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6 一般の親子参加型団活動の展開
 日本海洋少年団連盟では、平成10年から海洋少年団運動の活性化対策に取り組み、制度面では、平成14年度に設置した「ワーキンググループ」の提言を受け、定款、規約及び諸規定の全面見直しを行い、平成17年4月から、会員制度の改革を始めとする諸改革を全面的に施行しています。
 また、団活動面では、従前の全国一律の団活動から脱却し、地域特性に適応した団活動、特に一般の親子を巻き込んだ団活動を展開し、団員の予備軍を増やすことにより、将来にわたる団員の確保を目指して、平成14年度から、日本財団の助成を受け、「モデル事業」を実施してきました。
 この「モデル事業」は、これまでに、千葉・名古屋地区、八戸・敦賀地区、福山・福岡地区、清水・沖縄地区の8地区において実施し、平成18年度をもって一応の区切りをつけることとしている。
 海洋少年団の特徴、特に他の青少年団体では絶対に真似できない最大の武器は、「海を舞台に活動していること」であり、その手段として、カッター、カヌー、ヨット類を保有しているところから、「モデル事業」では、主としてこれらの器財を活用した体験型活動を展開し、近い将来の団員募集に利するという所期の目的を達成したものであります。
 なお、「モデル事業」において、一般の親子を招いて実施した主な活動は、次のとおりです。
・親子カッター・カヌー教室
・地域カッターレースの主催
・海の日「マリンフェスティバル」や体育の日「ハーバー祭り」等への参加
(手旗披露、カッター・クルーザー等体験乗船会)
・海浜清掃等環境保全体験活動
・巡視船体験乗船会
・海の教室、灯台・港湾施設等見学会
・合同キャンプ
 この「モデル事業」で実施した諸活動は、海洋少年団運動に対する理解者を増やし、その裾野を広げるための活動であるので、単発よりも継続的に実施することが重要です。
 また、海洋少年団活動による効果、例えば参加した父母に「しつけ」を身につけた団員の姿をアピールするなど、を具体的な形で示すことが重要ですが、これらの活動を実施するために海洋少年団として、特別な経費は必要としません。要は、通常の活動の延長線上にあると考えれば良いのです。
 したがって、これからは、団員減少により単独では団活動が成立しがたい海洋少年団はもとより、そうでない海洋少年団にあっても、一般の親子の参加を得た団活動の展開を勧めるものであります。それが今後の団員募集にプラスになると確信するからであります。
 
一般の親子参加型団活動の実施方策
 「モデル事業」の教訓からみた実施方策は、次のとおりです。
(1)活動内容の決定
 これまで実施してきた体験活動は、カッター体験、カヌー体験、手旗体験、などであるが、海洋少年団のイメージについては、規律やしつけなどで厳しいイメージをもたれている反面、楽しそうで、自由な雰囲気などのイメージをもたれる割合が高くなっている。これまでの体験活動に参加した子どもたちの意識調査によると、キャンプなどの野外活動も好まれている。一方、参加した父母の意識調査でも、野外活動や自然体験活動などを取り入れた複合型の活動に期待するとの意見もかなり多くなっている。したがって、カッター等の体験活動だけではなく、キャンプやハイキング、山登り等の自然体験活動を取り入れるなどして、複合的な活動とすることが望ましい。これらの活動をサポートする指導者等の確保、さらに、その安全対策をどのように行うか等について十分に配慮する必要がある。また、参加費については、交通費、保険料、弁当代等を実費として負担してもらっている場合が多いが、参加者にあまり負担とならないような金額を設定し、なるべく多くの人に参加してもらえるように工夫します。
(2)開催場所及び開催時期の決定
 開催場所については、体験活動の内容により限定される場合が多いが、海洋少年団関係者しかいないような場所では、PR効果も少ないので、一般の人がたくさん集まり、関心を持って見てもらえるようなイベントの開催場所やその近隣の場所を選んで開催することが望まれる。また、その開催時期については、平日などに実施しても参加者が少なく、その効果が期待できないので、連休や夏休み等を選び、親子が揃って参加し易い時期を選定する必要がある。過去の事例では、夏から秋に実施している場合が多く、また、沢山の人が集まり、恒例となっている祝日や行事日などに合わせた開催とした方が、相乗効果が期待できる。
(3)募集人員及び対象学年層の決定
 活動内容や開催場所の決定により、募集人員や対象となる学年層をどのくらいにするのかというのは、ある程度絞れるものです。余り対象者を広げると、参加者が多くなり過ぎて十分な対応が出来なかったり、逆に、対象者を狭めすぎると、参加者が余りにも少なくなり、閑散とした結果となったりします。
 参加人員については、過去の事例で見ると、平均一回当たり30名から50名で、学年層については、小学3年生から中学3年生間の子どもとその親を対象とするケースが、多かったようである。また、参加した子どもの中では、中学生と高校生が少なく、小学校の低学年から高学年までが中心であったこのことを考えると、この学年層を対象とした活動を展開した方が、将来の団員募集のPR効果は高いものと推測する。
(4)参加者の募集方法
 参加者の募集については、学校を通じてチラシを配ったり、地元新聞への掲載や折込みチラシ等により周知している。参加した子どもや親の意識調査によると、体験活動を何によって知ったかということについては、[新聞やチラシによる]との回答が最も多かった。
 したがって、募集方法としては、地元の新聞やチラシなどによる方法が最も効果的であるようである。また、参加者のうち、開催地の市内からの参加が半数で、その残りが市外からの参加となっていることを考慮すると、ある程度広範囲の地域にある掲示板や公民館等へも掲示する等の工夫をし、夫々の地域にあった募集方法を模索していく必要がある。
 
