日本財団 図書館


第29回全国高等学校総合文化祭あおもり'05
「青春の夢 青い森かけめぐり 文化の虹ときらめいて」
日時●平成17年7月31日(日)場所●ぱ・る・るプラザ青森
 
閉会式で講評をされた寺島城靖氏(青森県吟剣詩舞道総連盟理事長・財団参与)
 
本州最北の地に咲く、吟と舞
 文科系高校生の夏の甲子園ともいわれる「全国高等学校総合文化祭」。今年は縄文文化発祥の地である青森県で開催されました。
 
青森県高等学校文化連盟吟詠剣詩舞部会による空手吟「空手道」から
 
京都府高等学校芸術文化連盟吟詠剣詩舞部会による構成吟「郷愁の古都」から
 
 定刻の午前九時に幕が上がり、まず、中村三千男青森大会吟詠剣詩舞部門委員長が挨拶に立ちました。「吟剣詩舞は気を養うものであり、気は生命の原動力である。若い時代に古今の名詩や名句を吟じ舞うことは、心の高揚、豊かな感受性の育成につながる」と、吟剣詩舞のもつ役割と効用を話され、つづいて高校生を代表し、小野遼太朗青森大会吟詠剣詩舞部門実行委員長が、練習の成果を皆様の前で堂々と、精一杯に発表することを力強く誓いました。また、加福巧青森県実行委員会吟詠剣詩舞部会長は「吟剣詩舞のような古くからの伝統を吟じ舞うことは、必ずやこれからの人生における心の糧になるはず」と語られ、挨拶の最後は、佐々木誠造青森市長の祝辞が読み上げられました。そして、祝電紹介では、河田和良財団会長のお祝いの言葉も披露されました。
 舞台は一番の福井県から二十番の青森県まで全二十県、九十校、二九〇名による吟剣詩舞が披露され、演じ方も独吟をはじめ、構成吟、書道吟、剣詩舞などバラエティーに富み、内容も各県の歴史や自然風土を表現する詩歌によって構成されていました。また、たった二名から立ち上げて、今日二十名での出場をはたした福岡県高等学校吟詠剣詩舞部会や、県下にはほとんど吟剣詩舞の部活動がないのに十九回目の出場となった熊本県高等学校文化連盟吟詠剣詩舞部会。初出場となる京都府高等学校芸術文化連盟吟詠剣詩舞部会など、地道な努力を重ねてきた学校からフレッシュな学校まで、各校の個性を感じさせる舞台を堪能することができました。
 プログラムの最後は地元青森県の舞台で、吟剣詩舞を身近に感じてもらうために「吟詠剣詩舞に親しもう」というテーマで、熱のこもった舞台を展開しました。多くの若人が吟剣詩舞のもとに集まり、けれんみのない溌刺とした演舞を披露する姿に、これからの吟界、剣詩舞界の躍進を期待せずにいられませんでした。
 閉会式では寺島城靖財団参与が登壇し、「選ばれ、期待され、努力して、見事に大役を果たした皆様には、これからの人生にも大いに自信を持ってもらいたい」と高校生たちの活躍にねぎらいの言葉を送られていました。さらに、加福巧青森県実行委員会吟詠剣詩舞部会長が、今日の成功は舞台を支えた黒子の人たちにもあると、舞台裏で働いた生徒らを紹介し、彼らにも心のこもった盛大な拍手が送られました。
 フィナーレでは次年度開催の京都府が、青森県にも負けない立派な大会にする決意を述べ、青森名物「ねぶた祭り」のお囃子が会場に響く中、高校生たちが踊りながら舞台に登場し、最後まで若々しく躍動感にあふれた舞台を見せてくれました。
 
吟剣詩舞の若人に聞く[第75回]《特別編》
小野遼太朗くん
(青森大会実行委員長)
 
小野遼太朗くん:(十七歳)青森県青森市在住
吟剣詩舞との出会いが、高校生活を充実させた
 今回、青森で開かれた全国高校総合文化祭、吟詠剣詩舞部門の実行委員長を務める小野遼太朗くん。吟剣詩舞を始めたきっかけや、いま吟剣詩舞に思っていることなどを、高校文化祭の合間を縫ってお聞きしました。
(収録:七月三十一日 吟詠剣詩舞部門会場にて)
 
――小野くんは今、何歳ですか?
小野「十七歳、高校三年生で、吟詠と詩舞を習っています」
――高校文化祭の吟詠剣詩舞部門の実行委員長ですから、吟詠も詩舞も小さなころから習われているのですか?
小野「いいえ、高校一年の夏からです」
――意外ですが、何か切っ掛けがあったのですか?
小野「学校の文化祭で、先輩の吟詠を聴いて、これは何だ!という、すごいインパクトを覚えました」
――学校に吟詠部があるの?
小野「昔はクラブ活動として吟詠部がありましたが、今は高校文化祭に向けての同好会として、吟剣詩舞を行なっています。後輩も三人入りましたから、高校文化祭以後も、同好会を続けていくことができます」
――吟詠で声を出すのは、恥かしくなかった?
小野「初めは恥ずかしさもありましたが(笑)、先輩が真剣に吟じている姿を見て、自分も同じようにしなければと思いましたし、練習すればするほど声が出るようになるといわれ、がんばって声を出しました」
――吟詠は漢詩を表現する芸事だけど、難しさを感じましたか?
小野「学校でも漢詩の授業はありますが、詩をただ訳して内容を知るぐらいで、吟詠はそこから内容を理解して意味を感じとり、その意味を声で表現しなくてはならないので、とても難しいと思いましたし辛かったです」
――詩舞についてお聞きしますが、習われていかがですか?
小野「扇子の持ち方も知らずに始めてしまい、先生の動きを見ても、どのように動いているのかもわからず(笑)、最初はかなり戸惑いました。でも、先生も諦めてくれたのか(爆笑)、少しずつ教えてくれるようになり、おかげさまで今では先生がどのような動きをしても理解できるようになりました」
小野くんの舞台姿。
武多(ねぶた)」を吟じ舞う
 
――小野くんにとって吟剣詩舞とは何だろうか?
小野「そうですね、例えば吟詠をやらない日は、モヤモヤする(笑)といいますか、いつもと違う気分になります。自分にとって、吟剣詩舞はなくてはならないものかもしれません」
――今後の豊富を聞かせてください。
小野「今は吟詠と詩舞ですが、剣舞にも挑戦したいと思っています。あと、声の幅がもう少し出るようにしたいと思っています」
――最後に、付け加えることはありますか?
小野「高校に入って吟剣詩舞をしていなかったら、初めに入った応援部だけをやって高校生活が終わっていたでしょうが、吟剣詩舞を始めたおかげで高校文化祭にも出られたし、全国の仲間とも知り合えました。また、お互いに手紙などの交換もするようになって、充実した高校生活を送ることができました。吟剣詩舞には感謝しています」
――本日は忙しい中、ありがとうございます。卒業後もがんばって吟剣詩舞を続けてください。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION