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自閉症児者の家族支援の人材養成事業
〜仲間同士による支えあいを! ペアレント・メンター養成講座の開設〜
 可愛い赤ちゃんが生まれたけれど、言葉がない、呼んでも振り向かない、皆とうまく遊べない。どこか他の子どもたちとの違いを感じて不安を抱えるお母さん。あるいは1歳半健診や3歳児健診で「あなたのお子さんは自閉症です」と告げられたけれど、これからどうすればよいのかわからずに一人で悩んでいるお母さん。専門機関に相談に行くほどではないかもしれないと思い迷っていたり、あるいは診断はされたけれど、専門機関は満員で相談の順番までにどうしたらよいのかわからずに不安ばかりが募って悩んでいるお母さんがいます。
 そんな乳幼児期の自閉症児のお母さんばかりでなく、学齢期も思春期も青年期も成人期も、お子さんの健やかな成長を願ってあるいは将来に向けて、ご家族が悩みや不安を抱えることは少なくありません。幼稚園はあるいは学校はどこがいいのかしら?学校の先生とうまくいかないのだけれど?思春期にはどう対応をしたら良いのかしら?グループホームはどうやって作るの?そんなご両親の悩みや不安を受けて、これまでも、日本自閉症協会の全国49支部の事務局や役員の家族たちが、同じ自閉症児を育ててきた経験を生かして仲間としてお話を伺い、情報を提供してきました。
 もちろん、家族たちは専門家ではありませんから、自分の体験にないことや難しい相談を受けることはできません。しかし、同じ親として話を聞くことや共感することは出来ます。こうした仲間同士の相談がこれまでも自閉症児を持つ家族にとって大きな支えになっています。
 平成17年4月、自閉症をはじめとする発達障害のある人たちのための「発達障害者支援法」が施行されました。法律の施行を機に、私たちは自閉症の人たちとその家族への支援体制の整備を急ぎたいと考えています。そしてこのことの実現に向けて、全国各地で家族がこれまで果たしてきた役割をより確かにしていく必要があると考えました。
 この度、日本財団さまの助成を頂き、第1回ペアレント・メンター養成講座を全国の2箇所の会場で開催することが出来ました。今年度の養成講座では、全国で60名のペアレント・メンター(=信頼のおける相談相手)たちが誕生しています。相談を受ける側も「誠意を込めてお答えをしているが、中には自信をもって対応することが出来ない場合もあり、日々難しさを痛感している」ことも少なくない状況でしたが、受講した家族たちからは「私たちのときは・・あるいは、私も頑張ったのだから、あなたも頑張りなさいよ!というのは悩んでいるお母さんに寄り添っていない発言だった」ことに気づいたり、「新しい情報を提供することの大切さやメンターとして客観的に捕らえなおかつ母親からの視点でお話しすることの大切さを学びました。また、地域のリソースブックづくりなども含め、メンター自身もネットワークを作っておくことが必要であると感じました。」という感想をいただいています。
 日本自閉症協会では、今後も全国の家族メンバーたちに呼びかけてメンターとしての役割を担う人材の養成を、継続的なフォローアップ研修の実施とともに行っていきたいと考えています。
 「家族の家族による家族のための」相談支援体制の充実に向けて、全国各地の発達障害者支援センターをはじめとする各種相談支援機関との連携を求めながら、養成されたペアレント・メンターとともに自閉症のある人たちとその家族の地域での安心した暮らしの実現に向けて、その一翼を担って行きたいと考えています。
2006年3月
社団法人 日本自閉症協会
自閉症児者の家族支援のための人材養成事業企画運営委員会
委員長 氏田照子
 
ペアレント・メンターとは?
 メンター(mentor)とは「信頼のおける相談相手」という意味です。
 
 現在、欧米でも親自身が診断を受けたばかりの子どもの親や、さまざまな子育ての疑問を持つ親に対して話を聞いたり、情報提供を行ったりして活動しています。
 
 もちろん親は専門家ではありませんから、自分の体験にないことや難しい相談を受けることはできません。しかし同じ親として話を聞くことや共感すること、地域の情報を提供することはできます。
 
