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2)ADCP観測値との比較
 ADCP観測による精度検証の実施日と潮時を表2.2.4.3に示す。比較に用いたADCPの観測層は水深4〜6mの2m層厚(観測間隔3秒)とし、第五管区海上保安本部海洋情報部より提供頂いた観測データは、水深4m層(観測間隔15秒)を使用した。
 
表2.2.4.3 ADCP観測日時と潮時
視線方向 観測日時 潮流最強時刻 備考
網干島90度 7/22 05:56〜06:34 08:46〜09:25 北流06:30
網干島90度 7/22 11:06〜11:33 13:49〜14:23 南流12:21
大磯埼219度 7/22 06:49〜08:35 北流06:30
大磯埼219度 7/22 11:46〜13:35 南流12:21
宮の鼻240度 8/21 07:18〜07:51 北流07:01
宮の鼻240度 8/21 10:56〜11:56 南流13:03
室60度 8/21 07:20〜07:51 北流07:01
室60度 8/21 10:57〜12:13 南流13:03
孫埼350度 9/09 07:12〜08:28 北流09:09
孫埼350度 9/09 14:38〜15:47 南流15:29
室65度 9/09 08:14〜09:25 北流09:09
室60度 9/09 13:43〜15:00 南流15:29
大磯埼19度 7/27 15:57〜18:23 南流16:48 五管提供資料
大磯埼19度 8/08 14:37〜14:45 南流13:50
網干島40度 8/08 14:53〜15:15 南流13:50
大磯埼19度 8/09 15:12〜15:54 南流14:27
大磯埼19度 8/10 14:01〜14:44 南流15:08
*潮流最強時刻は平成17年潮汐表(海上保安庁)による
 
(1)ADCP観測の出現最大流速
 ADCPによる観測最大流速、視線方向最大流速及びレンジセル内の視線方向平均流速の最大値を表2.2.4.4に示す。観測最大流速は、網干島の東方1.7km地点で447cm/sの南東流が観測された。視線方向の最大流速は、大磯埼19度、距離5.4km地点で394cm/sが南流時に出現した。レンジ内視線方向の平均最大流速は、同じく南流時に大磯埼19度、距離5.5km地点の277cm/sであった。
 
表2.2.4.4 ADCP観測で出現した最大流速
項目 最大流速 出現位置
観測最大流速 427cm/s(178°) 8/09 15:28 大磯埼20°5.4km
視線方向最大流速 394cm/s 8/09 14:33 大磯埼19°5.4km
レンジセル内視線方向平均流速の最大 277cm/s 8/08 14:31 大磯埼19°5.5km
 
(2)ADCP観測結果と短波レーダー視線方向流速の比較
 図2.1.2.3に示す、ADCP観測測線においてレンジ内平均流速と、短波レーダーの視線方向流速の相関を図2.2.4.5に示す。上図は、ラジアルファイルを方向分解能1度、平均化時間27分で計算したデータと、ADCPの全データの相関である。下図は、ラジアルファイルを方向分解能5度、平均化時間27分で計算したデータと、海域中央部測線だけのADCPデータの相関である。相関結果をみると、下図の海域中央部測線における、方向分解能5度とは、相関係数が0.73、標準偏差は25.0cm/sである。一方、上図の方向分解能1度と全データとは、相関係数は同じ0.73であるが、標準偏差は46.3sm/sと大きい値である。この違いはグラフに示されるように、ADCPの強流速時において短波レーダーの流速値が横這い傾向になるためである。これは、流速が大きい場所の短波レーダーの観測値は、ADCP観測値よりも小さい値になることを示している。このADCP観測で強流速を観測した、「大磯埼」の視線方向19度における、7月27日、8月8日〜8月10日の各距離レンジの経時変化を図2.2.4.6に示す。これをみると、5.5〜6.0kmの距離レンジでは、明らかに短波レーダーはADCPよりも小さい流速を示している。この違いは短波レーダーの視線方向のずれによる可能性も考えられることから、近接する視線方向の最大流速を抽出した。抽出にあたっては、ADCPの平均最大値を観測した時刻の、前後10分間及びADCPの視線方向から5度以内のデータを対象とした。また、ADCP観測はレンジ内を通過するのに3分程度であり、ラジアルファイルは平均化時間を7分間、出力間隔は10分とした。抽出した短波レーダーの観測値とADCP観測値の比較を表2.2.4.5に示す。この時刻の短波レーダーの視線方向ベクトルを図2.2.4.5に示す。抽出した短波レーダーの観測値とADCP観測値を比較すると、視線方向が5度以内に近接する短波レーダーの最大観測値は、ほぼADCPの平均最大流速の中間程度の値まで近づいている。しかしながら、短波レーダーの位置誤差を仮定しても、ADCP観測値を上回るデータは抽出されていない。この要因は、計測機器による測定方法の違いも考えられるが、短波レーダーは空間分解能を広くすると観測値が低減化されるため、狭角な方向分解能であっても、レンジまでの距離が遠いほど、視線方向幅も拡がることになり、この平均化範囲が拡大することも一因と考えられる。
 海洋短波レーダーによる流速の最大測定範囲は、使用する周波数に大きく制約を受け、42MHz帯の短波レーダーでは、最大測定流速が200cm/s程度とされている、本研究で使用した解析ソフトは、測定範囲拡大の改良を加えたものである。上記で示されたように、強流域の視線方向線上のADCPとの比較では、小さい値が示されたが、近接する視線方向ではADCP観測値に近い値が観測された。また、ほかの観測局では300cm/s以上の流速が観測されており、ソフト改良の効果はあったものと考えられる。
 
表2.2.4.5 ADCP観測値と短波レーダーの周辺データとの比較
観測日 比較レンジ
(km)
ADCP観測値 短波レーダー観測値
平均最大流速範囲
(cm/s)
最大流速出現時 視線方向
(°)
観測時 最大流速
(cm/s)
視線方向
(°)
07/27 5.5 133〜240 15:58 19 15:50 142 18
07/27 6.0 111〜266 17:44 17 17:40 186 17
08/08 5.5 118〜277 14:31 20 14:20 186 16
08/09 5.5 183〜263 15:27 21 15:20 221 17
08/10 5.5 133〜251 14:31 20 14:20 205 25
 
図2.2.4.4  ADCP観測の最大視線方向流速時頃の視線方向ベクトル
 
 
 
 


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