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はじめに
 日本海洋少年団は、全国の少年少女たちを「海に親しみ、海に学び、海に鍛える」ことをモットーとして、昭和26年5月に発足して以来、全国の海洋少年団の団長、指導者をはじめ、関係の方々の文字通り献身的な努力の積み重ねにより、飛躍的に発展してきました。
 しかしながら、昭和50年代をピークに、その後はわが国の経済情勢や青少年を巡る社会環境の変化を受け、団員の減少に拍車が掛かり、近年では、海洋少年団活動の低調化が指摘されるまでに至っております。
 そのため、日本海洋少年団連盟では、平成10年度から海洋少年団運動の活性化対策に取り組み、平成13年5月に活性化対策検討委員会から答申を受けた『活性化対策に関する提言』について、これを具現化するため、平成14年度には、部外有識者4名を含む部内外委員12名からなるワーキンググループ(WG)を立ち上げ、これまでに『連盟指導要領』の改訂、同解説書『新版海洋少年団リーダーブック』及び同関連資料の作成等を行い、大きな成果を収めて参りました。
 そこで、平成17年度を最終年度とするWGでは、現在全国の海洋少年団が試行錯誤を重ねながら実施している団員募集活動に関する手引書を作成することとし、そのために、各海洋少年団が現に実施している団員募集活動の実例の収集と検討、並びに当連盟が従前から実施してきた諸施策の効果検証等を行い、更には部外委員や学校側の意見を参考にしながら、ここに手引書としての『団員募集活動マニュアル』を作成し、刊行の運びとなりました。
 各海洋少年団におかれましては、現下の厳しい実状を直視し、各関係者が共通認識を持って本マニュアルを有効活用し、今後の団員募集活動に成果を上げられんことを希望する次第です。
 おわりに、本マニュアルの刊行にあたり、ご協力いただいたWG委員各位に厚く御礼申し上げますとともに、ご援助いただきました日本財団に対し、深く謝意を表するものであります。
 
