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吟剣詩舞の若人に聞く 第65回 特別編
石川和男さん
 
中村智美さん
 
高橋博之さん
 
清本裕美さん
 
(吟詠)
石川和男さん(三十一歳)●埼玉県新座市在住
師(宗家):石川春洋さん(春洋流東洋吟詠会二代目宗家)
中村智美さん(二十歳)●東京都北区在住
師(宗家):白男川洌風さん(詩吟洲風流宗家)
(剣舞)
高橋博之さん(二十七歳)●埼玉県新座市在住
師(宗家):林 神宗さん(神宗流総本部二代宗家)
(詩舞)
清本裕美さん(二十七歳)●東京都小平市在住
師(会長):榊原静慧さん(静山流静慧会会長)
 
四人の個性は違えども、目指すは上達の一点
 石川さん、中村さん、高橋さん、清本さんへのインタビューは、去る八月二十八日に行なわれた東京都幼少青年吟剣詩舞発表大会にお訪ねして収録したものです。発表前の慌ただしい中にありながらも、吟剣詩舞について、いろいろお聞きしました。
 
――皆さんは、どんな切っ掛けで、いつ頃から吟剣詩舞を始められましたか?
石川「うちは春洋流東洋吟詠会の総本部でして、祖父が吟詠会を立ち上げた初代宗家です。その関係から、私が母のおなかにいる頃から吟詠を聞いていまして(笑)、それから何の違和感もなく詩吟の世界に入りました」
中村「私も祖母が詩吟の先生をしていましたので、お弟子さんたちが大きな声を出して歌っている姿を見て、面白そうだなと思い、九歳の頃から始めるようになりました。」
高橋「はじめ詩吟を習っておりましたが、吟詠の大会で剣舞を見てやりたくなり、剣舞を習っている間に詩舞もやるようになりました。吟詠から剣詩舞に変わった理由は、舞台に出て舞うことに興味がありましたし、刀にも大変興味があったからです」
清本「詩舞は五、六年前から始めました。それ以前はバレーをしておりました。たまたま、大学のときに詩舞を見て感動し、また母がずっと詩舞を習っておりましたので、私も始めてみようという気になりました」
――吟詠を続けている理由は何ですか?
石川「うちの大会には家族吟という番組がありまして、小さな頃からそれを続けてきましたが、その流れで今日まで来ている感じです」
――心変わりはありませんでしたか?
石川「吟詠はうちの家業ですし、祖父に大変かわいがられましたから、その姿を継承してゆけたらと思っていました。それにお弟子さんもいますので、その人たちに応える意味でも続けてきました」
――吟の魅力は何でしょうか?
石川「昔の偉大な詩人が作った詩に触れられる喜びとでもいいましょうか、人生観など勉強になる点が多いことです。財団が詩心を重視されることが良くわかります」
中村「大きな声を出しながらも、声で詩心を表現すること、難しいですが、それはまた楽しさでもあります」
――これからの吟詠に対するテーマはありますか?
中村「青年の部になって皆さんうまい人がたくさんいて、詩心表現が上手なので、自分も、少しでも上手に表現できるようにがんばっていきたいと思っています」
――高橋さんの剣詩舞の魅力をお聞かせください?
高橋「魅力とは少し違いますが、コンクールに出て入賞することが嬉しく、それで続けてきたように思います。それに加え、最近では技術的な向上と、自分の舞が見ている人に伝わったときの喜びも続けている原動力だと思います」
――技術的向上といいましたが、得手不得手は何でしょう?
高橋「得意な点は、割と器用なタイプだということでしょう。ただ、人の振りを見てまねはできますが、例えば間合いなど、まねのできない部分は、他の人と比べてうまくない、不得手かなと思います」
――清本さんにとって詩舞の魅力は何でしょう?
清本「いろいろ踊りがある中で、詩舞は奥が深いと思います。詩吟にも意味がありますし、舞にも意味があって、その感情を表現するところが難しいのですが、それができるようになったときの喜びは、楽しいといいますか、何物にも代えがたいものです」
――中村さん以外は、皆さんつい先頃行なわれた第二回青年吟剣詩舞道大学に参加されたメンバーですが、受講されていかがでしたか?
石川「若い人があれだけ多く集まるのは、刺激があって楽しかったです。吟剣詩舞についていろいろ話し合い、詩吟をしていると結婚できないという話まで出て、面白かったです」(笑)
――なぜ結婚できないの?
石川「相手が、詩吟をしていることを知ると、引いてしまうからです」(爆笑)
高橋「他流の若い人があれだけ集まることはめったにありませんし、楽しませていただきました。ただ、剣詩舞の講義でいえば理論的なことも大切ですが、もう少し実技の時間があってもよかったのかなと思いましたし、私は一人部屋でしたから他の参加者との交流が少なかったことも残念でした」
清本「他の流派の方々と一緒になることは、あのときが始めてくらいで、素晴らしい方とお知り合いになれたので、参加してよかったと思っています。アンケートにも書きましたが、あのような企画は、また行なっていただきたいです」
 
インタビューに答える左より石川和男さん、中村智美さん、高橋博之さん、清本裕美さん
(大会が開かれた東京都北区赤羽会館で)
 
――中村さんは、そのような場があれば参加しますか?
中村「楽しそうなので、次回は参加してみたいです」(笑)
――最後になりますが、皆さんの今後の豊富などがありましたら、お聞かせください。
石川「自分は少壮吟士に目標を置いているのですが、仮に少壮吟士になれなくとも、その目標に向かって自分なりの吟詠を研鑽し、ひとつでも上を目指すように努力していきたいと思っています」
――若い人たちの吟詠離れについてはいかがですか?
石川「もっと純粋に、詩の素晴らしさや吟詠の音楽的な美しさなどをアピールすれば、理解してくれる若い人たちはいると思いますし、そのための努力が自分も含めて、足りないように感じています。吟詠と触れる機会を多くすることが大切でしょう」
――中村さんの抱負は何でしょうか?
中村「今の自分の吟詠は五十点くらいですから(笑)、これからも一生懸命に練習して、若い人たちの集まりがあれば参加しながら、いろいろな方の吟詠を聞いて勉強させていただきたいと思います」
――高橋さんはいかがですか?
高橋「目標は、舞の表現が自分でも満足できるレベルのもので、しかもお客様に詩情が伝わる舞台が、一つでも二つでもできればと考えています。本当に舞台に立つことが好きですから」
――最後に、清本さんお願いいたします。
清本「感情豊かに表現できるように、日々のお稽古を大切にしながら、人に感動をあたえられるようにがんばりたいと思いますし、感動していただいたときの喜びは大きく、これからも詩舞を続けていきます」
――本日はインタビューにお答えいただきありがとうございます。本日の舞台の成功をお祈りしております。


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