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2.3.1.3 GPSによる汀線測量・地形測量の結果
(1)汀線測量の精度について
 9月3日にGPSにより測量した汀線地形を図−2.3.25に示す。GPSによる測量結果は海岸にある三角水準点を基準点(図−2.3.26)として測位し、その位置を原点(0,0)とし、東西距離・南北距離で示している。汀線の北側が沖、南側が岸である。9月3日の汀線地形では海岸の西側(東西距離-100m〜-400m付近)と東側(東西距離200m〜500m付近)にそれぞれラージカスプ地形が目視により確認されている。なお、両方のラージカスプ地形の沖で離岸流の発生が確認された。
 
図−2.3.25 GPSによる汀線地形(9月3日)
 
図−2.3.26 基準点の位置
 
 ここでは、特に強い離岸流が発生しており、ラージカスプ地形もはっきりしていた西側の汀線地形を取り上げる。GPSによる汀線地形(図−2.3.27)、気球によるビデオ画像(図−2.3.28)はともにほぼ同じ場所を示している。波長約100m程度のラージカスプ地形が見られる。GPS自体の測定誤差とGPSを背負って遡上域の真ん中と思われる点を歩くことによる誤差が考えられるが、気球からのビデオ画像に見られる汀線とGPS測量により得られた汀線はほぼ一致しており高い精度で測量できるといえる。また、今回行ったような2,3kmの海岸線をGPSにて汀線測量する場合時間ほどで行えるため、非常に簡易で有効な手法である。
 
図−2.3.27 GPSによる汀線地形(9月3日)
 
図−2.3.28 気球からのビデオ画像(9月3日)
 
(2)実測期間中の汀線変化
 実測期間中の汀線形状の変化を台風接近前の9月2日〜5日と通過後の9月9日〜13日に分けて、図−2.3.29、図−2.3.30に示す。海岸の西側、東側ともに変化が見られたが、ここでは西側の海岸を取り上げた。なお、汀線の中央付近はブロック護岸が設置されているため汀線形状に変化はなかった。2日〜5日においてはラージカスプが形成されており、汀線位置は日によって若干の前進・後退があり、ラージカスプの形状に発達が見られた。しかし、台風通過後にはラージカスプはまったく見られなくなっていた。台風の高波浪ではラージカスプが発生するのではなく、消滅することが確認された。接近前の9月5日と通過後の9月9日の汀線形状を見比べると、いたるところで侵食や汀線の後退が見られ漂砂移動の激しさがわかる。台風通過後10日以降から徐々にビーチカスプが形成されていく。特に-350m〜-150m付近においてビーチカスプの形成が見られる。また、汀線位置が日に日に前進していくのが読み取れる。今回の実測は13日で終了したため、その後の変化はわからなかった。なお、海況についてはWave Hunterの図からも読み取れるように、2日〜5日は台風の接近前で比較的波が高く、逆に9日〜13日は台風接近後で波がだんだんと低くなっていき13日には波は非常に低くなっていた。このことから波の高いときにはラージカスプが形成されやすく、波が低いとビーチカスプが形成されやすくなる可能性が考えられる。過去の実測において、多くの地形性離岸流が観測されており、汀線形状と離岸流発生の関係は大きいと考えられる。汀線形状の形成機構や変化については検討していかなくてはならない課題であるといえる。また、図からわかるように浦富海岸は非常に汀線形状の変化の激しい海岸であることが確認された。3日から5日の2日間で約10m、9日から13日の4日間で約15mも変化している。このような短い期間で汀線が変化する海岸の測量には短時間で行えるGPS測量は有効である。
 
図−2.3.29 汀線変化(2日〜5日)
 
図−2.3.30 汀線変化(9日〜13日)
 
(3)汀線の経年変化
 浦富海岸における汀線形状の経年変化について考察する。2004年8月、9月、12月、2005年9月に行われた汀線測量結果を図−2.3.31に示す。2004年12月と2005年9月を比較してみると、大きいところで約20〜30m移動しており、先に述べたような短期間の変化だけでなく長期的な変化も激しい海岸であることがわかる。特に汀線位置の変化が激しいのが西側-100m〜-500m付近であり、ラージカスプが形成されていることが非常に多い。これは実測海岸の地形特性によりこの付近にラージカスプが形成されやすくなっている可能性がある。湾内にトラップされたエッジ波の存在の可能性も考えられる。
 
図−2.3.31 汀線の経年変化
 
(4)地形測量の結果
 9月12日の観測では離岸流発生場所付近の地形をGPSを用いて測量することができた。地形測量は沿岸方向約50m、岸沖方向約60mの範囲で計測を行っている。測量結果を図−2.3.32、図−2.3.33に示す。図中の点は器材設置地点を示している。リップチャネルと思われる窪みが見られる。だが、今回のGPS測量では地形の窪みが沖側のどの地点まで存在しているのかは分からなかった。この窪みの存在範囲が流速、流況にも大きく影響を与えていると思われるので、より正確に海底地形と海浜流の関係を議論するためには、より沖側の実測データが必要になると考えられる。今回行ったGPS測量はGPSを背中に背負い海中を歩くという手法をとっていたため、細かい地形データをすばやく収集するのには適していたが、身長を超えるような水深の大きいところの測量や高波高時の測量は困難であった。より広範囲のデータを得るためにも実測手法の改良が必要であるといえる。
 
図−2.3.32 地形測量により得られた海底地形
 
図−2.3.33 海底地形


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