7 地域活動(行事)への積極的な参加
 海洋少年団が地域活動に参加するのは、次の目的があるからです。
 一つには、海洋少年団を知らない一般の子どもや親に対して、実際に自分の目で見る機会を与えることであります。元々海洋少年団を知らない父母は、「口コミ」等でその評判を聞いても、実際に自分の目で確かめてみないと納得しません。これには体験活動に参加してもらうことが最適な方法でありますが、その前段階としては、団員たちがパレード等の地域活動に参加する等人目の多い場所で、人目のつく時間帯に、一般の父母が目にすることが出来るような活動を行うことが必要となります。
 二つには、海洋少年団を既に知っている人たちに対しても、現状での海洋少年団の存在感をアピールすることであります。海洋少年団が、現在もこのように活発に活動していることを印象付けることによって、更なる「口コミ」につながる可能性があるからです。
 三つには、地元自治体等へのアピールであります。自治体等が行う行事に協力することによって、思いもよらないときに、何らかの便宜が図られることがあるからです。
 次に、海洋少年団が参加する地域活動には、次のようなイベント等があります。
・自治体が直接主催する運動会等のイベント
・自治体直接ではないが、関係団体や町会、商店街等が主催する○○まつり、橋の開通や町おこしのイベント等
・警察主催の地域安全や交通安全等及びその他の行政機関が主催するイベント
・半公共的な寺社、その他が主催するイベント
 また、海洋少年団が上記地域活動に参加する形態には、次のものがあります。
・パレード等に参加して一般の人たちに見せるもの
・旗の揚げ降ろし等特殊な技術を使うもの
・会場の案内、整理、後片付け等当日の運営手伝い
・単独でのごみ拾い、清掃、ごみ袋の配布や散らかし防止のPR活動
・企画段階での手伝い
・バザー出店や全体でのごみ拾い等への参加
 そこで、海洋少年団がこのような地域活動に参加するにあたっては、参加することによるプラス面とマイナス面とを考慮する必要があります。
 先ずプラス面としては、
・海洋少年団の存在を一般の人たちにアピールできること
・海洋少年団が自ら人集めをすることなく、自団の姿を一般の人たちに広く見せることが出来ること
・通常の海洋少年団活動と異なり、パレードヘの参加や手旗信号の演技を披露することは、年少団員にとって新たな技術習得の目標になること
 等があり、マイナス面としては、
・通常の団活動とは別のことであるため、団員を参加させづらいこと
 等を挙げることができます。
 これらの地域活動への参加は、いつでも簡単にできるわけではなく、関係自治体等と日常から良好な関係が築かれているところに依頼がくることが多いものです。しかも、その依頼は、突然くることがあり、これを受けると日常の団活動に支障が出ることが考えられる場合もあります。
 したがって、現実にこの地域活動への参加要請があった際には、上記プラス面とともに、マイナス面である指導者の負担、さらには依頼団体との今後の関係等を考慮して判断する必要がありますが、これを受けた海洋少年団にあっては、出来る限りマイナス面を克服して、積極的に参加することを進めます。
 自治体との関係については、自治体に登録しておくと、色々な活動に参加することが出来るところが多くあります。しかし、その場合には、自治体側が要求する条件、例えば、団体の構成員がその自治体内に居住している必要があるのか、傷害保険を自治体推薦のものに入る必要があるのか等を事前に調べておく必要があります。
 また、自治体等は、経費削減の観点からボランティアを多用する傾向にあり、余り参加することの有効性をアピールすると、当該団体に参加要請が集中するきらいがあります。
 結論として、各々の海洋少年団にあっては、自団の活動方針に則り、関係自治体等との関係も考慮に入れながら、参加することが今後の団活動にプラスになるとみられる地域活動には、万難を排して積極的に参加すべきであると考えます。
 
あとがき
 平成14年度に設置された「海洋少年団運動充実強化ワーキンググループ(WG)」は、平成17年度の事業完了をもって解散することになりました。
 その間にWGでは、「連盟指導要領」の改訂と「海洋活動マニュアル」の作成(H14)、「連盟指導要領解説書(新版海洋少年団リーダーブック)」と「海と船」の作成(H15)、「指導者養成研修準則」の作成と「連盟規定集」の刊行(H16)、並びに本書「団員募集活動マニュアル」の作成(H17)など、所期の目的は十分に達成できたものと確信しております。
 各海洋少年団におかれましては、配布されたこれらの資料を有効活用して、海洋少年団運動の更なる充実強化を図られますよう希望して止みません。
 最後に、4年間にわたりご協力賜りましたWG委員各位には、心から感謝申し上げますとともに、ここに、歴代のWG委員名簿を掲載し、御礼に代えたいと存じます。(WG座長 柳田幸三)
 
WG委員名簿(五十音順 敬称略)
 
青木 稔(日本連盟) 荒井 隆(大田区教育委員会)
上野 順子(福岡団) 河崎 弘(目本連盟)
小林 修(日本連盟) 園田 哲也((株)ゲッテイ)
富田 隆信(名古屋団) 中川 喜雄(千代田区団)
平野井 篤(小樽団) 藤本 昌志(神戸大学)
古庄 雅生(神戸大学) 松崎 敏和(中国地区連盟(故))
丸山 一郎(関東地区連盟) 柳田 幸三(日本連盟)
渡部 敏(千葉県校長会) 渡邊 貢(九州北部地区連盟)


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