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2. 基準2−貨物検査権限
 税関当局は、当該国から、積出され、離れ、通過し(積荷状態のままを含む)、又は積替えられる貨物を検査する権限を有すべき。
 
3. 基準3−検査機器における近代的技術
 非破壊検査(NII)機器及び放射線検知器は、可能な場合にはリスク評価に沿って、利用可能であり、検査を実施するために使用されるべき。この機器は、貿易の流れを阻害することなしに、迅速にハイ・リスクなコンテナー又は貨物を検査するために必要である。
 
近代的技術
 メンバーを支援するため、WCOは先端技術のデータバンクを維持し、税関コンペンディアムとしてコンテナースキャン設備の購入と運用にかかる詳細なガイドラインを作成した。
 
4. 基準4−リスク管理システム
 税関当局は、潜在的にハイ・リスクな積荷を特定するためのリスク管理システムを確立し、そのシステムを電算化すべき。システムは、危険評価の認証、絞込みの決定、べスト・プラクティスの明確化のための仕組みを含むべき。
 
4.1 自動選定システム
 税関当局は、事前情報や戦略情報に基づき、セキュリティや安全に潜在的なリスクを引起こす貨物やコンテナーの積荷を特定するためのリスク管理を用いるという国際的ベストプラクティスに基づいた自動化システムを開発するべきである。コンテナー詰めされた海上貨物については、そのような能力が一様に積込みの前に適用されるべき。
 
4.2 リスク管理
 リスク管理とは、“リスクを呈する貨物や動きに対処するための必要な情報を税関に与える管理手続きと業務の体系的な適用”である。
 
4.3 WCO世界情報戦略
 効果的なリスク管理体系は、税関管理と業務の支援において、情報の収集、その処理と配布という重要要素を持つ。標準リスク評価(SRA)と共に税関による物品と運送機関の絞込みとスクリーニングのためのリスク指標を作り出す情報機能は、WCO世界情報戦略に含まれる。
 
4.4 参考文書
 WCOリスク管理ガイド、WCO世界情報戦略、WCO標準リスク評価(SRA)及び一般ハイ・リスク指標はリスク管理(及び評価)にとって有用な参考文書である。
 
5. 基準5−ハイ・リスク貨物又はコンテナー
 ハイ・リスク貨物及びコンテナーの積荷とは、ロウ・リスクと考えるには情報が不十分であること、戦術的な情報がハイ・リスクを示していること、又は、安全確保に関連したデータ要素に基づいたリスク評価手法が、ハイ・リスクとして特定しているような積荷を言う。
 
選定、プロファイル及び絞込み
 税関は、潜在的なハイ・リスク貨物を明らかにし絞り込むために、限定的ではなく、貨物が出発又は到着する前の貨物にかかる事前電子情報、戦略情報、電算化された貿易データ、異常分析及び貿易業者のサプライチェーンの関係する安全性を含む洗練された手法を使用するべき。例えば、税関と民間とのパートナーシップの柱の認証や原産地安全の検証は、リスクを減じ、それ故に絞込みの点数を低減する。
 
6. 基準6−事前電子情報
 税関当局は、時間内に十分なリスク評価を実施するために、貨物及びコンテナーの積荷に関する事前電子情報を必要とすべき。
 
6.1 電算化の必要
 税関に対する情報の事前電子送信システムは、輸出入地における電子情報交換の使用を含む電算化された税関システムの使用を必要とする。
 
6.2 京都ICTガイドライン
 改正京都規約の一般附属書標準規定7.1、6.9、3.21及び3.18は、e-コマース技術の使用を含む税関業務のために情報通信技術(ICT)を適用することを求めている。この目的のため、WCOは税関のために自動化の適用にかかる詳細なガイドラインを用意した。京都ICTガイドラインは、既存の税関ICTシステム強化又は新しいシステム開発のために参照されるべきである。加えて、税関当局は税関電算化にかかるWCO税関コンペンディアムを参照するよう推奨される。
 
