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日間賀島合宿
〜合宿前アンケート〜
 海洋体験プログラムの計画に先立ち、小学生・中学生の保護者の「このプログラムに期待していること」を把握するために事前にアンケート調査を行なった。
 項目ごとに「対人関係・衝動性」、「生活習慣」、「自立」、「リフレッシュ」の観点で回答を求めた。その結果は以下の通りである。
 
(1)合宿に参加させようと思った理由、合宿プログラムに望むこと
 
(対人関係・衝動性)
・友達とのバトルが多いこと。
・どんな行動が他者に嫌われるのかを学習してほしい。
・気の向かないことでも、集団の中で歩調をあわせることを身につけてほしい。
・衝動をおさえて、そのエネルギーをもっと有益な行動に昇華できるように、自己コントロールの力をつけてほしい。
・女の子同士のコミューケーションのきっかけを作ってほしい。
 
(生活習慣)
・規則正しい、計画的な行動をしてほしい。
・自分のことは自分でできるように、がんばってほしい。
・いろいろと制限される中で、平常どおりの生活が送れるようになってほしい。
 
(自立)
・母親以外の指示に従って、生活をする経験をしてもらいたい。
・他人と生活する中で、甘えられないということを学んでほしい。
・自立へのきっかけになってほしい。
・自分の役割、責任を自覚して行動できるようにがんばってほしい。
・来年中学生に進学するため、その自覚をもってもらいたい。
・成長期に入り、男子としての自覚と行動を身につけさせたい。
 
(リフレッシュ)
・自然体験を満喫してほしい。
・親自身にとって、子離れを考えるいい機会だと思う。
 
(2)現在、お子さんについて、気になっている点、改善したい点
 
(対人関係・衝動性)
・注意や指示に対して、暴言を吐いたり、手を出したりすること。
・妹への威圧的な態度が目に余るようになってきたこと。
・気持ちの切り替えがうまくできないこと。
・衝動を抑えきれないこと。
・同じことを繰り返し伝えようとすること。
・わざと人の気をひこうとし、嫌がることを言ったり人にまとわりついたりすること。
・しなくてはいけないことでも、気分がのらないとやらないこと。
・周囲への関心が低いため、話し掛けられてもすぐに反応しないこと。
 
(生活習慣)
・パンツをあげながらトイレからでてくること。
・迷惑かけずに、お風呂に入れないこと。
・食事制限ができず、どんどん食べてしまうこと。
・運動をまったくしないこと。
・やるべきことの優先順位がつけられず、自分のペースで物事を運ぶこと。
 
(自立)
・思い込みでやってしまうことがあるので、きちんと指示をきいて動くこと。
・周りの人に依存してしまうこと。
・全てのことにおいて、心配性でなかなか一歩が踏み出せないこと。
・自信がないこと。
 
 あらかじめ主催者側のプログラムで取り組めるだろうと考えた目的は、「障害特性に関わる行動のコントロールができ、場に応じたふさわしい振る舞いができること」、「基本的な生活習慣が身につけられること」、「自立に向けてのきっかけとなること」、「家族との日常生活から離れ気分転換ができること」であった。
 保護者からは「対人関係・衝動性」に関する内容が多く聞かれたが、このことへの対処は日頃の例会やプログラムにおいて個々において行われている内容なので、今回は特に日頃出来ないことに着目することにした。(日間賀)島に渡ること自体が日常の生活ではない子どもたちがほとんどであるし、集団での宿泊生活も学校での修学旅行や野外学習を除けばほとんどないことなので、この場所でしか体験できないことを重視することとした。
 以上より今回の海洋体験プログラムの目的を、『生活習慣を整えること』、『自立にむけてのきっかけとなること』、『リフレッシュ体験をすること』とした。
 
〜合宿を振り返って〜
 プログラムに参加した「小学生・中学生」、「高校生」、「きょうだい」の4泊5日の生活の様子を、『生活習慣を整えること』、『自立にむけてのきっかけとなること』、『リフレッシュ体験をすること』に分けて振り返り以下にまとめた。
 
<小学生・中学生>
 
(1)生活習慣
 全体を通して今回の合宿の中では、自分のしたいことではなく全体の指示に従って合わせて動くことになっていた。そのため年齢や性別によって、その都度かけられる指示が異なることも多くあった。子どもたちはなるべく指示を確認しながら、年長者がまとめていこうとする場面がみられた。
 
