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吟剣詩舞の若人に聞く[第78回]
柴田きよ乃さん
 
柴田きよ乃さん(十歳)愛知県岡崎市在住
(平成十七年度全国剣詩舞コンクール決勝大会詩舞幼年の部優勝)
弟:柴田和都くん
母:柴田晴美さん
祖母:柴田千尋さん
総範:杉浦英容さん
宗家:杉浦容楓さん(天辰神容流)
 
努力は天才に勝る
 コツコツと努力を重ね、見事に優勝を手にした柴田きよ乃さん。彼女の吟剣詩舞への思いや、ご宗家、指導者、ご家族の彼女に対する気持ちなどをお聞きしました。
(平成十七年九月十八日、全国剣詩舞コンクール決勝大会入賞者発表後、笹川記念会館にて収録)
 
――優勝おめでとうございます。
きよ乃「ありがとうございます。すごく嬉しいです」
――演技には自信はありましたか?
きよ乃「初めて全国大会に出場したので緊張したから、自信はなかったです」
――初めて全国大会に出て優勝はすごいね?
きよ乃「うふふふ・・・」(笑)
――ところで何歳から詩舞を習っているの?
きよ乃「・・・覚えていません・・・」(笑)
容楓「二歳の終わりごろからですから、覚えていないと思います。気がついたら習っていたのですから」
――始めるきっかけは何でしょうか?
容楓「いろいろ理由はありましたが、私が引っ張り込んだということでしょう」(笑)
――初めのころは、いかがでしたか?
容楓「どうなるやら、ぜんぜん先のことはわからないという感じでしたが、詩舞を好きにさせる自信はありましたし、気がついたときには好きになるように、みんなで流れを作りました」
――それでも、ぐずる時もあったのでは?
容楓「ありましたが、私も歳をとりましたので(笑)、この子に関しては非常に優しく接してきました(爆笑)。怖いのはあちらのお婆様で(笑)、じつは私の実の姉ですが、毎日お稽古させてくれました」
――指導して、きよ乃ちゃんの印象や素質といったものはいかがでしたか?
英容「生まれたときから知っていますので、特に印象はありませんでしたし(笑)、素質も特に秀でているほうではなかったですね」
――でも、それが優勝まで来たというのは何でしょう?
英容「たまたま本人に合った題材に巡りあえたというのもありますし、とにもかくにも毎日お稽古をしたという揺るぎない実績がありますから、それらが優勝へ導いた理由だと思います」
容楓「いま英容が申したとおり、これは親戚だから謙遜していうのではありませんが、指導し始めたとき、光るものはあまり感じませんでした(笑)。しかし、努力は天才に勝るといいますか、毎日弟と一緒にコツコツとお稽古していた。その積み重ねだと思います。しかも、いまは詩舞が好きといってくれるようになりましたので、踊りということに興味を持ってくれているようです」
 
優勝の喜びを語る写真左より母の柴田晴美さん、弟の柴田和都くん、杉浦容楓宗家、柴田きよ乃さん、師の杉浦英容総範、祖母の柴田千尋さん
 
――努力家タイプですか?
容楓「努力家というより、コツコツやったというだけですかね」(爆笑)
――毎日お稽古は大変で、嫌になった?
きよ乃「嫌だなと思ったことはありませんが、注意されたことが直らないときなどには、お稽古は大変だなと思いました」(笑)
――先ほど、題材が合っていたということでしたが、どんな点が合っていましたか?
英容「この子の動作は、よく言えば落ち着いていて大人びている。悪く言えば押しが弱いのですが、この『春夜洛城に笛を聞く』は別れをテーマにした静かなイメージの曲ですし、この子の落ち着きがプラスに働くのではないかと思いました。華やかな出し物によってはマイナスになる持ち味ですので、たまたま本人の動きが作品とマッチした良い例だと思います。その人に合った作品と巡り合うことも、コンクールで上位に行くポイントの一つではないでしょうか。その意味で、きよ乃にとって今年はラッキーだったといえます」
 
インタビューを終えて、前列左より杉浦英容総範(師)、柴田きよ乃さん、杉浦容楓宗家、後列左より柴田晴美さん(母)、柴田和都くん(弟)、柴田千尋さん(祖母)
 
――振り付けは、以前、課題曲として出たものに振り付けたのと同じですか?
英容「以前のものをべースにしていますが、多少アレンジを加えたところもあります」
――ところで、先ほど少し話に出ましたが、弟さんも習っているの?
きよ乃「はい、剣詩舞に吟詠を習っています」
――弟と練習していてどうですか?
きよ乃「楽しいです」
――姉から見て弟はうまいの?
きよ乃「詩吟はうまいと思うけど・・・」(笑)
容楓「明日の全国吟詠コンクール決勝大会もきよ乃は好運にも出場できるのですが、地元では弟に負けないように頑張れという評判もあるくらい、弟は上手です」
――学校の友達は剣詩舞のことを知っているの?
きよ乃「剣詩舞のことは話しにくいので、話すのをやめているから知らないと思います」(笑)
――今後のことですが、どのような指導をされていきますか?
英容「もちろん、この子の良いところは伸ばしながらも、欠けているところ、押し出しの弱さなどを強化しながら、成長させていきたいと考えています」
――吟剣詩舞すべて習っているけど、何が好き?
きよ乃「う〜ん、詩舞かな。次が吟詠で剣舞です」(笑)
――皆さんから、きよ乃ちゃんヘアドバイスなどはありますか?
容楓「今日まで、よくがんばってくれたと思います。このまま素直に、好きという気持ちを大切に、やっていってほしいと思います。高いことは望みません、堅実に歩み続けてください」
英容「これからは、自分で考え自分で選んでやっていけるように、成長していってほしいと思います」
千尋「吟剣詩舞はすべて、この子に任せて、成長を楽しみにしています」(笑)
晴美「自信の持てることができたというのは良いことですし、このまま続けてほしいです」
――きよ乃ちゃん、最後にこれからも吟剣詩舞を続けますか?
きよ乃「はい、続けます」
――今日は慌ただしい中、インタビューにお答えいただきありがとうございます。明日の全国吟詠コンクールも優勝目指して、がんばってください。


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