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4 山の寺子屋 in 遠山郷2003
(1)霜月祭り体験ツアー
 遠山天満宮の霜月祭りは一部の舞については、参拝者も参加可能となっており、17戸という小さな集落の中でも祭りを続けることが可能となった。そのため、地域外の参加者が増加することとなり、その活動をさらに広げるため、町や観光協会では、平成11年度から一泊二日の霜月祭り体験ツアーを開催している。
 これは、遠山郷の伝統・文化・歴史・祭り・暮らし・水などの魅力を一人でも多くの人に見て体験してもらい、将来にわたり遠山郷がますます元気になること、そして多くの人たちがこの地を訪ねることによって、この地で暮らす人も旅人も同じ目線で遠山郷に愛着を持ってもらうことを目的としている。
 
(2)山の寺子屋 in 遠山郷2003の内容
(1)日時 平成15年12月23日(火)〜24日(水)
(2)場所 南信濃村
 宿泊場所は天満宮近くの貸民家・集会所。(旅館・民宿への宿泊も可能)
(3)参加費 参加費:大人8,000円(税込・中学生以上)
 (1日目の夕食・直会代、2日目の朝食・昼食代、体験代、資料代、かぐらの湯入浴代、保険代等含む)
(4)スケジュール
(12月23日)
13:00 集合後、オリエンテーション・遠山郷土館和田城・盛平山龍淵寺等見学
15:00 国重要無形民俗文化財「霜月祭」見学・体験
18:00 霜月祭の食事体験(村民、ツアー参加者合同)
24:00 霜月祭終了(終了後直会に参加)
 
(12月24日)
9:00 朝食後、遠山天満宮出発
10:00 旧木沢小学校木造校舎にて1日体験入学
12:00 教室にて給食、交流会
14:00 かぐらの湯入浴・解散
 
※12月22日夕方から現地に宿泊し、23日早朝からお祭りの準備を手伝うボランティアも参加していた。
(村の住民と一緒に社殿の飾りつけ・若水汲み・直会の食事作り等)
 
(3)旧木沢小学校への一日体験入学
 南信濃村の木沢地区に現在は廃校となっている旧木沢小学校の木造校舎がある。昭和5年の地区の大火で旧校舎が焼失した後に、村民総出で資金調達を行い、山から木材を切り出し、昭和7年に建てられたものである。
 また、この小学校には、子どもが卒業した後もPTA会費を払い続け、過疎化の進行の中でも、PTAを維持するという習慣があり、地区内の住民が協力し合って、自らの事業を行う象徴的な存在であった。
 過疎化による小学校の廃校後は、木造校舎はごみだらけになっていたが、この校舎を残そうと立ち上がった人々が中心になって、「木沢活性化プロジェクト」を設立し、貴重な財産である旧木沢小学校木造校舎の全面補修の計画、再生活用の実現をめざし、イベント(野外コンサート、山の写真展、霜月祭りの写真展、森林鉄道に関わる展示等)の場として活用や、作品展示等を行っている。
 今回の一日体験入学も町の霜月祭り体験ツアーと連携したもので、遠山郷の文化や歴史、暮らしなどを学ぶものであった。
 
(時間割)
 
進行 内容
全校朝会 校長朝礼、先生方の紹介
ラジオ体操 全員でラジオ体操第1
1時間目
(社会)
・ 木沢小学校について
・ 遠山川の埋没林について
・ 森林鉄道について
・ 霜月祭りについて
             等
2時間目
(音楽)
木沢小学校校歌 等
掃除 校内の清掃
給食 地元産の食材を使用した昼食をいただきながら、交流会。
終わりの会 各人に10年後に配達される手紙の作成。
生徒全員に通知表配布。
記念撮影。
 
6 感想等
○南信濃村の遠山天満官の霜月祭りの大きな特徴は、参加型の祭りであり、例えばお面をかぶって、簡単な舞いをやるというものに体験ツアーの参加者や一般の参拝者も加わっている。つまり、これを一つのきっかけにして、開かれた祭として、皆一緒に祭を楽しんでいこうというような形になっている。もちろん宗教的な意味もあるが、どちらかというと非常に楽しむという印象が強い。例えば、「神太夫(猿田彦命)、姥(金田目女神)」(「しょんべんじいさ」と「しょんべんばあさ」)も盛んにふざけており、非常に楽しむ、開かれた祭というふうな感じがした。
 それから、いかにも山村の芸能らしく、舞いなどもとてもダイナミックであり伴奏は太鼓のみであった。あとは自分たちの持っている鈴以外には楽器はない。また、小さな神社であり、舞う場所も狭く、太鼓の人たちは高いところに囃子段のようなものが作られており、そこで太鼓を打っていた。
 
○体験ツアーの参加者たちも、この村の人たちと一緒に夕食を食べたり、それから直会の食事も一緒に食べたりという場が、神社のすぐ隣の家や、あるいは神社の中に用意されていたりして、村内外の人々の交流の時間もあった。
 またそれには、子どもたちも参加していた。
 
○仮眠所や村営の宿泊所が確保してあるのはありがたかった。
 
○わずか17戸の小さな集落が力を合わせてかろうじて維持してきた祭りなので、祭りの前日から泊まり込んで神社のしめ縄作りをしたり、祭りの食事を作ったり、掃除をしたりと大活躍していたボランティアの若者の活動は非常に有効だった。都会からきた若者たちにとっても伝統文化に触れる良い機会であった。
 
○木沢小学校の一日体験入学については、今回のツアーの参加者全員が、校長や各教科の先生、給食係などの役割を与えられており、ただ見たり聞いたりするだけでなく積極的にイベントに参加する必要があるため、皆一体となり盛り上がった。
 授業は社会と音楽であり、社会の授業というのは木沢小学校の歴史等の話で、音楽のほうは、校歌等を歌ったりしたが、全体的に非常にユーモアあふれるものであった。例えばラジオ体操を校庭で行ったが、伴奏のテンポが急に早くしたり、遅くしたりしょっちゅう変えたりする、いたずら心がいっぱいであり、皆、笑い通しであった。スタッフの方の皆を楽ませようとするいろいろな試みは非常に感心させられた。ユーモラスで、いたずら心いっぱいの地域おこしも、一つの活力かなと感じた。
 
○南信濃村には後藤総一郎氏という民俗学者がおられ、遠山常民大学を開いていたこともあり、村の伝統についての意識が非常に高いのではないかと考えられる。だから、旧木沢小学校の保存についても、ただ、廃校しないようにという運動ではなくて、明るく盛り上げていくという点が非常におもしろいといえる。
 
○古くからの祭りの堅く伝統を守っている姿を見てもらうというのもよいが、地域おこしという観点からは遠山天満宮のように、非常に戸数が少なくなったようなところは、体験型の祭りを実施するなど、ある意味でこのような開かれた形もあり得るのではないか。それにより、外部の人も見学に来るようになり、地元の人にとってもまた励みになる。さらに自分たちの持っているものは大切なものなのだということを再認識することにもなる、新たな交流も生まれてくるので、非常におもしろい試みであると思う。


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