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船舶電気装備技術講座 〔装備艤装工事編〕 (レーダー)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


はしがき
 近年レーダーは、船舶安全法や船舶設備規程によって、ほとんどの船舶に装備されることを義務づけられているが、一方、航行安全の見地から、同法の適用を受けない小型船舶にまで装備されているのが現状である。
 このようにレーダーは船舶の航行安全上欠かすことのできない重要な機器であるが、また、同時に高度な電子機器でもある。したがって、その艤装工事は慎重に扱わないと、法で求めている所期の性能を発揮させることはできない。ところが、従来からこの装備工事に関しては、各メーカーの個々の自主的な指導に依存しているのが現状で、統一的なものは何もなかった。
 本書は、これらを集約整理してまとめたもので、各位はこれを十分学習することによって、各レーダーの持っている性能を100%発揮できるような装備工事が行えるようになって頂きたい。
 なお、本書は競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて作成したものである。
 
第1章 航海用レーダーの法的な規制と関連規則類
1・1 はじめに
1・1・1 航海用レーダーと法規
 航海用レーダーは、船舶の運航上欠かすことのできない機器であるとともに、電波を使用する機器でもある。このため、このレーダーについては、船舶安全法とその関係法令及び電波法とその関連法令によって、いろいろな規制を受けることになっている。
 ところが、船舶は世界中の海を航行するので、その規則の多くの部分は世界的に共通でなければならない。そこで、これらの法規は幾つかの関連する国際機関と国際条約に基づいて作られている。
 すなわち、船舶安全法とその関係法令の多くの部分は「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS)」及びこの条約を所掌する「国際海事機関(IMO)の総会の決議」に基づいて作られ、また、電波法は「国際電気通信連合(ITU)」が関係し、その無線通信規則などに準拠して規定されているものが多いが、船舶用の無線機器等についてはSOLAS関係も多く取り入れられている。
 これらの国際条約の中で、レーダーなどは長い船舶の歴史から見れば比較的最近に導入されたものではあるが、その技術の進歩が早いため規則類も数年ごとに改正され、今後もまだ改正の可能性があると考えられている。
 そのため、現存船に装備されている航海用レーダーには、従来のいろいろな規定に基づいて製造されたものが混在しているのが現状である。そこで、まずそれらの法規の変遷について述べ、その後現行の条約関係と法規を紹介し、また、比較的大型の船舶に適用される「日本海事協会(NK)規則」等の船級規則と、その他の航海用レーダーの諸規則や制度についても触れることとする。
 また、最近「国際標準化機構(ISO)」と「国際電気標準会議(IEC)」でも航海機器の国際的な標準化が進められていて、航海用レーダーと自動衝突予防援助装置については、すでにIECにおける規格化は終わっている。
 
1・1・2 レーダーへの国際法の適用について
 レーダーの語源は、Radio Detection And Ranging(無線探知及び測距)又はRadio Direction And Ranging(無線方位測定及び測距)の略であるともいわれている。
 レーダーはその名前が示すように、電波(パルス波)を発射して周囲の物体や地形を探知し、これをブラウン管(C.R.T)上に映像として映し出す装置であって、それらの物体や地形の方位と距離を容易に測定することができる。
 このレーダーは第二次世界大戦中に軍用として発達をしてきたが、戦後間もなく一般商船に使用されるようになり、天候や昼夜の別なく自船の周囲の陸地の状況や相手船の存在などを知ることができることから、多くの船舶で受け入れられるようになった。今日では商船といわず漁船をも含めて必需品的なものとなり、ある程度以上の大きさの商船や漁船などでは、すべてレーダーを装備するのが常識となってきた。
 国際海事機関(IMO)〔この機関は1982年5月までは政府間海事協議機関(IMCO)と呼ばれていた〕は1971年(昭和46年)10月の第7回総会で航海用レーダー(Navigationa1 Radar Equipment)の性能基準(Performance Standard)についての勧告に関する決議を採択した(決議A.278(VII))。これは勧告の文章にもあるように、1960年の「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」の第5章12規則の中で船舶へ装備することが規定された航海用レーダー(Shipborne Navi-gational Radar Equipment)の性能基準を定めたものであるが、その装備の規定はのちに述べる1974年のSOLAS条約まで実現しなかった。IMOは更に1973年11月の第8回総会で前の決議の補足として、航海用レーダーの制御つまみに付けるシンボルマークについての決議(A.278(VIII))を採択した。
 
