Strength of a Ship, 15th Asian Technical Exchange and Advisory Meeting on Marine Structures, TEAM2001, (2001), pp.144-151.
4) L.J.M. Adegeest, A. Braathen and R.M. Lseth: Use of Non-Linear Sea-Loads Simulations in Design of Ships, Proc. 7th PRADS, (1998), pp.53-58.
5) L.J.M. Adegeest, A. Braathen and T. Vada: Evaluation of Methods for Estimation of Extreme Nonlinear Ship Responses Based on Numerical Simulations and Model Test, Proc. 22nd Symp. on Naval Hydrodynamics, (1998), pp.84-99.
6) L.W. Pastoor: On the Assessment of Nonlinear Ship Motions and Loads, Ph.D. Thesis, Delft Univ. of Tech., (2002).
7) W. Pastoor. J.B. Helmers and E. Bitner-Gregersen: Time Simulation of Ocean-Going Structures in Extreme Waves, Proc. OMAE2003, OMAE2003-37490, (2003).
8) B. Kindsman: Wind Waves, (1984), Dover.
9) T.Fukasawa: On the Effect of Sea Condition upon Fatigue Strength of a Ship, 11th Asian Technical Exchange and Advisory Meeting on Marine Structures, TEAM'97, (1997), pp-312-319.
10)河辺寛、日比茂幸、田中洋志、柴崎公太、笹島洋:波浪荷重の長期分布と遭遇海象との関係(第1報 波浪荷重の最大値と想定海象)、日本造船学会論文集、第186号、(1999)、pp.319-339.
11)河辺寛、田中洋志、柴崎公太:波浪荷重の長期分布と遭遇海象との関係(第2報 疲労被害度と想定海象)、日本造船学会論文集、第187号、(2000)、pp.253-263.
12)日本海事協会:コンテナ運搬船の構造強度の関するガイドライン、(2003).
13) Y. Yamamoto, M. Fujino and T. Fukasawa: Motion and Longitudinal Strength of a Ship in Head Sea and the Effects of Non-Linearities, Naval Architecture and Ocean Engineering. SNAJ. Vol.18, (1980), pp.91-100.


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