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4 溶接ヒューム濃度低減対策とヒューム濃度分布
4.1 換気によるヒューム濃度の低減対策10)
(1)PUSH-PULL型換気による対策
 二重化立体ブロック内のヒューム濃度を低減させるための対策として、PUSH-PULL型換気により二重化立体ブロック内のヒュームを区画外へ排出する場合の解析を行った。解析は手前側3箇所の開口部から換気ファンにより外気(新気)を送気し、同時に反対側の3箇所の開口部から換気ファンにより排気するPUSH-PULL型換気を行う状態を模しており、それ以外は全て基本解析モデルと同じ計算条件である。
 排気と送気の気流速は同じ速度に設定し、様々な換気流速(1.0m/s〜8.0m/s)について計算を行った。このうち代表的な解析結果を濃度5.0mg/m3と60mg/m3以上の拡散域に分けてFig. 8に示す。これより換気流速が3m/sを超えて4m/s近くになると急激にヒューム排出が早くなることが分かる。なお、ここでは換気流速は開口における換気流の平均流速により表している。
 
Fig. 8  Diffusing aspect of welding fume in the block model with Push-Pull type ventilation
 
(a) Speed of Ventilated flow: 1 m/s
 
(b) Speed of Ventilated flow: 3 m/s
 
(c) Speed of Ventilated flow: 4 m/s
 
(d) Speed of Ventilated flow: 6 m/s
 
(2)PUSH型換気による対策
 ヒューム濃度の低減対策として、二重化立体ブロックの手前側3箇所の開口部から外気を換気ファンにより送気して、ヒュームを区画外へ排出するPUSH型換気の解析を行った。なお、強制換気以外は全て基本解析モデルと同じ計算条件である。
 PUSH型換気の換気流速を1.0m/s〜8.0m/sと変えて解析を行い、その代表的な結果をFig. 9に示す。ヒューム拡散の様相はPUSH-PULL型換気とほぼ同じであるが、立体ブロックの天井付近に60mg/m3以上の高濃度のヒュームが溜まる傾向がある。また、換気流速が3m/sを超えると急激にヒューム排出量が多くなる傾向は同じである。なお、ヒューム濃度60mg/m3は、防塵マスクの着用により規定の95%排除できること11)による、日本溶接協会の勧告値ヒューム濃度3mg/m3を満足できる濃度である。
 
Fig. 9  Diffusing aspect of welding fume in the block model with Push type ventilation
 
(a) Speed of Ventilated flow: 1 m/s
 
(b) Speed of Ventilated flow: 3 m/s
 
(c) Speed of Ventilated flow: 4 m/s
 
(d) Speed of Ventilated flow: 6 m/s
 
(3)アーク点への送気による対策
 ヒューム低減対策の一つとして、溶接アーク点ヘファンにより送気する場合の解析を行った。ただし、この対策は強い気流によるシールドガスやアークの乱れを考慮しなければならない。解析は、立体ブロック内にファンを設置してアーク点へ向けて送気する状態を模しており、それ以外は全て基本解析モデルと同じ状況である。なお、ファンの配置は溶接点(A)より0.4m横、1.9m奥のブロック内側としている。
 ファンの気流速は2.0m/s〜6.0m/sについて解析を行い、その結果をFig. 10に示す。ブロック内に均一な換気流を発生させる場合に比べて、溶接点へのスポット的送気は発生した高濃度ヒュームの拡散を促進させる効果があり、アークの乱れなどの問題とは別として、換気効率上明らかに不利である。
 
Fig. 10  Diffusing aspect of welding fume in the block model with Blower towards welding point
 
(a) Speed of Ventilated flow: 2 m/s
 
(b) Speed of Ventilated flow: 4 m/s
 
(c) Speed of Ventilated flow: 6 m/s
 
4.2 ヒューム発生量の低減による対策
 溶接ヒュームは低ヒューム溶接棒を使用したり、溶接電流を変化させることにより単位時間当たりの発生量を少なくすること12)ができる。そこで、ブロック内ヒューム濃度を低減させるための対策として、溶接時に発生するヒュームの量を低減した状態の解析を行った。解析は、換気流速3.5m/sのPUSH-PULL型換気を行っている状態を模し、ヒューム発生量を標準発生量の30%、50%、70%として行った。それ以外の条件は全て基本解析モデルと同じである。
 解析結果をFig. 11に示す。これらの結果をヒューム発生率100%のFig. 6と合わせて比較すると、ヒューム発生量が多いと天井部に60mg/m3以上の高濃度エリアが現れるが、少ない場合には高濃度エリアが出現せず、ヒュームの拡散も極端に少ないことが分かる。従って、この対策はヒューム濃度低滅の効果が大きい。
 
Fig. 11  Diffusing aspect of welding fume using the way of low fume generation in basic block model
 
(a) Rate of Fume Generation: 30%
 
(b) Rate of Fume Generation: 50%
 
(c) Rate of Fume Generation: 70%


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