・食事、水分補給
 決められた時間に、決められた分量を取ることを目標にした。当初はだらだらと食事中に食べ物で遊んでしまう子も見られたが、次第に生活リズムがつかめたのか、時間に合わせて食事することができるようになった。
 食事の仕方(行儀作法)については、箸の持ち方がスプーンを持つようしていたり、皿に直接口をつけて流し込むように食べていたりと、やや手先の不器用さが影響してと思われることはあったが、それにしても年齢相応に出来ていない子がみられた。その都度、『お箸鉛筆みたいにもってみよう』などと、持ち方から教えていくとだんだんと動かし方に変化がみられうまく使えるようになった。なにより、周りの友だちの様子を見たりまた友達から教えてもらったりすることで、自分もがんばらなくてはいけないという気持ちが高まったようだ。
 
・お風呂、歯磨き
 体の清潔を保つこと関しては、非常に無頓着な子が多く見られた。年齢が高くなるにつれ、“体を洗う”、“歯を磨く”という習慣は身についているようだったが、実際にきれいになるように洗えているかどうかは特に気にしていないようだった。
 以下は清潔保つ行動で一部に見られた、気になった姿である。
・髪を洗う時、頭からお湯をかけて、なんとなく頭頂部にシャンプーをつけて流している
・体を洗う時一通り体を触る、(タオルなどで)こすることはなし
・歯磨きでは歯にハブラシをトントンあてるだけ
 そこでスタッフでチェックを行い、うまくできていない子には一緒に入浴しながら、シャンプーの量や洗い方・磨き方を具体的に伝えた。スタッフと一緒にお風呂を楽しみながら、自分で体の清潔を保つ練習を行った。
 
・部屋割り
 男子と女子の部屋を分けて生活することで、『男子と女子は違っていて、女の子の部屋に男の子は入らない』と意識している発言をするお子さんがしばしばみられた。また、スタッフがあまり入り込まずに、子どもたちだけの時間を確保することでお互いを意識することができ、関わりを持とうとしているようだった。
 
(2)自立に向けて
 幅広い年齢の子が参加したことにより、年上のお兄さんお姉さんの真似をして新しいことに挑戦してみたり、年下の子でも1人でやっていることを目の当たりにして自分だけでやってみようする場面が多く見られた。先の見通しが立たないことには不安が先行するようだが、慣れてきて自分一人でも出来るという確信がもてると、誰かの助けを借りるよりも自分でやってみたいという気持ちが強まるようだった。
 
(3)リフレッシュ体験
 自然を取り入れた活動は、子ども達にとっては非常に新鮮で目の色が違っていた。海水浴では自分たちで積極的に泳いだりおいかけっこをしたりして、楽しむことができた。またカニつりやシュノーケリングなどは初めて経験する子も多く、様子がわかるまではやや緊張気味だった子もいましたが、同年齢の子が取り組んでいるのを見て自分もやってみようという気持ちが高まっていったようだった。スタッフを相手にしてというだけでなく、子どもたち同士で楽しむ姿もみられた。
 流しそうめんではなかなか上手くそうめんを取れないが、流れているものをすくい上げようとする雰囲気が楽しかったようで、一生懸命そうめんの流れに集中していた。
 リフレッシュ体験に織り交ぜて筋緊張の強いタイプのお子さんに対しては、リラクゼーションの練習も行った。例えば水の上に力を抜いて浮かべるように、体の部分を順番に力を抜く練習をした。力を抜かなくてはいけないと考えると余計に力が入ってしまうようで、下から支えながら波の動きにあわせて漂うようにしたところ、うまくリラックスして浮かべるようになった子もいた。
 キャンプファイヤーでは、島の皆さんにみてもらうための出し物をグループごとに準備した。それぞれやりたいこと・やりたくないことがはっきりしているため、なかなか折り合いをつけることが難しいようだった。まず具体的に紙に書き記し、どうしてもやれないものをはずしていくという、やり方を伝えながらすすめるグループが大半だった。しかしグループ内での交流が進んでいるグループでは、子ども達が積極的に意見を交換しその後多数決で決定していた。
 
(4)全体を通じて
 今回の活動では、親とはなれて自分だけでチャレンジするという経験が始めてという人も多く、自分の力でなんとか5日間を過ごしていかなければいけないという気持ちを強く感じました。島という場所で、楽しみがたくさんあり、その楽しみを体験するためには、きちんとこなしていかなくてはいけないものがあるという感覚を、体験することによって、大人というもののイメージが広がったのではないかと思います。


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