6.3 経済関連業者のシステムの利用
 ICTガイドラインはまた、税関の要請に応えるために、経済業者の商用システムを利用し、それらを監査する可能性について勧告している。特に認定されたサプライチェーンにおいては、いったん機密性や法的な問題が解決すれば、税関が関係者の商用システムにオンラインでアクセス出来ることで、真正の情報により一層アクセス出来ることになり、広範囲にわたる簡素化された手続きを提供することを可能にする。別の例として、運輸にかかわる全ての関係者が関係貨物や運輸関係データの交換を可能にする電子システムを確立している港や空港における貨物共同システム(CCM)があげられる。それらのシステムが税関の目的のため必要な項目を含んでいる場合、税関はその目的のために必要なデータを引出せるようシステムへの参加を検討するべきである。
 
6.4 電子データ交換の基準
 京都規約ICTガイドラインは、税関が電子情報交換への解決法を1つ以上提供するよう推奨している。国際標準であるUN/EDIFACTを使用するEDIは、優先的な互換性を持ったオプションである一方、税関はXMLのようなその他のオプションについても目を向けるべきである。関係するリスクにもよるが、電子メールやファックスの使用でさえ適切な解決法となり得る。
 
6.5 WCOデータモデル
 WCO税関データモデルのデータセットに基づいた貨物及び物品申告を税関に提出することを求められる経済関連業者は、WCO税関データモデルの電子メッセージ仕様書を利用すべきである。
 
6.6 ICTセキュリティ
 一般的なICTの使用、特に開かれたネットワーク上での情報の電子交換は詳細なICTの安全戦略を必要とする。ICT安全確保はそれゆえいかなる税関のサプライチェーンにおいても、不可欠な部分であると考えられるべきである。効果的で有効なIT安全戦略に到達するために、税関はリスク評価を実施するべきである。京都ICTガイドラインは、包括的なICT安全戦略が、情報とITシステムの利用可能性、規律、機密性及びそれが扱う、例えば原産地での拒否の防止又は受領といった情報を確保出来る方法について概説している。ICT安全確保を実施する方法は多くあり、その目的のために京都ICTガイドラインは参照される。
 
6.7 電子署名
 サプライチェーンの安全確保戦略のために、ICT安全に関する不可欠な要素の一つは、電子署名に関するものである。電子署名、もしくは公開鍵基盤(PKI)の整備は、情報の電子交換の安全確保に重要な役割を果たす。統合された税関管理チェーンは貿易業者が事前に輸出地税関、輸入地税関両方に対して申告書を提出来る可能性を含む。経済関連業者が電子証明の相互認証から利益を得れば有益であろう。これはまた、経済関連業者が、この認証を認めることを受入れている税関への全ての電子メッセージに署名することを可能にする。電子認証の国際的な承認は、安全確保を強化し、同時に貿易関連業者に多大な円滑化と簡易化を提供する。この目的のために税関当局は税関及び他の関係する定期情報の電子送信と認定にかかるWCO勧告を適用するよう奨励される。8
 
8 この勧告は2005年6月の総会採択対象事項であり、1981年6月16日のCCC勧告TC2-384に優先する。
 
6.8 キャパシティ・ビルディング
 必要不可欠な自動システムの開発と入手における支援を要請する税関当局は、「基準の枠組み」の実施のために政治的意思を有しなければならない。
 
6.9 データプライバシーとデータ保護
 税関当局間又は税関の要求による民間との情報提供においてデータ交換は、関係国の政府機関間において必要なデータプライバシーとデータ保護について協議した後で開始されるべきである。データプライバシーとデータ保護法は、個人のプライバシー権や貿易機密を保護し、正確さの検証のために個人が各自の個別データにアクセスすることを認めるために制定される。
 
 これに関して国内法制は、税関によって収集され又は送信されたいかなるデータも機密として安全に取扱われ、十分に保護され、その情報が関係する自然人又は法人に対する一定の権利を認めなければならないことを明記する規定を含んでいなければならない。
 
 同様に、データ保護と機密についてはヨハネスブルグ条約やモデル二国間協定のような既に存在するWCOの文書において取り組まれている。
 
7. 基準7−絞込みとコミュニケーション
 税関当局は、共同の絞込みや選定のために、標準化された一連の絞込み基準の使用、互換性のある伝達手段及び/又は情報交換の仕組みを準備すべき。これらの要素は、将来における監視の相互認証システムの構築を支援する。
 
