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3. 模型実験結果と数値計算結果の比較
 本研究では先ず、自由落下式救命艇の船型と着水性能の関係について検討する。性能改善のためのプロトタイプ(prototype)船型としては、平成16年度に海上技術安全研究所において模型実験を実施したFree-fall模型艇(Fig. 3)を採用する。実験では、落下高さ、スキッド角、滑降距離、載荷状態等を種々変えたシリーズ実験を行い、着水時の模型艇の運動および艇に生ずる加速度を計測した。
 
Fig. 3  Lifeboat model and the position of accelerometers.
 
 模型実験において計測された水面突入時の加速度時系列を数値シミュレーション結果と比較してFig. 4に示す。同図は、船首(A1)、ミッドシップ(A2)、船尾(A3)に設置された加速度計の上向きの加速度成分を示している。実験結果と数値計算結果の対応は良好であり、第2章に示した数値計算法の有効性が確認できる。なお、他の船型に対する加速度の数値計算と模型実験の比較は著者らの論文2)-7)を参照いただきたい。Fig. 4の結果からは、本艇ではミッドシップ、船尾に比べ船首における加速度が大きいことが分かる。
 次に、本艇の水面突入時の運動をFig. 5に示す。本艇では着水時に船首に対し上向きに大きな衝撃力が作用し、艇には頭上げのモーメントが与えられる。この結果、救命艇は一旦水面上に飛び上がるように浮上して母船から離れる方向に大きな前進速度で慣性走航する。母船から離れる方向の速度をもつという点は自由落下式救命艇の運動として望ましいものであるが、Fig. 4に示されているように上向き加速度の絶対値が大きい点には改善の余地がある。また、浮上後に再び水面に突入する際に、船尾スラミングを起こす点も要注意である(Fig. 4、Fig. 5参照)。
 
Fig. 4  Comparison of the measured and computed acceleration in the normal direction (H=2.273L, Θ=40°, Lgo’=0.648L, Lra=0.1924L, L=1.1m; definitions of parameters are shown in Fig. 9).
(a) Measured acceleration (aξ)
 
(b) Computed acceleration (aξ)
 
Fig. 5  Computed water entry motion of the free-fall lifeboat (H=2.273L, Θ=40°, Lgo’=0.648L, Lra=0.1924).


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