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日本船舶海洋工学会論文集 第2号

 事業名 造船学術の振興
 団体名 日本船舶海洋工学会 注目度注目度5


日中間物流の将来予測に基づく船舶設計手法に関する研究
正員 大和裕幸*  学生員 田中大士*
 
* 東京大学大学院新領域創成科学研究科
原稿受理 平成17年7月1日
 
A Design of the Liner Ship based on the Logistic Trend Prediction between China and Japan
 
by Hiroyuki Yamato, Member
Hiroshi Tanaka, Student Member
 
Summary
 Recently the amount of trade between China and Japan has been increasing. The trade value has grown by about 920% from 18.2 billion dollar in 1990 to 168 billion dollar in 2004. This paper presents a ship design procedure and implementation to integrate the logistic trends of the future and vessel design between China and Japan. To estimate the future logistic trends, authors made regression equation for trade value on per capita GDP of China and Japan. Several types of fleets were designed by a method which calculates the most efficient specifications depending on the travel speed, and were evaluated by the net present value of each fleet. Authors designed fleet between China and Japan, especially between Shanghai and Tokyo. And under some assumptions, the system provided a result that the fleet with four 25-knot ships offers the highest value of investment.
 
1. 緒言
 中国は1990年から2003年まで平均9%の経済成長を続け1)、それとともに日本−中国間の貿易額も急激に増加しており、1990年から2004年までの間に約9倍になっている2)。また、貿易を担う輸送手段はこれまで海上輸送が中心であったが、近年は輸送時間が短い航空輸送の比率が高まってきている。今後も日中間の貿易に変化が起こることが予想されるため、新しい船舶を設計する際には将来の輸送需要や物流を取り巻く政治・経済の動向に十分に注意した上で評価する必要がある。
 船舶を設計する上で重要になるデータがODデータと呼ばれる2地点間の貨物流動のデータである。これをもとに船舶に対する需要量を推計し、設計した船舶を実現させるかどうかを判断することが多い。しかし、日本と中国の間の貨物に関しては貿易統計のように国間レベルの情報しか得られないため、航路編成のような地域間レベルでの情報を必要とする場面においては何らかの推計を行わなければならないのが現状である3), 4)
 本論文では、日本と中国の経済と物流の現状を調査する。そして、地域間の貨物流動について詳細な統計がない日中間における地域間流動の推計手法と将来の貨物流動を予測する方法を提案し、その結果を示す。また、新しい船舶を東京−上海間に導入する場合について、物流の調査結果から運航の条件を設定し、山県の図表を用いる方法で船舶の設計を行う。最後に貨物量の予測結果に基づいて将来のキャッシュフローを計算し、設計案を投資対象としてNPV(正味現在価値)で評価する、という物流の将来予測を組み合わせた船舶の設計手法を示す。
 
2. 中国の経済と日中間貿易の現状
2.1 中国の経済
 2003年の中国のGDPは1.4兆ドルであり世界第7位の規模であるが、一人あたりのGDPは1087ドルで世界第l10位である。GDPの構成を見ると約50%を第二次産業が占めている。Fig. 1は1985年から2003年までの中国のGDPと1人あたりのGDPの推移をグラフにしたものである。比較のためにFig. 2に日本のGDP推移を示す。縦軸は左がGDP、右が1人あたりのGDPである。なお、2004年の総人口は12億9千万人であり、国連では2030年には14億8000万人に達すると予測している5)
 
Fig. 1 GDP trends of China
 
Fig. 2 GDP trends of Japan
 
2.2 日中間貿易の現状
 2004年における日本の香港を含む中国との貿易総額は22兆2千億円であり、日本の貿易額全体に占める割合は20.1%である。これはアメリカとの貿易総額20兆4800億円を上回る額であり、中国は日本の第一位の貿易相手国となっている。また、中国にとっても日本が中国最大の輸入相手国であるが、輸入と輸出を合わせた対中貿易総額では、日本は3位であり、EUが首位、アメリカが2位となっている。日本からの輸出品目としては電気機械や一般機械が多く、全体の50%近くを占めている。中国からの輸入品目は電気機械や衣類が多い。輸送手段別に貿易額を見ると海上コンテナ輸送の割合が最も高く2004年では全体の65%を占めている。航空輸送の割合が1990年には23%であったものが2004年には34%になっており、高速な輸送に対する需要が高まってきていることがわかる。日中間の輸出と輸入を合計した貿易額の推移を海上コンテナ輸送と航空輸送について示したものがFig. 3である。
 以上のような中国経済の発展や日中貿易の増加から今後の二国間を輸送される貨物量の増加が予想され、それに合わせた輸送システムの設計が重要になると考えられる。
 
Fig. 3 Trends of trade between China and Japan
 
3. 日中間貨物流動の将来予測
3.1 貨物流動の推計と将来予測手法
 船舶を設計する上で、将来の貨物輸送需要を知ることは仕様を決定するためにも重要なことである。しかし、日中間の物流に関して輸送需要の情報である品目別のコンテナ数で表された貨物流動に関する統計は存在しないため、何らかの方法で推計する必要がある。そこで本章では、正確な貨物流動の統計が存在しない地域間の貨物流動量を推計する方法と、将来の貨物量を予測する方法を示す。この方法では品目毎の地域間コンテナ流動量を推計することができる。なお、ここでいう『地域』とは、日本では『関東』や『近畿』、中国では『華中』や『華北』といったレベルの区分である。
 
1. 貿易統計から得られる輸出額、輸入額を目的関数とし、GDPや人口などを説明変数として貿易額に関する回帰式のモデルを作成する。その際に、説明変数間に強い相関関係が存在すると、相関係数が極端に高くなったり符号が逆転したりするといった多重共線性の問題が生じることがあるので注意する必要がある。
2. 基準とする年の貿易統計から海上コンテナ輸送されている貨物の品目毎の重量の値を得る。はじめから重量の予測モデルを作成しないのは、貿易統計には重量が示されていない品目が存在するためである。ここで重量が示されていない貨物の割合が高すぎないか確認する。
3. 得られた重量の値と鶴田らの研究3)で調査された40品目についてのコンテナ数と重量の換算値を用いることで、コンテナ数で表現された貨物量を得る。
4. ステップ1で得られたモデルに説明変数の将来予測値を代入することで輸出入額の将来予測値を得る。
5. 貿易統計の分析より、「貿易品目の構成が将来も変化しない」、「貨物量は貿易額に比例する」という仮定をおき、ステップ3で得た貨物量を用いてコンテナ数で表現された貨物の総量の将来予測値を得る。
6. ステップ5で得られた貨物量を地域ごとの総生産額に応じて配分することにより、現在の地域間の貨物流動量の推計から将来予測までを行う。地域ごとの総生産額で貨物量を配分する方法をとった理由は、3.2でも示すように経済規模が貨物流動量に与える影響が大きいと考えられるためである。地域間の流動量の計算例として、中国のA点から日本のB点へ移動する貨物量を考える場合は以下の式(1)で決定される。
 
 
QXY:XからYへ向かう貨物量(TEU)
GDPx:Xの総生産額(各国通貨)


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更新日: 2019年8月10日

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