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(3)沖ノ鳥島サンゴ礁生態系の現状と活性化の方策
 以上の今回の調査研究結果及び本年3月に行った第一回視察における調査結果等を基に、沖ノ鳥島サンゴ礁の現状を推測し、さらに、その現状に基づく活性化方策を検討した。
1)沖ノ鳥島サンゴ礁の現状
  写真2には、2回の視察団で実施した調査研究結果等を基に、沖ノ鳥島サンゴ礁生態系を形成していると考えられる構成生物を示した。また、図5には、サンゴ礁生態系の模式を示した。
 沖ノ鳥島サンゴ礁の基礎生産を多くを担っているのは、大気中のN2ガスを利用して光合成活動が行えるピコシアノバクテリア及び付着性糸状藍藻と考えられる。ピコシアノバクテリアは海中でプランクトン生活し、付着性糸状藍藻は表7及び写真2(1)に示すように、サンゴ由来の岩礁や礫等に付着して底生生活を送っている。沖ノ鳥島サンゴ礁においては、海水中の生物は流れによって短時間に礁外へ流出すると考えられることから、両者の内でも主体はOscillatoriales(オシラトリア目)の糸状藍藻であろう。なお、一般的に、健全なサンゴ礁における主要な基礎生産生物は、サンゴや有孔虫に共生する褐虫藻である。しかし、当海域においては、海水中の栄養塩濃度が極めて少なく、現状では褐虫藻による基礎生産量は少ないものと推定される。また、写真2に示した他の付着藻類及び付着性渦鞭毛藻、さらにはマクロな海藻の生産性も少ないと予想される。
 これら推測は、同時に行われたサンゴ及び海藻の観察結果で、種類や分布数が少なかったと報告されていることでも裏付けられていると考える。
 よって、沖ノ鳥島サンゴ礁の現状は、大気中のN2ガスを利用して光合成活動を行うOscillatoriales(オシラトリア目)の糸状藍藻が生産した限られた有機物、それに礁外から供給される低濃度の栄養塩を利用して限られた光合成活動を行うサンゴや有孔虫に共生する褐虫藻及び他の付着性藻類が供給する有機物を基礎とする活性の低いサンゴ礁と位置づけられる。
 
表7 底生微小藻類出現種リスト
CYANOPHYCEAE Chroococcales
Oscillatoriales
DINOPHYCEAE Amphidinium spp.
Prorocentrum lima
P. emarginatum
P. concavum
Sinophysis sp.
Gambierdiscus toxicus
BACILARIOPHYCEAE Fragilariopsos sp.
Entomoneis sp.
Cocconeis sp.
Navicula spp.
Licmophora sp.
Achnantes sp.
Nitzschia spp.
Campylodiscus sp.
Cylindrotheca sp.
Rhabdonema sp.
Trachyneis sp.
 
写真2(1) 沖ノ鳥島サンゴ礁生態系主要構成生物,光合成生物
 
微小藍藻(赤い点)
 
微小藻類群(緑色部分)が付着するサンゴ石
 
付着している糸状藍藻を主体とする微小藻類群
 
糸状藍藻SEM写真
 
付着珪藻
 
付着珪藻SEM写真
 
付着渦鞭毛藻
Prorocentrum lima
 
付着渦鞭毛藻
Prorocentrum lima SEM写真
 
付着渦鞭毛藻
Ganbierdiscus toxicus







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