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(2)運航シミュレーションの検討
 海・気象データ例を元に、荒天回避のための運航シミュレーションを行い、安全に荒天を回避できるかどうか調べている。荒天回避のための運航シミュレーションは次の航路決定条件によっている。
1)台風時期も稼動する。
2)24時間連続稼動する。
3)台風接近(強風域)は稼動する。(風車11基)
4)台風直撃(暴風域)は回避する。
5)沖ノ鳥島を中心とする半径200海里(370.4km)の許容円内(以下EEZと称す)に留まる必要がある。
6)帆は常時使い続ける。
7)針路は風に対して真横にとることを基本とする。
8)変針、方向転換は帆による。
9)方向転換はスイッチバック式による。ただしスイッチバック時は全風車をフェザリングする。
 
Fig. 14  Trajectory of the typhoon and the position of the wind farm on 3 August
 
Fig. 15 Trajectory of the wind farm
 
 図14に台風経路とシミュレーション時の浮体初期位置(8月3日の浮体位置)との関係を示す。図中の破線は沖ノ鳥島EEZ円を表す。何れのケースも浮体位置は台風の右半円に位置し、ケース1-2〜ケース1-5での浮体位置は発達中の台風に最も近い。
 一例としてケース1-4の場合の8月3日〜8月9日までのシミュレーションによる浮体の航跡を図15に示す。図16は浮体が遭遇した風向・風速、図17は有義波高・波周期・波向の時系列、図18は風車の発電電力量とスラスタが消費した電力量である。図17に示すように、浮体が遭遇した有義波高は6m以下であり、スラスタ併用によって危険な海象を回避できている。なお図18に示すように、1週間(8月3日〜8月9日)の風車の積算発電電力量は約330万kwh、台風回避用に消費したスラスタの積算電力量は約64万kwh、すなわちスラスタの消費電力量は風車の発電電力量の19.2%である。
 
Fig. 16  Wind speed and wind direction that the wind farm met
 
 多数のシミュレーションの結果、スラスタに関しては定格出力4,200kW×6基の装備によって最大7〜8ノットの退避速力が得られること、本浮体の位置保持性能に関しては、通常の稼動条件下において、帆のみを推進力として風に流されずに一定の海域内において運用可能であること、常に風況の良い海域を狙って移動することでより高い設備利用率が期待できること、また事前に荒天を予測することにより、帆とスラスタによって安全に荒天を回避できる見通しを得た。
 
Fig. 17 Sea conditions that the wind farm met
 
Fig. 18  Generated power by wind turbines and spent power by thrusters


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