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 今回二日間で礁池内を西側から3分の1ほどの距離を泳いで海底を観察しましたが、南東側からの強い波浪によりサンゴ礫が北側礁嶺部を超えて北側礁縁部にかけて落ちていっているのではと考えられます。
 常時流れる南からの強い潮の流れで水路から北小島の東側を通り、西側の礁嶺部を越えてさんご礫が強い力で、礁縁部に沿って押し流されているために礁池内にサンゴ礫の体積物が少ないものと考えられます。
 
 
 
 現在、流れ出てしまっているサンゴ礫を利用して、砂礫が堆積するようにコンクリートで構造物を作り、これをビーチロック化して島の一部を形成する実験を試みる計画を実施する事は日本の排他的経済水域を維持するためにも必要ではないでしょうか?
 過去のサンゴ移植基盤を拝見すると、天井上部の移植した珊瑚は波浪等で折られて育っていないものと推定しますが、横側に移植したミドリイシやハナヤサイサンゴはある程度育っているので、沖ノ鳥島のリーフ内の至る所に点在する、砂や礫で削られた平らな岩盤地形には、突起状の構造物を点在させて現在の岩盤地形を変えない限りサンゴの早期回復は望めないと考えられます。
 
 
 
 
 
 
 
 南側のリーフエッジの一部に下に向かって穴が開いている場所がたくさんあるのでこの中を2箇所潜って調査をしてみました。水深5メートルから10メートルに斜めに形成された巨大なポットホールだと言うことが確認できました。
 
 
 
 
 どれだけの年数をへてこれだけのものが出来たのかは、今後の調査を待たないと判りませんが、この巨大なポットホール(サンゴ片が波の力により掻き回されることにより、凹んだ一箇所のサンゴ礁を削り取り穴が開く現象)の穴の為にサンゴの幼生が強い潮流で外海に運ばれないでこの中に留まるため、ポットホールの北側に当たる斜面にはたくさんの種類のサンゴが生育しているのが確認されました。
 この例からもサンゴ幼生を大量に着床させるには、サンゴが産卵した後、卵やプラヌラ幼生等を南東側に走る強い潮流でリーフアウトに押し出されることが少なくなるように、卵が着床しやすい場所を新たに設置する必要があると考えられます。
 
終わりに
 今回の調査で、サンゴ礫が北小島の東側を流れ、北側礁原部にたくさん堆積しているのを確認しましたが、このサンゴ礫はそのまま北に走る強い潮流によってリーフアウトに出ているものと考えられるので、このような場所が他に見当たらないか北側のリーフエッジ沿いに西から東の端まで調べ、サンゴ礫がリーフアウトに流れている場所があれば、そこを何らかの工法で止めることにより、サンゴ礫やサンゴ砂の流出がこれ以上行われないように止める調査が必要と思われます。
 その調査と簡易実験により沖の鳥島に新たな砂浜を形成することが可能か?沖の鳥島の陸地化形成が成功するのかの判断確率が上がるものと考えられます。また、サンゴは98年の白化以降は順調に育っているものと考えられるが、現在の状況ではリーフ内の平坦な海底地形によりサンゴの幼生が着床できにくいものと考えられます。
 この為、何らかの構造物で潮の流れを弱め、サンゴが着床しやすい岩盤形成を礁池内に点在させテストする必要があるものと考えられます。
 最後に太平洋の彼方1,740キロに位置する絶海の孤島に上陸でき、天候にも恵まれ、新たな調査の機会を与えてくださった日本財団に厚くお礼申しあげます。







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