平成18年3月
社団法人 日本海洋少年団連盟
 
効果的な募集活動
1. 募集活動に係わる基本的指針
 近年、国政レベルでは、子どもたちの自然体験、奉仕体験など体験活動を重視した施策が打ち出されています。一方各地方においても、国の施策を取り入れたり、独自の事業を行うなど、子どもたちの体験活動への参加を促進する取り組みが見られるようになってきました。今日まで青少年の健全な育成に力を注いできた各種青少年団体にとっても、体験活動を重視する時代の流れを的確に捉えることが今求められています。このような好機を迎えて、他の青少年団体には無い海洋活動を旗印とする海洋少年団にとっては、海に関する子どもたちの多様な活動のノウハウを今こそ発揮することが期待されております。
 この期待に応えるためには、本来の海洋少年団活動を充実させることは勿論のことですが、広く社会に向けて海洋少年団活動を知らせるとともに、新しい団員を獲得するための広報活動を活性化させることがこれまで以上に重要となってきています。現代は、宣伝の時代です。質の高い活動をするだけではなく、その活動の自己PRを上手に行う団体が社会から関心を持たれ、子どもを持つ保護者や学校、行政などから厚い信頼を勝ち取ることが出来るものです。広報の重要性について認識をもっている場合でも、今までの方法が良かったのかどうかの検証をしなければなりません。時代にあった効果的な募集活動を、若い人を含めた関係者全員が知恵を出しあって実施していくことが重要です。
 近年のわが国は、情報社会といわれ、めまぐるしく変転する情報伝達の世界になっています。携帯電話、パソコン等は、正に日進月歩を遂げていて、その動きについていくことは、特に中高年者にとってたやすいことではないかもしれません。しかし、このような新しい情報伝達のツールを自らが使用しないまでも、団員募集について活用できるものには何があるのか、と言う視点から、今までの広報の方法に囚われず、団員や若いリーダーの力を生かして、急速に広がっている新しいツールを含め、望ましい広報のあり方について検討する必要があります。
 ここに、効果的な団員募集活動のマニュアルを提示しますが、募集活動は、日常の海洋少年団活動と密接な関係があるものですので、このマニュアルは、魅力ある海洋少年団活動を展開するための手引書でもあるのです。すなわち折角新入団員を確保しても、その後の海洋少年団活動に魅力が無ければ、それらの団員は離れてしまいます。逆にその活動に魅力があれば、入団しようとする子どもたちが自然に集ってくるもので、魅力ある海洋少年団活動には、保護者や子どもたちが必ず関心を寄せるものと信じます。
 各海洋少年団にあっては、団員募集活動を活発に行うことは当然なことですが、その募集活動を効果的なものとするためには、「海を舞台に活動している」という、他の青少年団体には無いこの特性を十分に生かして、時代に即応した魅力ある海洋少年団活動を展開することが何よりも重要であるということを、改めて認識すべきでありましょう。
 なお、本WGでは、募集活動に係わる諸問題について、次のとおり考察を行っておりますので、あわせて参考にしていただければ幸甚の至りであります。
(1)広報担当指導者の養成
 海洋少年団活動における広報とは、『夫々の海洋少年団が、所属の団員とその家族、学校の先生、一般の児童生徒、地域社会の人々等との間に、海洋少年団活動に関する正しい理解に基づく信頼関係と、相互の交流関係を作り出すための活動』であり、広報活動は、海洋少年団の様々な活動計画と組み合わせて、より具体的な目標(たとえば「団員募集」)と結び付けて実行することが望ましいものです。それは、一時的な活動ではなく、日常的に絶えず繰り返して行う必要がありますが、それによって早急な効果が期待できるものとは限りません。
 今日まで、各海洋少年団にあっては、夫々の地域の実状を勘案し、創意工夫を重ねながら、様々な広報活動を展開してきましたが、予期した程の効果を上げるまでには至っておりません。その要因の一つとして、各海洋少年団には、広報に関する知識と技能を有する指導者が養成されてこなかったという現実にあります。
 従って、この問題を解決するためには、個々の海洋少年団の自助努力のみでは限界がありますので、日本海洋少年団連盟において、一連の「指導者養成研修」の中に、部外専門講師による『広報研修』を組み入れ、広報活動に有能な指導者を計画的に養成する必要があります。
(2)メディア活用の有効性検証
 日本海洋少年団連盟には、従前から『海洋少年団の知名度が低いため、団員募集に大変苦労しているので、日本連盟は、メディアを活用するなどして、積極的に海洋少年団のPRに努めてほしい。』との声が各海洋少年団から多数寄せられていました。
 そこで、日本海洋少年団連盟では、平成15年5月に、他の海事関係団体と共同にて、朝日新聞関東版1ぺージ全面を使って、海洋少年団活動等のPR記事を掲載しましたが、電話照会など全く反応がありませんでした。(経費分担30万円)また、平成16年度には、日本財団の助成を受けて、新聞広告用に75万円の予算を計上し、九州北部地区連盟と協議の上、毎日新聞の北九州市・福岡市版に計4回(5月1回、翌年1月2回、2月1回)にわたり、海守とタイアップしてA4版程度の団員募集広告を掲載しましたが、2件の電話照会のもと、4名が入団したに留まりました。
 顧みるに、新聞は、一般的には読み捨てされるものであり、配達当日に目に入らなかった広告は、二度と日の目を見ないとみられるものであります。
 従って、新聞広告は、費用対効果という面から見たときに、団員募集あるいは海洋少年団活動のPR効果は、低いと断じざるを得ません。今後、各海洋少年団にあっては、地元紙記者と日頃から協調関係を保つことによって、海洋少年団の諸活動や地元と共催して実施するカッターレース等の行事に関する取材記事を掲載してもらえるよう努力すべきものと考えます。
 また、某海洋少年団の指導者から、最近『海猿』という映画やテレビドラマが好評を博し、海上保安庁のPRに大きな効果をもたらしたのをみて、日本海洋少年団連盟においても、海洋少年団活動をメインテーマにしたテレビドラマを放映してもらえるよう努力すべきではないか、との提案がありました。これは尤もな提案ではありますが、近い将来これが実現する見通しはありませんので、ここでは今後の努力目標として付記して置くにとどめます。
 結論としては、団員募集には、膨大な経費を要する一般紙やテレビヘの広告に期待するよりも、むしろ地元に密着した方法として、地元自治体発行の広報誌への掲載、チラシの配布や「口コミ」等を積極的に活用した方がより効果的であります。
(3)団員制服の改善
 制服は、その団体を表徴するものであり、その構成員がそれを着用することに誇りを持てるようなものであることが望ましい。
 海洋少年団の現行の服装規程は、平成3年7月1日に改正・施行されたもので、既に14年余りが経過しており、かつ、各地の海洋少年団関係者から『親としては、海洋少年団に入団させようとするが、子から海洋少年団の制服が格好悪いとして入団を拒否されてしまう』ので、団員の制服を改善してほしい旨の要望を受けていることもあり、今後の団員募集活動をより効果的に推進する観点からみて、現行の団員制服を全面的に見直しする適時と考えます。
 日本海洋少年団連盟においては、諸般の事情を勘案しながら、可能な限り早期に団員制服を改善する方向で、全国の海洋少年団関係者の賛同が得られるよう努力すべきであります。なお、団員制服を改善する場合にあっては、現行の制服等は、経過措置として、その後3年間の併用着用を認めることが必要であります。


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