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I 調査研究の概要
I-1 調査研究の目的
 流出油事故においては、油防除資機材以外にも、強力吸引車などの一般資機材が実際の流出油事故などで防除作業に使用され、その有効性が確認されてきているが、これら一般資機材の性能・能力については、いまだ正確に把握されていないのが現状である。
 また、個々の油防除資機材の調査研究に基づいた流出油事故対応のための防除手法については、ある程度確立されているものの、油防除資機材・一般資機材の性能・能力のほか民間防除勢力を有機的に組み合わせた複合的な防除手法についてはいまだ確立されておらず、実際の流出油事故への対応を考えた場合、このような複合的な防除手法が不可欠なものとなっている。
 このため、本調査研究では、油防除資機材の複合的な使用方法、及び強力吸引車などの一般資機材の調査研究を行うとともに、ナホトカ号油流出事故時に活躍したような民間防除勢力に関する調査研究を行うことにより、これらを有機的に組み合わせた複合的な防除手法を確立することを目標とする。
 平成15年度は、複合的な防除手法に関する調査研究の一環として、これまでの油防除資機材等の開発及び防除措置の流れについて整理を行ったほか、実海域における流出油防除実験を念頭に置き、流出油防除シミュレーションの実施による流出油の挙動等に関する調査、航空機用油処理剤散布装置の実機実験等を実施した。
 今年度も実海域における流出油防除実験に向け、実証等が必要とされる事項について、引き続き調査研究を行うとともに、これまでに海上災害防止センターで取り組んだ油防除に関する調査研究事業の集大成として、油防除措置に関する資料を収集・分析し、「流出油事故対応防除マニュアル」を作成する。
 
I-2 調査研究の項目
1 円筒形簡易油水分離装置の試作及び実用化実験
 流出油事故現場で簡易な方法により回収した混合油水から油分を効率的に分離して回収するための手段を確立するため、円筒形簡易油水分離装置を試作し、大型実験水槽及び海上において実用化のための実験を実施する。
 
2 スキマー簡易洗浄システムの試作及び実用化実験
 流出油事故現場で簡易な方法によりスキマーの内外部を洗浄するための手段を確立するため、平成15年度に引き続いて、スキマー簡易洗浄システムを試作し、実用化のための実験を実施する。
 
3 国内の油防除訓練の調査
 国内の油防除訓練に参加し、実海域実験の計画の立案に必要な事項についての情報を収集する。
 
4 民間防除勢力に関する調査
 民間防除勢力に関する調査として、油流出事故によって汚染された海鳥類の救護活動における、ボランティア等の民間防除勢力の役割について調査を行う。
 また、あわせて契約防災措置実施者に関する調査を行う。
 
5 シミュレータによる海上流出油の模擬油防除訓練
 実海域における流出油防除実験計画の策定を行うため、平成15年度に引き続いて、流出油防除訓練用シミュレータを用いて、実海域実験で用いる油種、流出油量等のデータ及び具体的な防除手法を用いて拡散及び防除シミュレーションを実施する。
 
6 流出油事故対応防除マニュアルの作成
 これまで行われた流出油防除に関する調査研究の成果を集大成としてとりまとめ、マニュアルを作成することにより、蓄積された知識、技術等を広く普及させ、流出油事故発生時に迅速・的確な防除措置を可能とさせる。
 なお、マニュアル自体は本報告書には掲載せず、平成17年度日本財団助成事業「油流出事故対応のための防除技術等の研究成果に関する普及・啓発」における研究成果報告会の場で資料として配付を行うこととする。
 
II 円筒形簡易油水分離装置の試作及び実用化実験
II-1 概要
 流出油事故現場で簡易な方法により回収した混合油水から油分を効率的に分離して回収するための手段を確立するため、円筒形簡易油水分離装置を試作し、大型実験水槽及び海上において実用化のための実験を実施した。
 なお、円筒形簡易油水分離装置の試作に先立ち、15年度に作製した、開放型簡易油水分離装置模型を用いて貯油能力等の基礎調査を実施した。
 
II-2 開放型簡易油水分離模型による油水分離状況等調査
 開放型簡易油水分離装置模型(以後「模型」という。)を使用して静水中における貯油能力等の調査を行うとともに、比重の異なる試験油により作製された2種の混合油水の分離状況を調査した。
 
II-2-1 油水分離装置の貯油能力等の調査
 小型試験水槽に模型を浮かべ、模型内部に試験油をオーバーフローするまで注入し、模型の貯油能力について調査を行った。
 また、その間の模型の挙動(形状変化)についても調査を行った。
 
1 環境条件
(1)実験場所 海上災害防止センター防災訓練所(横須賀)
(2)天候 曇り
(3)風向・風速 南南東の風 7m/s
(4)外気温 28.2℃
(5)水温 26.5℃
(6)湿度 92%
(7)海水比重 1.024
2 使用資機材等
 模型の外観を写真II-2.1に、使用資機材等を表II-2.1に示す。
3 試験油
 試験油については、昨年度の油水分離実験で用いた灯油のほか、灯油よりも比重の大きい試験油として、工業用多用途潤滑油FBKオイルRO46(以後「FBK46」という。)を使用した。
 FBK46の粘度−温度図表を図II-2.1に示す。
 
写真II-2.1 開放型簡易油水分離装置模型外観
 
表II-2.1 使用資機材等
番号 名称 数量
1 実験用模型 1式
2 小型試験水槽(1m角水槽) 3台
3 移送ポンプ(混合油水移送、ドラム取出用) 1台
4 水中ポンプ(海水汲み上げ用) 1台
5 手付きビーカー(5リットル) 3個
6 大型ポリバケツ(120リットル) 3個
7 空ドラム(フタ付き) 3個
8 プロペラかく拌機(架台付) 1台
9 比重計(海水用) 1個
10 メスシリンダー(1リットル) 3本
11 はかり(30kg用) 1個
12 スチールスケール(60cm、1m) 各1本
13 オイルパン(50cm角) 3枚
14 油吸着マット 適量
15 ウエス 適量
16 角材(計測基準点設定用) 3本
17 採証資機材 1式
18 灯油(比重0.79〜0.80、15℃(g/cm2)) 150リットル
19 FBK46(比重0.870、15℃(g/cm2)) 150リットル
20 着色剤 適量
21 ビニール袋 適量
22 ストップウオッチ 1個
 
図II-2.1 FBK46の粘度−温度図表
(拡大画面:192KB)


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