1・1・3 航海用レーダーへの国内法の適用について
(1)船舶安全法による適用
 日本はこのような国際条約によってレーダーを船舶へ強制装備することが決議される前に、昭和50年11月に船舶安全法の関係省令である船舶設備規程を改正して、次のような船舶には航海用レーダーを備えなければならないことにした。
(i)総トン数500トン(旅客船及び危険物ばら積船等は300トン)以上の船舶には1台のレーダー
(ii)長さ200m以上の船舶には予備を含めて2台のレーダー
 この規定とともに船舶設備規程にはレーダーの性能要件が定められたが、この場合、将来の条約改正を見越して総トン数1,600トン(以下1,600GTと略す)以上の国際航海に従事する船舶の場合は前記IMOの決議A.278(VII)に基づくレーダーを、また500(300)GTから1,600GT未満の船舶の場合は、それから若干性能を落としたレーダーでもよいという規定が作られて公布された。同時に、改正された船舶等型式承認規則では、このレーダーのうち前者を甲種、後者を乙種と呼ぶことにしている。
 またレーダーが電波を発射する装置でもあるため、電波法によっても航海用レーダーの技術的条件が規定されることになり、無線設備規則の中に
(1)IMOの決議A.278(VII)相当のもの
(2)(1)よりも性能を落としたもの
(3)別に郵政大臣の告示によるもの
の三種類のレーダーが規定された。
 (3)については、次の3種類が告示された。
(i)乙種レーダーに相当するもの
(ii)空中線電力が5kW未満の小型レーダー
(iii)波長がミリ波のレーダー
 電波法による無線機器型式検定規則には、レーダーの技術的要件や試験方法などが規定され、前述の(1)のレーダーを第1種レーダー、(2)のレーダーを第2種レーダー、(3)のレーダーを第3種レーダーと呼んでいる。
 第1種レーダーは甲種レーダーに第3種レーダーのうち(i)のレーダーは乙種レーダーに相当しており、この場合の第2種レーダーと第3種レーダーのうちの(ii)と(iii)は、レーダーの装備を強制されていない船舶用のレーダーということになるが、もちろんそのような船舶に第1種及び第3種の(i)のレーダーを装備しても差し支えない。
 1960年のSOLAS条約はその後もIMOで改正作業が続けられ、新しく1974年のSOLAS条約として調印された。更にこの条約の再改正である1978年の議定書の第5章12規則によって、1,600GT以上のすべての船舶に航海用レーダー(1台)を、また10,000GT以上の船舶には2台のレーダーを装備しなければならないことになった。1974年のSOLAS条約が昭和55年5月24日に発効するのに伴って、船舶安全法と電波法の関係法令が改正された。
〔電波法の一部を改正する法律(昭和54年法律第67号)
*船舶設備規程等の一部を改正する省令(昭和55年運輸省令第12号)
*電波法施行規則の一部を改正する省令(昭和55年郵政省令第12号)
*無線設備規則の一部を改正する省令(昭和55年郵政省令第15号)
*船舶等型式承認規則の一部を改正する省令(昭和55年運輸省令第14号)
*無線機器型式検定規則の一部を改正する省令(昭和55年郵政省令第20号)〕
 その改正内容を整理すると以下のとおりである。
(1)予備を含めて2台のレーダーを装備する船舶が1978年の議定書に合わせて「長さ200m以上の船舶」から「総トン数10,000トン以上の船舶」に改められた(船舶設備規程の改正)。
(2)電波法が改正〔電波法の一部を改正する法律(昭和54年法律第67号)〕されて、船舶安全法によって船舶に備えなければならないレーダーは型式検定に合格したものでなければならないことになった。ただし、郵政省令でその除外例が設けられることになっている。
(3)1974年のSOLAS条約に応じてIMO規格のレーダー(甲種・第1種)が1,600GT以上のすべての船舶に装備することが強制されるようになった(船舶設備規程の改正)。
(4)電波法の側の性能要件中で、トルーモーション表示の場合には距離測定精度などの規定が適用除外になっていたのを適用するように改め、また、そのときの方位測定精度の適用除去の文章も、船舶安全法のものと合わせた。更に電波法の距離分解能の規定に「最小レンジにおいて」という条件が加えられた。(無線設備規則第48条の改正)
(5)無線設備規則で性能要件が規定されているレーダーは三種類(第1種、第2種及び第3種)になった。すなわち、旧規則では郵政省告示で性能要件が規定されていたレーダーのうちの旧第3種の(i)のレーダーを規則の中に取り入れてそれを第2種とし、旧第2種が第3種となった。また、告示によるレーダーをそのため第4種と改めた。なお、従来から各種のレーダーの船舶への適用に関する条文は告示で定められていたが、これを規則の本文中で規定するよう改めた。(無線設備規則、第48条および無線機器型式検定規則の改正)
(6)(5)の結果、新しい第2種レーダーの性能要件が無線設備規則の中に規定された(同上)。
(7)(2)項にあげた郵政省令による型式検定の除外例として
(i)外国において検定規則で定める型式検定に相当する型式検定に合格しているものと郵政大臣が認めるもの
(ii)船舶安全法第6条の4の規定による型式承認を受けたものをあげ、また一方、運輸省では、船舶等型式承認規則の「運輸大臣の行なう型式承認を受けなければならない」という規定に、「電波法第37条の規定により郵政大臣の行う検定に合格した航海用レーダーの型式については、この限りでない」と除外例を設け、その場合の型式承認手数料の割引をして、運輸、郵政両省の相互承認の形をとることになった。(電波法施行規則第11条の5と船舶等型式承認規則第6条と別表の改正)







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