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3.4 金属ヒュームの濃度分布
(1)NC切断ライン
 A造船所のNC切断ライン区画の通路(計測高さ0.53m)と休憩所(高さ1.04m)において計測した質量濃度C1は2.47mg/m3、2.20mg/m3であり、ACGIHの勧告する許容濃度(5mg/m3)を下回っている。しかし、キャットウォーク付近の垂直方向の濃度(冬季)はFig. 3のように上方へ行くほどヒューム濃度が高くなり、ヒューム濃度は許容濃度に近づいている。このため、NC切断機上方で作業を行う場合は防塵マスクなどの個人防護対策が必要である。なお、作業者の呼吸器高さ(2m以下)におけるヒューム濃度は許容濃度の1/3程度となっている。
 B造船所の工場床面における計測結果をFig. 4に示すが、ヒューム濃度は許容濃度を大幅に下回っている。また、垂直方向のヒューム濃度(冬季)はFig. 3のようになるが、A造船所のようなヒューム濃度の高さ方向の変化は見られず、全般にB造船所はヒューム濃度が低い。これらは工場内の換気状態にも依存している。
 
Fig. 3  Mass density of metallic fume on measuring height
 
Fig. 4  General arrangement of fabrication shop of B-shipyard and fume concentration near floor
 
 切断ヒュームは溶接ヒュームよりも微細であり、目測によるとヒュームは工場天井付近にまで到達しており、そのため上部壁面に開口部を設けることや、工場天井に設置した換気ファンによる排気はヒューム濃度低減に有効であると考えられる。
 
(2)小組立ライン
 小組立ラインは比較的開放的な空間であり、作業工程の進展により溶接ヒュームの量は時間変化している。そこで、小組立ラインの通路脇(1.5m高さ)において一定時間ごとに溶接ヒューム濃度の定点計測を行った。A造船所における計測結果(平均温度9.4℃、平均気流速0.15m/s)をFig. 5に示す。サンプラーによる計測(棒グラフ)により、始業後および午後の始業直後にヒューム濃度が高くなっていることがわかる。それ以外の時間帯ではヒューム濃度はピーク時の半分程度まで下がっている。なお、光散乱方式濃度計による計測結果(点群)は、サンプラー計測と比較して計測時間が短いために計測位置目前の溶接作業に大きく依存して計測値に揺らぎがあるが、概してサンプラーによる計測結果と同様の傾向を示している。
 
Fig. 5  Variation of fume concentration as time proceeds
 
 B造船所におけるヒューム濃度の時間変動の計測結果はここでは省略するが、A造船所と同様な傾向を示している。また、小組立ライン内のヒューム濃度分布の計測結果をFig. 6に示す。これにより発生したヒュームは気流の影響を受け発生源である溶接作業域より大きく流され、通路や休憩所にまで達していることがわかる。
 以上のように、両造船所ともに一日を通して溶接ヒュームが許容濃度を上回ることはないが、小組立ラインにおけるヒューム濃度の時間変動はその日の作業工程や開口部からの気流に大きく依存しており、作業工程や風況などを考慮して防塵マスクなどの防護対策が必要である。
 
Fig. 6  Distribution of fume concentration in sub-assembly division of B-shipyard


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