4.3 実証システムの性能試験
つぎに各種パラメータ試験の結果を示す。具体的には下記に示すパラメータ試験を行った。それぞれについて結果を示す。
(1)超臨界水噴射量
(2)噴射タイミング
(3)噴射水温度(超臨界点以下の350[℃])
(4)燃料噴射タイミング(ベースエンジンデータを変更)
超臨界水の噴射量を変化させて試験を実施した。各試験ケースの主要性能データを表.4-3-1に、また噴射時の波形他を図.4-3-1に示す。
表.4-3-1 試験ケースと主要性能データ(パラメータ:噴射量)
|
|
単体 |
case1 |
case2 |
case3 |
case4 |
case5 |
負荷 |
% |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
噴射水圧力 |
MPa |
- |
33 |
33 |
33 |
33 |
33 |
噴射水温度 |
℃ |
- |
423 |
425 |
430 |
433 |
436 |
噴射量 Gw/Gf |
|
- |
0.35 |
0.47 |
0.86 |
1.18 |
1.32 |
効率 |
- |
1.0 |
1.017 |
1.026 |
1.045 |
1.059 |
1.062 |
NOx |
- |
1.0 |
1.01 |
0.96 |
0.90 |
0.86 |
0.84 |
|
図.4-3-5に示すとおり、噴射量と効率改善幅およびNOx低減幅はよく相関がとれており、噴射量が両指標に強く影響していることが見てとれる。
超臨界水の噴射タイミングを変化させて試験を実施した。各試験ケースの主要性能データを表.4-3-2に、また噴射時の波形他を図.4-3-2に示す。なお試験はA側の超臨界水噴射弁1本にて実施した。
表.4-3-2 |
試験ケースと主要性能データ
(パラメータ:噴射タイミング) |
|
|
単体 |
case1 |
case2 |
case3 |
case4 |
負荷 |
% |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
噴射水圧力 |
MPa |
- |
32 |
32 |
32 |
32 |
噴射水温度 |
℃ |
- |
433 |
423 |
436 |
437 |
タイミング |
ATDC |
- |
-30 |
-20 |
-8 |
0 |
噴射量 Gw/Gf |
|
- |
0.73 |
0.87 |
0.98 |
1.10 |
効率 |
- |
1.0 |
1.042 |
1.039 |
1.037 |
1.031 |
NOx |
- |
1.0 |
0.75 |
0.84 |
0.93 |
0.97 |
|
本試験では噴射量はいずれも、1.0倍弱程度であるが、噴射タイミングにより効率とNOxが大きく変化する傾向となった。本試験のなかで最も早く噴射したcase1が、効率およびNOxが最も改善される結果となり、最も遅いタイミングで噴射したcase4が、効率およびNOxが改善幅が小さい結果となった。
なお噴射の波形については、遅いタイミングの噴射では、遅れの少ない応答波形が得られている。ケース4のタイミングでは、筒内圧力がPmaxに近いところでリフトが開始しており、先述のサック内圧力が十分高いためと考えられる。
4.3.3 超臨界水温度変化試験(超臨界点以下での噴射試験)
噴射温度を超臨界点以下の350[℃]で噴射せる試験を実施した。各試験ケースの主要性能データを表.4-3-3に、また噴射時の波形他を図.4-3-3に示す。
表.4-3-3 試験ケースと主要性能データ(目標噴射温度350℃)
|
|
単体 |
case1 |
case2 |
case3 |
case4 |
負荷 |
% |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
噴射水圧力 |
MPa |
- |
32 |
32 |
32 |
32 |
噴射水温度 |
℃ |
- |
343 |
340 |
334 |
343 |
噴射量 Gw/Gf |
|
- |
0.93 |
0.90 |
0.58 |
0.86 |
効率 |
- |
1.0 |
0.999 |
0.999 |
0.999 |
1.001 |
NOx |
- |
1.0 |
0.968 |
0.969 |
0.952 |
0.944 |
|
結果に示すように効率およびNOxに大きな変化は見られなかった。超臨界点以下の350[℃]での水のエネルギーは低いため(1650[kJ/kg]@350[℃]、2750[kJ/kg]@450[℃])、事前の検討どおり、効率は改善されない結果となった。
4.3.4 エンジンベースデータ変更試験(進角が遅い場合)
エンジンベースデータを変更して試験を実施した。具体的には進角を-1.8[deg]として、燃焼を緩やかにした場合で超臨界水噴射試験を実施した。各試験ケースの主要性能データを表.4-3-4に、また噴射時の波形他を図.4-3-4に示す。
表.4-3-4 |
試験ケースと主要性能データ
(エンジンベースデータ変更) |
|
|
単体 |
case1 |
case2 |
case3 |
case4 |
負荷 |
% |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
噴射水圧力 |
MPa |
- |
33 |
33 |
33 |
33 |
噴射水温度 |
℃ |
- |
431 |
435 |
432 |
420 |
噴射量 Gw/Gf |
|
- |
0.50 |
1.13 |
0.46 |
0.14 |
効率 |
- |
1.0 |
1.013 |
1.049 |
1.013 |
1.004 |
NOx |
- |
1.0 |
0.81 |
0.69 |
0.83 |
0.93 |
|
図.4-3-5に示すように効率については、これまでの結果と同様に流量に比例する傾向が得られた。NOxについては、これまでのに比較してより改善される結果となった。
図.4-3-1 パラメータ試験結果(噴射量)
図.4-3-2 パラメータ試験結果(噴射タイミング)
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