日本財団 図書館


法定後見制度を利用するには
1)申立て
本人の住所地を所管する家庭裁判所へ申し立てます。
申立てができる人
・本人 ・配偶者 ・4親等以内の親族
・市区町村長(身寄りのない人の場合)など
申立てに必要なもの
・申立書(家庭裁判所で入手)
・申立て手数料(1件600円)
・登記印紙(4000円)
・郵便切手(500円×3枚、80円×20枚、10円×10枚)
・戸籍謄本 ・戸籍附票(本人のみ)
・住民票(法定後見人の候補者のみ)
・身分証明書(市区町村長が交付したもの、法定後見人の候補者のみ)
・成年後見に関する登記事項証明書(登記されている・されていない)
・本人の医師の診断書(1万円程度)など
 
2)調査
 家庭裁判所の調査官が、本人の精神状態の概要、生活状況、資産の状況、申立て理由について調査します。
3)鑑定
 鑑定書の提出(保佐類型・後見類型)
 本人の判断能力がどれくらいか、医師に鑑定を依頼し、鑑定書(5万円〜30万円)を作ってもらい家庭裁判所に提出します。(補助類型では診断書)
4)審問
 さらに、本人の障害の程度やどのような援助が必要かを確認するために、家事審判官(裁判官)が直接本人に会って意見を聞くことがあります。
5)審判
(申立てから審判まで3〜6ヶ月かかります)
 以上の手続きを経て、家庭裁判所が申立ての内容が適切かどうか判断します。法定後見が認められた場合は同時に法定後見人になる人も決まります。
 また、審判の内容は東京法務局に登録されます。(成年後見登記)(登録事項証明書)
6)法定後見開始
 本人と法定後見人に決まった人に審判結果を告知・通知し、法定後見が開始されます。
 
【補助・保佐・後見制度の概要】
補助 保佐 後見
要件 判断能力
(対象者)
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者 精神上の障害により事理弁識する能力を欠く状況にある者
鑑定等の要否 診断書など
(原則として鑑定不要)
原則として鑑定必要 原則として鑑定必要
開始手続 申立権者
(申立てができる人)
本人、配偶者、4親等内の親族、他の類型の援助者、監督者、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人
市町村長など
本人の同意 必要 不要 不要
機関の名称 本人 被補助人 被保佐人 被後見人
援助者 補助人 保佐人 成年後見人
監督者 補助監督人 保佐監督人 成年後見監督人
同意権・取消権 付与の範囲 特定の法律行為
(申立ての範囲内)
民法12条1項所定の行為(日常生活に関する行為を除く) 日常生活に関する行為以外の行為
【同意権はない】
付与の審判 必要 不要 不要
本人の同意 必要 不要 不要
取消権者 本人、補助人 本人、保佐人 本人、成年後見人
代理権 付与の範囲 特定の法律行為
(申立ての範囲内)
特定の法律行為
(申立ての範囲内)
すべての財産的法律行為
付与の審判 必要 必要 不要
本人の同意 必要 必要 不要
助者の責務 職務 同意権・取消権・代理権の範囲における本人の生活、療養看護および財産に関する事務 同意権・取消権・代理権の範囲における本人の生活、療養看護および財産に関する事務 本人の生活、療養看護および財産に関する事務
一般的義務 本人の意思の尊重
本人の心身の状態および生活の状況に配慮
本人の意思の尊重
本人の心身の状況および生活の状況に配慮
本人の意思の尊重
本人の心身の状況および生活の状況に配慮
*代理権=代理権とは、代理権を与えられた人が、本人に代わって、本人のために契約などの法律行為を行うもの。代理権を与えられた人を代理人、代理することができる権限を代理権といいます
*同意権=本人が、法律行為をするにあたって、後見人等が了解すること。
*取消権=取消権とは、本人が自ら行った法律行為を取り消しできること。取り消しをすると、その行為はさかのぼって無効となります。
*成年後見監督人など
 家庭裁判所が必要だと判断した場合に、成年後見人などの他に監督人が選任されることがあります。それぞれ、補助監督人、保佐監督人、後見監督人といいます。成年後見監督人などは、成年後見人などが行っている後見事務が適切かどうか、本人の意思が尊重されているかなどをチェックする役割を持っています。万が一不正がある場合には、家庭裁判所に後見人の解任の申立てをすることもできます。
*複数後見
 本人の事情によって、家庭裁判所の判断によって、複数の後見人が選任されることがあります。共同または分掌して権限を行使するように定めることができます。
*法人後見
 適当な後見人などの候補者(個人)がいないなどの事情を考慮して、法人が後見人などに選任されるようにしました。
*市町村長の申立てについて
 身寄りがいない場合や、親族がいても申立てをしようとしない場合など、福祉を図るために、特に必要があると認めたれるときは、市町村長が申立てをすることができます。
*成年後見人などの資格
 法律上の制限はありません。どのような人を選任するかはそれぞれの人の事情に即して家庭裁判所が判断します。
 家庭裁判所では、
(1)本人の心身の状況・生活・財産の状況
(2)成年後見人などの候補者の職業・経歴、法人の場合は法人の事業内容
(3)候補者と本人との利害関係の有無
(4)本人の意見
を考慮し選任します。
*後見人などの報酬
 後見人(補助・保佐についても)が後見事務を処理するために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁(支払い)します。
 報酬については、家庭裁判所の審判によって被後見人の財産の中から妥当な報酬を受けることができます。裁判所が報酬の有無、その金額を判断するに当たっては、後見人と被後見人の資力、両者の関係、後見事務の難易、量などの実情を総合的に考慮し、決定されます。
 
財産管理と身上監護
 印鑑、貯金通帳の保管、年金その他の収入の受領や管理、支援費の利用契約の締結や、生活に必要な資金を捻出するための不動産の売却など被成年後見人の財産に関する管理
 そのために、後見人は被後見人の財産を調査し財産目録を作成する義務を負います。
 成年後見制度での身上監護に関する義務は、意思表示による契約など法律行為に関する権限(代理権・取消権・財産管理権)の行使で、現実の介護行為のような事実行為は含まれていない。(1)医療に関する事項(2)居住の確保に関する事項(3)施設の入退所、処遇の監視・異議申し立てなどに関する事項(4)介護・生活維持に関する事項(5)教育・リハビリに関する事項についての契約の締結、相手方の履行の監視、費用の支払い、契約の解除に伴う処理を行う。実際に日常生活の面倒を見る介護を行うということではない。
 
*人格権・自由権など人権の尊重の観点から、身体に対する強制を伴う事項については職務の範囲外とする。(健康診断受診の強制、入院の強制、施設への入所の強制など)
 
欠格条項
(1)政治的権利=選挙権・被選挙権(被後見人のみ)
(2)他人の財産の管理者=株式会社、有限会社の取締役
(3)専門的資格(2002年に欠格条項の見直しが行われた)
 
申立てができる人


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION