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2.3.2.2 現地で測量された地形上での数値計算
(1)GPSによる実測結果と数値シミュレーションとの比較
 2005年の9月12日に地形性の離岸流と思われる流れを海岸西部で確認し、観測機器を設置すると共にGPSを用いた周辺の海底地形の測量を行った。Wave Hunterよりこのときの入射波高は約40cm、周期約3.0sと非常に穏やかな状態であった(図−2.3.20)。また設置した流速計での計測結果は図−2.3.34に示すとおりである。図中の時系列はスペクトル解析にて0.05Hz以上の成分を除いており、岸沖方向は正の符号が沖向きの流れを、沿岸方向は正の符号が汀線東方向への流れを示している。図より流速は離岸方向に約15cm/s、汀線西方向に約5cm/sであり、このような流れが機材を設置した午後から20時までの間観測され20時以降では流れは岸沖・沿岸方向ともにほとんどなくなった。
 
図−2.3.34 No.3での測定された流速(9月12日 13時)
 
 今回、数値シミュレーションによる離岸流の予測精度を検証するために地形測量結果を用いて計算を行った。計算を行うにあたって、GPSにて測量された範囲より広域の計算領域が必要となるが、計測範囲外で一様勾配(海底勾配0.01)の地形であると仮定し、計算地形を作成した(図−2.3.35)。図中にはGPSにて測量されたエリアも示している。この計算地形を用いて実際に現地での入射波、波高40cm、周期3.0sの波が直角入射する場合の流れを計算したのが図−2.3.36になる。図中に緑色で示した点が流速計等の機材を設置した点である。計算結果より、地形の窪み(リップチャネル)部分へと離岸流が発生していることがわかる。しかし一般的に観測されているようなリップチャネル内の流れではなく、むしろリップチャネルに流れが差し掛かると急激に流れが減衰していることが分かる。これは砕波位置が岸沖方向距離で約28m程度と非常に汀線に近く、リップチャネル部よりも岸側で砕波しているため、リップチャネルの影響が少なかったものと考えられる。また、計算で求められた機材設置点付近の流速が沖方向に18cm/sと非常に実測値と近い値が得られた。しかし、沿岸流速は東方向に6cm/sとなり実測結果とやや異なる。より計算の精度を上げるためにはさらに広域にわたる海底地形の測量が必要であると考えられる。
 
図−2.3.35 計算に用いた地形
 
図−2.3.36 計算結果(H=40cm, T=3.0s)
 
図−2.3.37 計算結果(H=60cm, T=4.0s)


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