日本財団 図書館


(2)排煙処理システム性能評価試験(ジェットスクラバ+ACF反応器)
 システム全体の性能評価試験はL/G=6.2L/Nm3の条件にて実施した。小型発電機用ディーゼル(A重油燃料)を用いたジェットスクラバ単体性能評価試験とは異なり、C重油を燃料として用いた条件で試験を実施した。SOX濃度(ジェットスクラバ入口)の条件を表4.2.14に纏めた。
 
表4.2.14 各試験におけるSOX濃度条件
SOx濃度 備考
ジェットスクラバ単体性能評価 〜290 燃料:A重油
システム性能評価 濃度調整前 580〜610ppm 燃料:C重油
濃度調整後 900〜1,000pppm
 
 本試験のジェットスクラバにおけるばいじん除去率を図4.2.19に示す。ジェットスクラバ単体性能評価試験結果と比較し、除去率の低下が確認された。ディーゼルエンジン、使用燃料(A重油、C重油)の違いによりばいじんの平均粒径が小さくなった等の以下の要因が考えられる。
(1)ばいじん粒径の差異(燃料、エンジン起因)
(2)スプレー海水温度の差異
(3)海水の循環使用の有無
 本試験は4サイクルディーゼルエンジンを使用して実施しており、舶用の大型2サイクルディーゼルエンジンに適用した際のばいじん除去率については今後の評価課題である。
 
図4.2.19 ジェットスクラバにおけるばいじん除去率
<スクラバ単体評価/A重油小型発電機ディーゼル試験、システム評価/C重油大型発電機ディーゼル試験>
 
 表4.2.14 に示すように、未調整時のSOX濃度は約600ppmであった。そのため本試験では、ジェットスクラバ入口のSOX濃度が900〜1,000ppm(燃料中の硫黄含有量が4.5%のケースを想定)になるように調整した条件を加えた2ケースにおいてSOX除去性能評価を実施した。スクラバ単体性能評価試験(低SOX濃度条件)も加えた各条件におけるジェットスクラバのSOX除去率を図4.2.20示す。900〜1,000ppmの条件ではSOX除去率は60%程度となった。
 
図4.2.20  ジェットスクラバにおけるSOX除去率と入口SOX濃度の関係
 
 システム全体でのSOX除去率、ばいじん除去率、SOF除去率を図4.2.21に示す。本条件で目標SOX除去率である65%(排煙処理システム出口で6g/kWh以下)を達成することができた。しかし、長期運用時のSOX除去性能は未評価のため今後の課題である。
 
図4.2.21  システム全体でのSOX除去率、ばいじん除去率、SOF除去率
 
 本試験の排煙処理システムから排出された海水の性状を表4.2.15に示す。現在、IMO(国際海事機関)においては、排気ガスを海水で処理する本研究のようなスクラバ技術に関する排出水の基準検討が検討されているが、明確な基準は設けられていない。そのため参考基準として水質汚濁防止法の値を併記しているが、pHのみが基準外となる。このpH2.7の排水に対する処理方法については4.3.2項にて検討する。
 
表4.2.15 ジェットスクラバおよびACFから排出される海水の性状※
項目 性状 水質汚濁防止法 等
pH 2.7 5〜9
SS 3.7mg/L <200mg/L
CODMn 7.5mg/L <160mg/L
N-ヘキサン抽出物 <0.5mg/L <15ppm
※入口SOX濃度が約600ppmの場合


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION