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平成十七年度全国吟詠コンクール決勝大会
人を感動させる吟とは、正しい言葉、良い声、良い流れ
●平成十七年九月十九日(敬老の日)
●笹川記念会館・国際ホール
 
開会の辞を述べる鈴木吟亮副会長
 
 吟詠家が日々研鑽の成果を競い合う場として、また、吟道振興のより一層の資とするために誕生した全国吟詠コンクールに、今年も各地区予選を勝ち抜いてきた総勢一四九名の精鋭が挑戦しました。
 競吟は午前に幼年、少年、青年、一般三部が審査され、午後は一般一部と二部の競吟が行なわれました。河田和良財団会長の挨拶などを経て、全国吟詠コンクール決勝大会の幕が、高まる期待と緊張感のなか、切って落とされました。
 まず幼年の部のトップバッターを飾ったのは、田中祥汰くん(兵庫)で、一番手という重圧にも負けずに立派に吟じていました。以降、十二番の難波愛さん(兵庫)まで、十二名の幼年が、子供らしさのなかにも堂々と吟じている姿が印象的でした。少年の部では土田彩乃さん(岐阜)から、二十八番の森田夏代さん(鹿児島)まで、十六名が挑戦し、皆さん一生懸命に吟じていました。幼年や少年のみなさんが、このまま吟詠に精進してくれたなら、吟界の大切な人材として吟詠発展に大きく貢献してくれるのではないかと、期待してしまいました。
 青年の部では平山亜弓さん(兵庫)から、笹本若未さん(兵庫)まで、十九名が挑戦し、吟詠の随所に練習を重ねてきた後がうかがえ、真摯な態度で吟詠に取り組んでいる様子がひしひしと伝わってきました。幼少年と同様に、彼らもこれからの吟界をぜひリードしていって欲しいものです。
 一般三部は池田一彦さん(兵庫)から、宮下多美子さん(愛媛)まで、総勢十五名が競吟に臨みました。さすがベテランの方々と思わせる吟詠を披露してくれましたが、なかにはコンクールの緊張からか、絶句する方もいらして、その重圧感は聴いている人の想像以上のものがあるのでしょう。
 午後からは一般一部と二部が審査され、一部は坂本裕さん(佐賀)から、植田恵理子さん(奈良)まで、三十五歳から五十四歳までの三十三名が挑戦しました。年齢的に、吟詠に対する技も心も伸び盛りであり、聴き応えのある吟詠を味わうことができ、訪れた愛吟家の方々も満足げな表情を浮かべていました。一般二部は日野高子さん(青森)から、島口和子さん(徳島)までの五十五名が審査を受けました。指導者としてお弟子さんを教えているように見える方々も、コンクール特有の緊張感によって、なかには表情の硬い方も見受けられましたが、だいたいは安定した味わい深い吟詠を満喫できました。
 すべての競吟が終了すると、審査結果発表までの時間を利用して、審査講評が河田和良審査委員長から行われました。その話は次のようなものでした。
●決勝大会だけあり、すばらしい吟詠を聴くことができたが、掘り下げれば誰にでも欠点はあるので、その点は今後気をつけてもらいたい。
●審査結果として、調和(二十点満点)では十七点が青年の部で一人、十六点は一般一部で一人、十五点は幼年が一人、少年が三人、青年が六人、一部が一人、二部が五人、十四点からは団子状態。正しい音程、そく調和ということがあるかもしれないが、曲にのりきれず、不自然だなと若干感じさせてしまうと、調和点は減点されてしまう。
●発音は大変良いが全体で九十七名、良い(一箇所のミス)が三十七名、やや良い(二箇所のミス)が十二名、やや悪いが一名、大変悪いが残念ながら一名いた。
●一般審査で感じたことは、吟の大事なことは言葉の正しさであり、しかも正しい言葉で、良い声で、良い流れで吟じないと、人を感動させることはできない。
など、吟詠家の方々には耳の痛い、また重要な講評がなされました。
 