 現在、日本自閉症協会では49の支部において何人かの親がこうした活動を行ってきており、相談者の大きな気持ち的な支えになっています。
 
 こうした相談活動は自閉症の概念の広がりの中で、今後ますます必要となってきます。
 
 今回の研修会の目的は、このような活動を行っている方々に対して、相談技術の基礎を学べる機会を提供することです。
 
 メンターの行う相談活動は、ボランティア的な活動ですから、自分自身の状態にあわせて無理のない範囲で行うことが必要です。
 
 また、相談活動にはストレスを伴う場合もあります。メンター同士で支え合える環境を整えたり、発達障害者支援センターなどそれぞれの地域においてバックアップしてもらえる機関を持つことも重要です。
 
 メンターに対する支援やフォローのシステムは、まだ十分に整備されているとは言えませんが、この研修を通じて各支部でのメンター制度の在り方について考えていって頂ければ幸いです。
2005年11月
社団法人日本自閉症協会
 
社団法人 日本自閉症協会 Autism society Japan
ペアレント・メンター養成講座 2005
★ペアレント・メンター養成講座の内容
★ペアレント・メンターガイドライン
★相談技術と碁礎知識
★地域生活支援リソースブック2005
★実技研修
 
【ペアレント・メンター養成講座の内容】
*プログラムは変更になる場合があります。
 
愛知会場
《1日目 「応用・実技研修」》
2005年11月19日(土)愛知県中小企業会館7F 第4会議室
時間 内容 講師
10:00〜10:20 オリエンテーション 事業委員会 井上委員
10:20〜11:20 相談の技術(情報の伝え方、電話相談) 協会相談担当:
永井洋子専門相談員
11:30〜12:30 リソースブックの作り方と地域活動 横山委員
13:30〜15:30
 
15:30〜16:30
実技研修 ロールプレイ
(3グループに分かれてグループワーク)
各グループの報告とまとめ
(1)永井洋子委員
(2)井上雅彦委員
(3)犬飼陽子先生
 
《2日目「基礎・知識研修」 一般公開セミナー》
2005年11月20日(日)名古屋市高年大学鯱城ホール
時間 内容 講師
13:00〜13:10 ペアレント・メンター養成事業について 氏田照子副会長
13:10〜14:10 基礎講座 (1)自閉症に対する基本的理解 村松陽子先生
14:20〜15:00 (2)自閉症へのアプローチ(支援)の基本 村松陽子先生
15:10〜16:00 (3)自閉症の家族への支援 村松陽子先生
16:10〜16:30 まとめと認定証の授与(メンターのみ) 石井哲夫会長
事業委員会
 
東京会場
《1日目「応用・実技研修」》
2005年12月10日(土)日本財団会議室
時間 内容 講師
10:00〜10:20 オリエンテーション 事業委員会(日詰委員)
10:20〜11:20
 
11:30〜12:30
相談の技術(情報の伝え方、電話相談)
 
リソースブックの作り方と地域活動
協会相談担当:
武藤直子専門相談員
阿部・中村・野尻委員
13:30〜15:30
 
15:30〜16:30
実技研修 ロールプレイ
(3グループに分かれてグループワーク)
各グループの報告とまとめ
(1)武藤直子先生
(2)日詰正文委員
(3)大岩香代子委員
 
《2日目「基礎・知識研修」 一般公開セミナー》
2005年12月11日(日)友愛会館 ホール
時間 内容 講師
13:00〜13:10 ペアレント・メンター養成事業について 氏田照子副会長
13:10〜14:00 基礎講座(1)自閉症の基礎概念 市川宏伸先生
14:00〜14:45 (2)自閉症の理解・家族支援 市川宏伸先生
15:00〜16:00 (3)自閉症のアプローチの基本 市川宏伸先生
16:10〜16:30 まとめと認定証の授与(メンターのみ) 石井哲夫会長
事業委員会


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