|
皆さんの安全運航を願って(その2)
広島地区小型船安全協会(広島市矢野遊漁船組合分会)会員
(有)フロリダマリンサービス代表取締役 森永 重昭
今回は私が作成しました広島市矢野遊漁船組合安全講習会資料から「エンジントラブル」に関するものと、当社での修理、整備、救助業務を振り返ってみて、その原因を分析した「サービスミニ情報」の一部を取りまとめてみました。安全で楽しいマリンレジャーの参考にして頂ければ幸いです。
洋上のエンジントラブル(1997年資料から)
この年は特に洋上でのエンジントラブルの多かった年でした。その特徴を挙げてみます。
【使用年数とエンジントラブルの頻度】
エンジントラブルは使用年数7年を超えた頃から急激に多くなるようです。
【系統別のトラブル事例】
第一:燃料系
燃料タンクに少しずつ溜まった水が、遂にキャブレターや噴射ポンプに送り込まれエンストしたり、それが微量であれば重要な部品を少しずつ錆びさせ、各気筒の燃料バランスを狂わせます。
2気筒位なら、この時点で操縦者が異常に気付きますが、3気筒以上になると気付かず走行する場合があります。その結果、燃料が希薄になった1気筒だけがピストンの焼付けや溶損を起します。
これは年1回位、燃料タンクとキャブレターを点検し、清掃することで防止することができます。
第二:冷却系
十数年前は、取水口にビニールを引っ掛けることが多かったのですが、今ではブザーが鳴りますので、すぐにビニールを取り除けば大丈夫です。
ところが、冷却水の部分的な詰まりについてはアラームが鳴りません。例えば3気筒目だけに塩の固まりができているような場合です。
これは長期間乗らないで放置しているエンジンに発生しやすい問題で、使用1〜2年で起こることもあります。
これを外部から完全に察知することは困難で、私の会社のエンジニアは点火プラグの状態によって必要と判断した時エンジンを分解して点検します。
第三:潤滑系
船外機が分離給油になってから希にあるのが、オイルタンクに水が入って潤滑不足になりエンジンが焼付くことです。7年以上使用したエンジンは一度点検するべきです。
また、市販されているオイルは各種の特徴を持ったものがあります。純正ならまず問題ありませんが、そうでない場合はよく確かめなければなりません。
ジーゼルでオイルの入れ過ぎによるトラブルが3件もありました。この場合、ブローバイパイプがインレットマニホールドに接続されているエンジンであれば一瞬でエンジンが破壊されてしまします。
オイル関係のトラブル(2001年資料から)
2ストローク船外機
一定回転で回っているエンジンもエンジン内部の部品にかかる負荷は刻々変化しています。
船が波にぶつかった時は、クランクに大きな力がかかり、プロペラの前にゴミが掛かれば水温が急激に上がり、水路にゴミや錆がつまれば徐々に水温が上ってきます。
このような条件下でもオイルの質が良ければどうにかエンジンは頑張ってくれるのです。
しかしオイルの質が良くても絶対にエンジンが焼き付かないということではありません。
ピストンリング溝にカーボンが溜まっているような場合、ピストン温度の上昇により焼き付きやすくなります。
今まで長い間3000rpmで位しか回したことがないエンジンを初めて5500rpmで回したら20分位して焼き付いたというのは、この傾向が強いと考えられます。
オイルの質が良ければこのような時にも、エンジンはより長く頑張ってくれると言うことです。
また、質の良いオイルは潤滑能力だけでなく、カーボンが溜まりにくい、カーボンが溜まってもある程度洗浄してくれるということもあるのです。
素性が定かでないオイルを応急的に使用するのであれば、少なくてもその混合比率を守らなければなりません。
混合比率
2サイクルオイルには、20:1, 30:1, 50:1, 100:1で使用するオイルがあります、チェンソーやバイクは20:1です。これを船外機に使用すると当然潤滑不足になります。
いずれにしても、メーカーが保証しているものを使用していれば間違いないと言えます。
■注意事項
○オイルは質を保証されている物を使うこと。
○オイルタンクに水が入っていないか点検。(少量の水でも長時間放置するとヘドロ状の堆積物ができ、オイルの流動性を妨げてエンジンの焼付けの原因になる。)
○混合タイプでは混合比を守る。(濃ければカーボン堆積の原因になり、薄ければ焼付けの原因になる。)
4ストローク船外機
4ストロークエンジンオイルは減らないと考えるのは間違いです。
クランクシャフトやカムを潤滑したオイルは、オイルパンに戻りますが、ピストンとバルブを潤滑したオイルは僅かながら戻ってきません。
それにブローバイバルブからオイルミストとなって出ていくものもあります。
なにしろ5500rpmフルスロットルで走っているエンジンは車で言えばアクセルをいっばい踏み込んで160km/hで坂を上っているよりももっと過酷なのです。
160km/hとして100時間毎にオイルを交換したとしても、車で言えば16000km毎と言うことになります。
ですからオイルの交換時間は100時間を目安でなく、100時間以内と解釈しておいた方が良いと思います。実際に140時間使用したエンジンでは、オイルレベルゲージの先端に少しオイルが付く程度まで減っており危険な状態でした。
車のオイルも減っていますが、量が多いため(4〜6  )分かり難いのと、使用する回転数がまるで違う(60km/hで走っても1800rpm程度)のでオイルの温度もあまり上がらず減り方も少ないのです。
船外機(F50AET)の場合、オイル量は2  ですから0.5  減ったら大変です。
■注意事項
○オイルの質を守ること。(粘度指数10W-40とか性能等級SG, SH, SJなど)
○乗る前にオイルレベルを確認すること。
○オイル交換時期を忘れないこと。(オイルはあれば良いと言うものではありませから大丈夫と考えるのは間違いです。)
ディーゼルエンジン
ディーゼルエンジンの性能向上にはめざましいものがあります。
今から30年位前には300kgもありそうなエンジンがたったの60馬力でした。今では240馬力でも350kg位しかありません。
ディーゼルエンジンの性能は各種技術の進歩によって飛躍的に向上したのですが、その中にはオイルの性能向上も大きく貢献しているのです。
ディーゼルエンジンに限らずターボチャージャーが付いているエンジンではオイルの負担は大きく、オイルの等級で言うとディーゼルの場合CD以上でないと耐えられません。
運転時間は比較的短いのにオイル消費が多いエンジンを分解しますと、ターボチャージャーのラビリンスシールにカーボンが詰まっているもの、ピストンリングがカーボンによってピストンのリング溝に膠着しているものがあります。
その原因としては次の場合が考えられます。
(1)オイルの質がエンジンに適合していない。
(2)オイルの交換時期を極度に越えて使用している。
(3)オイルクーラーが汚れていてオイルの温度が上り過ぎている。
実際にあった事例として「スピードが出なくなった」と持ち込まれたエンジンでさんざん原因を調べた後、オイルを入れ換えるだけで復旧したものがありました。ユーザーの話では、最近音が大きくなりガタが出たものと判断して、粘度の高いオイルを入れたとのことです。
粘度の高いオイルは、撹拌圧送されることによる抵抗で自己発熱を伴い、油音が上がり逆に粘度が下がる場合があります。これはエンジンの寿命低下につながります。
また、オイルの入れ過ぎによってエンジン回転が上らない場合もあります。それは、クランクシャフトによってオイルをかき回しているからです。
エンジンの構造によっては、オイルを燃焼室に吸い込んでエンジンを破壊してしまうこともあります。
■注意事項
○エンジンメーカーが粘度及び性能等級を保証しているオイルを使用すること。
○エンジンメーカーが指定するオイル交換時間を守る。(燃料に重油を使用している場合は早めに交換する。)
○使用前にエンジンオイルのレベルを確認する。
サービスミニ情報(2002年資料から)
■イカリが岩に引っかかったので、左側のクリートにロープを括り、前進して外そうとしたら、船ごとひっくり返った。
○ 事故発生時の状況
●ボートの大きさ:20フィート(6m)
●季節:冬(12月)
●風:約6m
●波:約50cm
●釣りを終えて帰ろうと思い、イカリを揚げようとしたら、岩に引っかかって揚がらなかった。イカリ綱を左舷部のクリートに結び、ギアーを前進に入れてアクセルを開いた。
○ 原因(推定)
●イカリが強く食い込んでいた。
●前進で引っ張った。
●左舷側で強く引っ張ると船は右舷側に傾く、この状態で横波を受けた。
●前に屋形、後部にステンレス枠のオーニング、補助エンジンがついており、重心が高くなっていた。
○ 対策
●ロープが十分たるむまで潮上(風上)に登る。
●ロープができるだけ短く(垂直)になったところで、船首のクリートかバウアイにしっかりと結ぶ。
●イカリがかかった方向から見て水深が深くなる90°の方向に後進でゆっくり増速しながら引っ張る。
船の重心へ細心の配慮を!
このような場合に限らず、自然を相手ですから、いつ荒天に見舞われるか判らないわけです。日頃から、船の重心を下げるように心がけておかなければなりません。
小型のボートでは、巻いたテントを屋形の上に乗せているのも重心を上げる原因になります。さらに、そのテントの巻き方が間違っているために、テントの中に雨水が溜まっているのをよく見かけます。
船の備品として載せている物も、水面より高い位置にあればあるほど重心を上げボートを不安定にします。予備として積むバッテリー、燃料、発電機、清水などは極力フロアー下の船倉へ収めるべきです。
ボートは適正な状態で重心が低い方がより安定しており安全ですが、もう一つ前後方向の重心位置も重要です。滑走型のボートであれば重心は中央より後になければなりません。
キャビンが前にあるボートで足の踏み場のないほどキャビンの中に荷物を積んでいると、波を斜めに横切ったとき、転覆しないまでも波の谷間に吸い込まれるように傾いて波を乗り切れないことになります。船首が上るため、船首部に砂袋など重量物を積んでいる方がありますが、船尾の改善で対処すべきです。
以下 次号
|