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平成十六年度少壮吟士並びに同候補夏季吟詠特別研修会
日時:平成十六年八月七日(土)〜八日(日)
場所:湘南国際村センター・国際会議場
少壮吟士としての自覚と責任を説かれる
財団を代表してあいさつする河田和良会長
 
 八月七日(土)、送迎バスが湘南国際村センターへ到着すると、その足で一行は国際会議場へと向かいました。矢萩保三事務局長から事務局通達がなされたあと、財団常任理事会役員、少壮吟士候補に付き添われてきた特別参加の宗家、会長が紹介されました。そして、大澤雅翠さん、後藤娟桜さん、辻本水晴さん、田中国臣さんの少壮吟士候補四名が、宗家、会長から吟詠への真摯な取組み方や人となりを紹介されました。今年は四名の少壮吟士候補を出し、活気づいた雰囲気の紹介でした。
 
河田和良会長はじめ常任理事会役員の皆さん
 
 つづいて河田和良財団会長が挨拶と「吟剣詩舞道憲章」を解説され、少壮吟士の「自覚と責任・芸道における心構え」を強く説き、吟界のリーダーとして心技体の充実を皆さんに求められました。そのあと、鈴木吟亮専務理事による「吟剣詩舞の向上と指導者の役割」、工藤龍堂常任理事による「吟道における師のあり方、弟子のあり方」、また多田正満理事の「剣詩舞道家からの期待」と題した講義があり、「少壮吟士は厳しい勉強を経て、伝統芸道を正しく伝える責務がある」「宗家、会長を尊敬する気持ちを大切に」などと語られ、それぞれに極めて重要な内容で、参加した少壮吟士の面々も真剣な面持ちで聞き、ノートをとっていました。
 紹介と講義が終了すると、増田鵬泉吟士がテスト用に録音した吟詠テープを聴き、発声やアクセントについての意見交換会が行なわれました。やはり発声やアクセントは吟詠にとって重要な要素であり、それだけに皆さん活発に意見を交換していました。
 
声の響かせ方の実技指導を受ける塚本白光吟士
 
個人演習で舩川利夫講師の指導を受ける中尾仁泉吟士
 
 夕食後は、舩川利夫先生の厳しくも愛情溢れる指導で有名な実践形式の吟詠演習が待っており、少壮吟士も先生の迫力に少し気後れ気味?。しかし、先生の的確なご指導は即効性があり、指導前と指導後の吟詠の違いには、いつもながら大変驚かされ、また少壮吟士の皆さんも納得した表情で聞き入っていました。
 八月八日(日)は、チェックアウトを済ませると「吟詠演習」その三、その四があり、前日と同様にきめの細かな指導を受けられました。そして、課業が終了すると、研修会閉講式が行なわれ、短い時間ではありましたが、一泊二日の充実した研修会が無事に終了いたしました。
 送迎バスに乗り込み岐路へ向かう一行は、さらなる精進、研鑽を積み、吟界のリーダーの名に恥じない、より素晴らしい少壮吟士を目指すことでしょう。
 
第二十八回全国高等学校総合文化祭
「藍色の創造の風渦となれ 2004徳島」
日時:平成十六年八月三日(火)
場所:阿南市市民会館
阿波の地に見る、若人の凛々しさ、清々しさ
 台風の10号の影響で運営が危ぶまれた今回の大会でしたが、会場は早朝から開始に合わせて高校生たちが走り回り、直前まで準備に余念がありませんでした。定刻の午前九時二十分に、司会が元気よく挨拶をすると、開会式が始まりました。まず、白土方紀岩手県立大東高等学校校長が挨拶に立ち、「吟は人なり、気なり、心なり」の精神で、日ごろの成果を遺憾なく発揮するよう、エールを送られました。つづいて、徳島県立阿波高等学校三年の赤松順子さんが高校生を代表して、練習した姿を見てほしいと宣言しました。その後、大岡慶久徳島県立阿波高等学校校長、岩佐嘉仁阿南市長がそれぞれ挨拶され、阿南市の魅力や吟剣詩舞の意義などを語られました。最後に財団法人日本吟剣詩舞振興会の椎野瑞城理事がお祝いのことばを述べられました。
 
大会後、講評をされた椎野瑞城氏
(徳島県吟剣詩舞道総連盟理事長・財団理事)
 
生徒実行委員長の赤松順子さんの挨拶
 
 開会式が終了すると、吟詠剣詩舞部門が披露されました。一番に登場した高校は奈良県高等学校文化連盟吟詠剣詩舞部会(以降、県名のみ、出演順)で、居合いを交えた吟剣詩舞を発表しました。次に、出場八年目を迎えた岐阜県がつづき、香川県は十年ぶりの出場で、初出場の高校が初々しい書道吟を披露しました。山梨県からは常連の日本航空高等学校が出場、神奈川県は文化連盟吟詠剣詩舞部会が創立六年という浅い歴史ですが、よくがんばっていました。千葉県は武道の歴史と伝統を吟剣詩舞で表現し、石川県はふるさとを題材にして発表。愛知県は「頼山陽」をテーマにし、鳥取県は連続十年の出場を果たしました。熊本県は七人のメンバーの息が合っており、富山県はわずか五人ですが、懸命の舞台でした。愛媛県は「月」をテーマにした舞台で、福岡県は構成吟「夢」を披露。岩手県は何度聞いても感動する「雨ニモ負ケズ」を今年も披露してくれました。栃木県は全国総文祭への出場が参加校の中でも非常に多く、自信のある舞台を展開しました。福井県は前回開催県として立派な吟剣詩舞を演じ、大分県は国際観光温泉保養地「別府」にまつわる詩歌を選出。青森県は二回目の出場で、構成吟のテーマを「吟詠剣詩舞に親しもう」としました。最後に、地元徳島県は「美し国・阿波」と題し、豊かな自然と人情あふれる阿波の国・徳島を感じさせる舞台でした。舞台の最後には、おなじみ阿波踊りも登場し、会場を大いに沸かせました。
 
岩手県高等学校文化連盟吟剣詩舞専門部による
合吟「岩手富士」(ふるさとの山)から
 
福岡県高等学校吟剣詩舞部会の構成吟「夢」の
第二部「名槍日本号」から
 
鳥取県高等学校文化連盟吟詠剣詩舞会全員による唱歌「ふるさと」から
 
 舞台表現の技術的に優れた県が多く見られましたが、いずれの高校生も吟詠剣詩舞と真摯に向き合い、がんばっている姿が胸を打ち、感動的でした。やがて、この高校生の皆さんが伝統芸術である吟詠剣詩舞を支え、日本の心をこれからも継承してくれることを祈るばかりです。
 全十九団体すべての舞台が終了すると、財団法人日本吟剣詩舞振興会の椎野瑞城理事が講評に立たれ、高校生の手でここまでやれたことに感銘を受けたこと、若い力の台頭に感動された旨を述べられました。そして、フィナーレには、次回開催県である青森県が登場し、開催の抱負などを語られました。
 伝統芸術に親しむ若い力。吟剣詩舞界にとって大切な財産ともいえる彼等を育んでいくのは、大人である私たちの責務だと強く感じた全国高等学校総合文化祭でした。


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