日本財団 図書館


4. 数値シミュレーション
 本論文では性能評価のために数値シミュレーションを行った。Fig. 8にその結果((a):ライザー管上端部位置、(b):ライザー管全体傾斜角、(c):ライザー管最下端部位置、(d):制御入力)を示す。すべての変数は無次元値として表示している。また、性能比較のために、||=1.5, 0, 0.75の時をノミナルシステムとしたLTI H制御をそれぞれLTI#1〜LTI#3として、その結果も付記している。LTI#1制御の結果は目標値近傍で振動現象が発生している。この現象をより詳細に観察するために、Fig. 9にライザー管の挙動を2次元的に表記したもの、Fig. 10に各モードの振幅の時系列の結果を示す。LPV制御は目標点近傍でも揺れる事なく制振されている一方、LTI#1制御は高次の振動モードまでもが発生していることが分かる。これは、制御工学の観点から考えると、コントローラが||=0のシステムに対応できずに、その結果、虚軸近傍の極を不安定側に移行させ、高次の振動モードを誘起させたスピルオーバ現象と考えられる。これは疲労強度や作業効率などの観点から考えると、避けなければならない現象である。
 Table 1に、LTI H制御とLPV制御のライザー管の最大上部傾斜角、制御入力の比較したものを示す。上部傾斜角とは全体傾斜角とたわみによる傾斜の和(本論文では、1次モードのたわみのみを考慮)である。ライザー管の上部傾斜角の許容範囲は、ライザー中を通るドリルパイプとライザーが接触して破損する可能性があるために、3度(約0.05rad)程度であると言われている。LPV制御は最も上部傾斜角を押さえ込んでおり、最も傾斜角の大きいLTI#1制御の約半分になっている。また、本論文においては浮体部の運動を考慮していないために、制御入力が現実的であるかどうか検討することは困難であるが、LPV制御の最大制御入力は他のLTI H制卸と比較しても小さいことから、非現実的な過大な入力は要求しないものと考えられる。以上より、LPV制御はライザー管のリエントリー制御に対して有効な方法であると考えられる。
 
Fig. 8  Comparison between LTI H control and LPV control
(a) Top point position
 
(b) Connected riser's angle
 
(c) Bottom point
 
(d) Controller output
 
Fig. 9  Simulation results of flexible marine riser's sway motion in reentry operation ((a): LTI#1 control result, (b): LPV control result)
(a) LTI#1 Control
 
(b) LPV Control
 
Fig. 10  Time series of 1〜8 mode amplitudes (solid line: LPV control result, dotted line: LTI#1 control result)
(a) 1st mode amplitude W1
 
(b) 2nd mode amplitude W2
 
(c) 3rd mode amplitude W3
 
(d) 4th mode amplitude W4
 
(e) 5th mode amplitude W5
 
(f) 6th mode amplitude W6
 
(g) 7th mode amplitude W7
 
(h) 8th mode amplitude W8
 
Table 1 Controller performance
Max.Top Angle (rad)
LTI#1 LTI#2 LTI#3 LPV
0.066 0.041 0.056 0.031
Max. Contr. Output
LTl#1 LTI#2 LTI#3 LPV
19.247 18.992 8.602 12.433


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION