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(3)リモートセンシングによる実測結果とシミュレーションとの比較
 2005年9月3日での地形性の離岸流と思われる流れを検討するために、気球より撮影された画像にARGUSを用いて輝度値より海底地形を計測した。計測された地形を図−2.3.41に示す。先に述べたように計算にはより広域の地形が必要となるために沿岸方向に地形を作成しており、図中の破線内が計測された範囲である。離岸流が確認されたのは図中の水深が浅くなっている2箇所の間である。現地観測で述べたとおり、このときの離岸流速は約60cm/sであり、入射波は波高約0.8m、周期約6.0秒でほぼ直角入射である(図−2.3.41)。この波を用いて計測された地形上で流れを計算したものが図−2.3.42である。
 
図−2.3.41 計算に用いた地形
 
図−2.3.42 計算結果(H=0.8m, T=6.0s)
 
 この結果を見ると西側の浅くなった場所で向岸流が発生し、東側の浅くなった場所との間から離岸流が発生していることが分かる。離岸流速も約66cm/sとGPSの場合と同様に今回の計算でも実測結果と計算による流速は非常によい対応をみせている。また図より浅くなった場所では非常に強い流れとなっているのが分かる。これは前述したが、浅くなった分の流量を保存するために流速が早くなっているためであり、水深はわずかに30cm程度であるので体が流されてしまうということはないと考えられる。逆に離岸流の発生場所では水深が約1mで流速が約66cm/sと、成人男性でも流される可能性のある危険な場所であると考えられる。
 以上の結果より、地形性の離岸流に関しては現段階では正確な地形情報、特にバーやリップチャネル等の周辺に比べて特徴的な地形の情報と入射波情報が得られると、ある程度離岸流の発生状況の再現、さらには発生予測まで可能であると考えられる。水難事故防止のために実用的にこれらのモデルを用いることを考えると、今後はいかに地形の情報を簡易に得られるのかという問題となる。今回はGPSおよびARGUSを用いたが両手法ともにさらに簡易に測量できるような改良が必要である。また、現在の計算では地形の変化を考えていないために非常に短時間の予測にとどまっている。より先の発生を予測するためには海浜流の再現に加えて漂砂体系を把握する必要があるだろう。さらに今回の考察でも述べたが、単に流速が早いだけで発生場所が浅い場所ではあまり危険ではないと考えられる。つまり予測を行うためにはどの程度の水深、および流速で遊泳にとって危険であるかを把握する必要もあると思われる。


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