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新進少壮吟士大いに語る
第九回
中武岳玲さん=宮崎県宮崎市在住
(日本詩吟学院岳風会宮崎岳星会)第二十五期少壮吟士
塚本白光さん=愛媛県松山市在住
(吟道賀陽伝日本白潮流)第二十五期少壮吟士
 
中武岳玲さん(左)と塚本白光さん(右)
 
詩吟を好きという気持ち。
そして家族の支えが、今日をつくった
 昨年、少壮吟士になられた中武さんと塚本さん。吟詠が根っからお好きなお二人ですが、少壮吟士までの道のりやご家族のこと、また吟詠のことなどをお聞きしました。
 
――少壮吟士に挑戦されて、何年ほどかかりましたか?
中武「私の場合は六年ほどかかりました。二十六回の大会が初挑戦で、二十七回、二十八回と続けて入選し、そして三年後の三十一回目に晴れて少壮吟士候補にならせていただきました」
塚本「中武さんのように、何回目かはわかりませんが(笑)、短期間になれたわけではありません。年数でいくと、平成五年に一回目を通りまして、それから平成十年、十五年にそれぞれ入選し、少壮吟士にさせていただきました。五年刻みで通過しました(笑)。最初の挑戦からですと、十数年かかりましたが、欲がなかったと申しましょうか、全国大会へいくことが楽しみで、それだけで挑戦していたように思います」
――少壮吟士に挑戦されたきっかけは何ですか?
中武「詩吟は小学生の頃からしておりましたが、青年の部に出て以来、結婚などもありましてコンクールから遠ざかっていました。少壮吟士を受けられる歳になっても、違う世界のことのように思え、三年ほど出ようかどうしようか迷いましたが、昔、いっしょに勉強した方々が月刊『吟剣詩舞』に少壮コンクールを通過してお写真が載ったのを見まして、私もやってみようかと決心しました。それがきっかけです」
塚本「流派内の師範の方々が、少壮吟士に挑戦するというのを聞きまして、私も子育てなどが一段落しておりましたから、少壮吟士というだけですごいというイメージを持っていましたが、受けてみようかと思うようになりました」
――少壮吟士になられる前の、少壮に対する印象はいかがでしたか?
中武「常に第一線で活躍なさっている先生方ですから、特別な存在という感じでしたし、憧れでした。自分が少壮吟士を受けられるというのが、初めはピンときませんでした」
塚本「中武さんと同様に雲の上の存在でしたが、日本武道館の全国吟剣詩舞道大会などで、女性陣が青い着物を身に付けて登場するのを見るにつけ、あれが着られたらいいなという気持ちでした」(笑)
――コンクールを受けていた期間を振り返っていかがですか?
中武「一回目はプレッシャーのために平常心がなくなってしまい、宇宙遊泳をしているようでしたが、次の年とその次の年は無事に入選しました。でも、三回目のときはすごいスランプに陥り、詩吟人生最大の危機といってもいいほどのものでした(笑)。調子が悪いので普段よりも練習をするのですが、すればするほど声が出なくなり、一年間悪い調子が続き、決選大会の三日前にまったく声が出なくなってしまいました。それで吸入器を抱えてコンクールに出る始末でした。前日ホテルの部屋で吸入器を吸っていたら、少しは声が出るようになり、舞台では不思議と声が出ましたが、見事に落ちました。次の年は、会長の坂本岳雄先生が付いてきてくださいましたが、この時も駄目でした(笑)。でも、まだまだ先があるのだから、がんばりなさいと励まして下さいました。そのお気持ちが嬉しくて、会長のご恩に報いるためにもがんばろうと思いました」
塚本「時間がかかりましたが、その間を苦節とかいう感じはありませんでした。オリンピックではありませんが、挑戦することに意義があると思っていましたから、入選しても、『えっ!』という感覚でした。また、全国大会へ行けると思うと、なぜか体調を狂わしてしまい、主人がいうには体調さえよければ通過できるのではないかというほど、調子を落としてしまいました。二回目などは、大会前日まで声が出ず、当日吟題の抽選で引いた詩文がたまたま静かなもので、声を張りたくても張れませんから(笑)、そのまま静かにやったのがよしと認められて入選したようなものですね。運がいいのでしょうか」(爆笑)
 
中武岳玲さん
 
塚本白光さん
 
――お二人とも、ご家族が協力的ですね?
中武・塚本「はい、そうです」
中武「主人の協力のおかげと感謝しています」
塚本「主人、家族の協力があればこそと思います」
――お二人にとって、吟詠とは何でしょうか?
中武「詩吟のない生活は考えられません。詩吟がなくなったら、どうなるのだろうと思います。なんで、そう思うのか考えますと、やはり詩吟が好きなのですね。車の中でもずっと詩吟のテープとかCDとかを聞いているので、主人が車に乗ると詩吟しかありませんから、何とかしてくれといいます(笑)。でも、私は詩吟を、どれだけ聞いてもあきませんし、本当に好きとしかいえません」
塚本「私も根っから詩吟が好きだと思います。主人は、私から詩吟を取ったら、何も残らないといいます」(笑)
――少壮吟士に挑戦している人へ、経験を通してのアドバイスがありましたらお願いします。
中武「他の皆さんもおっしゃっていますが、努力に勝るものはなく、努力の結果として少壮吟士があると思います。先ほど塚本さんが運といいましたが、その前に精いっぱい努力なさっており、それに多少の運がプラスされたのだと思います。努力なくして少壮吟士はつかめないし、努力すればおのずと結果もついてくるものです。ただ、経験から言うと、頑張りすぎて声を駄目にすることもありますから、そういう時は休む勇気も必要だと感じています」
塚本「私も努力は必要だと思います。そして、私の場合は五年間隔で通りましたから、経験的には焦らずにやってほしいと思いますが、年齢的なものもありますから、焦らずにというのも無理な話かもしれませんね(笑)。また、体調が悪いときなどは無理に声を出さず、吟詠テープなどを聴いて、イメージトレーニングをするのもよいと思います」
――最後に、少壮吟士としての抱負などをお聞かせください。
中武「ひとつひとつが新しい経験で、ビックリすることばかりなのですが、皆さんの足を引っ張らないように(笑)、一日も早く少壮吟士として認めていただけるように一生懸命やりたいと思います」
塚本「頑張ることはもちろんですが、そればかり考えていると肩に力が入ってしまいますから(笑)、力を入れ過ぎず、足を引っ張らないようにやりたいですね」
――今日はインタビューにお答えいただきありがとうございます。これからのご活躍を期待しております。


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