河田和良審査委員長の審査結果発表。後方は審査委員の皆さん
 
 そして、最後に一般一部と二部の審査発表が行なわれ(幼年、少年、青年、一般三部は昼休み後に発表)入賞者の名前が呼ばれるたびに場内からは歓声と拍手が起こり、コンクールならではの悲喜こもごもが感じられました。入賞した方々へは河田和良財団会長から賞状やトロフィーが手渡され、熾烈な競吟大会にも幕が下りました。来年は、さらに精進した、すばらしい吟詠が聴けることを楽しみにしたいものです。
 
河田大会会長から優勝トロフィーを受ける一般一部優勝者・榮葉子さん
 
平成17年度
全国吟詠コンクール決勝大会 入賞者一覧
〔(文)は文部科学大臣賞〕
●幼年の部
優勝(文)  伊達 佳内子 (東京)
2位  田内 祥汰 (兵庫)
3位  鈴木 菜摘 (愛知)
4位  西田 伽湖 (山口)
5位  森田 晃代 (鹿児島)
●少年の部
優勝(文)  遠藤 衣恵 (群馬)
2位  堅正 理恵 (大阪)
3位  森田 夏代 (鹿児島)
4位  土田 彩乃 (岐阜)
5位  乾 貴美子 (高知)
●青年の部
優勝(文)  仲宗根 香 (大阪)
2位  向山 里水 (熊本)
3位  荒崎 春奈 (神奈川)
4位  野嶋 志帆 (愛知)
5位  堂前 優子 (大阪)
6位  笹本 若未 (兵庫)
7位  白神 信子 (岡山)
●一般一部
優勝(文)  榮 葉子 (沖縄)
2位  山本 弥生 (兵庫)
3位  植田 恵理子 (奈良)
4位  堺 健次郎 (福岡)
5位  長沼 純子 (東京)
6位  森脇 弥生 (徳島)
7位  玄馬 透 (岡山)
8位  梶田 喜美代 (高知)
9位  圓山 京子 (岡山)
10位  安藤 聖子 (愛知)
●一般二部
優勝(文)  堀川 泰司 (群馬)
2位  吉田 一世 (兵庫)
3位  金営 三枝 (熊本)
4位  脇本 修美 (奈良)
5位  武 直子 (岡山)
6位  河上 道子 (東京)
7位  平松 美智子 (岡山)
8位  星野 美喜恵 (神奈川)
9位  中山 豈子 (長崎)
lO位  是久 芙美子 (広島)
11位  中野 紀美子 (大阪)
12位  島口 和子 (徳島)
●一般三部
優勝(文)  山内 チヨコ (広島)
2位  山口 剛 (大阪)
3位  布施 才二 (奈良)
4位  広瀬 光子 (岡山)
5位  太貫 富士夫 (福岡)
 
優勝者の喜びの声
◇幼年の部/伊達佳内子さん(東京)
 「トロフィーを持てて、気持ちがいいです。やったー、という感じで、うれしいです。これからも、一生懸命に吟詠を練習します。」
◇少年の部/遠藤衣恵さん(群馬)
 「賞状やトロフィーを手にして、ああ優勝した、という実感がわいてきました。今後、この優勝を励みに、大会にもコンクールにも吟詠にも、さらにがんばらなければと思います」
◇青年の部/仲宗根香さん(大阪)
 「こんなに賞状やトロフィーをもらっても、家に置く場所がないので困っています(笑)。優勝したという実感もまだ少なく、これからジワジワと出てくるのだと思います。ありがとうございました」
◇一般一部/榮葉子さん(沖縄)
 「沖縄地区からの優勝は初めてと聞いて、感無量です。練習通りにできれば良いかなと思って臨みました。母をはじめ、周りの先生方にはいろいろとお世話になり、たいへん感謝しています。」
◇一般二部/堀川泰司さん(群馬)
 「これまで何度挑戦しても失敗ばかりでした。やっと念願かない、優勝することができました。これで家元先生、宗家先生、担当の先生にご恩返しができたと思います。」
◇一般三部/山内チヨコさん(広島)
 「二十年やってきましたが、優勝させていただいたのは初めてで、大変うれしいです。今日は声の調子が良くなかったので、声が割れないように注意して吟じました」


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