7.1 WCO世界情報戦略
 WCO世界情報戦略は、標準リスク評価(SRA)にかかる規定を含む。標準リスク評価は情報活動の重要な一部であり、物品や運送機関の絞込みとスクリーニング目的のために、税関職員のためのリスク指標の成果を生み出す。
 
7.2 WCO標準リスク評価(SRA)文書
 WCO標準リスク評価文書は、税関のために5つのリスク指標群を導き出している。これらの特定の指標群、運送手段、税収保護、麻薬と前駆物質、セキュリティとその他の禁制事項は、標準化された絞込み基準を規定している。指標群は、更に定期的に更新されるいくつかのリスク指標の章に分けられる。
 
7.3 WCO一般ハイ・リスク指標文書
 WCO一般ハイ・リスク指標文書は、税関当局が禁制品を探知するための標準化された絞込み基準を規定する指標を定めている。その文書の項目は、運送者マニフェストの詳細、ハイ・リスク国の特定、ハイ・リスクな条件を示す商品及び輸送要因、隠匿目的で用いられるよく知られているハイ・リスクな商品、テロ攻撃に用いられるおそれのある危険物品のリスト及びコンテナー、輸出入者及び船会社のようなハイ・リスクを反映し得る要因。これらの指標も定期的に更新される。
 
7.4 税関職員のためのWCOリスク指標ハンドブック−知的財産侵害の要因
 ハンドブックは海賊版や模倣に関してハイ・リスクを示唆する要因のリストを含んでいる。これら17のリスク指標は絞込み基準の標準化されたセットであり、潜在的に知的財産権違反のハイ・リスクを呈している積荷の決定について前線の税関職員を支援するために使用されることが意図されている。
 
7.5 法的検討
 共同の絞込みとスクリーニングは、貨物の安全性を確保し、かつ越境組織犯罪と戦いながら、その効率を高めるために税関当局によって実施される活動である。そのような共同の努力のための規則と条件は通常税関間において構築される。ヨハネスブルグ条約とモデル二国間協定のようなWCO文書は共に、そのような国際的又は二国間協力を支援する規定を含んでいる。
 
8. 基準8−達成度指標
 税関当局は、審査された積荷の数、ハイ・リスクとした積荷の数、ハイ・リスクな積荷の検査の実施数、非破壊検査技術によるハイ・リスクな積荷の検査数、非破壊検査技術及び物理的手法によるハイ・リスクな積荷の検査数、物理的手法のみによるハイ・リスクな積荷の検査数、通関時間及び検査の該非結果数を含む、しかしこれらに限定されるわけではない、達成度指標を有する統計的な報告を維持すべき。これらの報告はWCOにより集約されるべき。
 
データ収集
 税関当局は、「基準の枠組み」遵守の影響力と効率性を評価するためにデータを収集しそれを達成度評価に適用する。この目的のためにWCO通関時間調査(TRS)は適切な手段となり得る。
 
9. 基準9−安全評価
 税関当局は、国際サプライチェーンにおける物品の動きに関する安全評価を実施するために、そして特定されたギャップの迅速な解決にコミットするために、他の管轄権を有する当局と共に取り組むべき。
 
10. 基準10−職員規律
 税関当局及び他の管轄権を有する当局は、職員規律における腐敗の防止、違反の明確化及び対処のための計画を必要とすることを奨励されるべき。
 
10.1 WCO改正アルーシャ宣言
 WCO改正アルーシャ宣言は税関当局が腐敗防止システムを導入するための卓越した手引きである。
 
10.2 研修
 国際サプライチェーンの安全確保及び円滑化は、サプライチェーンに携わるその他の組織同様、税関当局に熟練した士気の高い職員を必要とする。税関は、全てのレベルの職員が効率的で効果的な税関管理の実行及び電子環境における業務の遂行のために求められる技術の維持と向上のために、定期的に必要な研修を受講出来ることを確保しなければならない。
 
11. 基準11−輸出安全検査
 税関当局は、輸入国の妥当な要請により、ハイ・リスクなコンテナー及び貨物の輸出安全検査を実施すべき。
 
11.1 要請に基づく検査
 税関がリスク評価を実施する際、その税関のポートに向かうコンテナーや貨物がハイ・リスクであると信じるべき根拠がある場合、その税関は仕出地税関に対して、望むべくは積込みの前に〔4.1参照〕、コンテナーや貨物の検査の実施を要求することが出来る。
 
11.2 法的検討
 その他の行政取極めの内、ヨハネスブルグ条約やモデル二国間協定のようなWCOツールは、税関当局がその他の税関当局に対してそのような活動を実施するよう要求することを可能にする。


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