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アメリカの市場にあわせたマンガ販売
 
 次に、私達がアメリカでマンガをどのように販売しているか、紹介したいと思います。二つのことを説明します。ひとつは、表紙デザインについてです。例えば、『頭文字D』の日本版のオリジナル表紙デザインとアメリカ版の表紙デザインには大きな違いがあります。これには大きな理由があります。日本では、マンガの大半、おそらくほとんどすべてですが、最初は週刊誌や月刊誌に載ります。ですから、単行本が発売される時点で、誰でもそのマンガを知っています。単行本の出版を心待ちにしているのです。
 しかし、アメリカには定期刊行の(マンガ)雑誌はありません。単行本が、市場に紹介される最初の形になります。ですから、商品がどういうものか、ストーリーがどんなものか、いい点は何か、表紙で伝えなければなりません。私達が『頭文字D』のオリジナル表紙デザインを見たとき、ストーリーやこのマンガのよさを、うまく伝えているとは思いませんでした。そこで、レースの場面に変えました。このマンガがレースに関するものだと分かるようになり、アメリカの顧客層に、もっと魅力的になったと思います。
 また、別の表紙では、アメリカ人向けとしては、不十分だと思いましたので、私達は日本の雰囲気やサムライの雰囲気をもっと出すように変えました。サムライの刀のような図案の方がアメリカの読者に受けると考え、表紙を変えました。
 中身のページについても、私達は少し手を入れています。「バー」などの擬音表記は、アートの一部として、必ず日本語のまま残すようにしています。その方が、本物らしくなり、アメリカ市場で好評です。ですから、そうし続けています。私達が変えるのは、吹き出しの中だけです。でも、限られたスペースにとても長い言葉を入れようとして、いつも苦労しています。
 
 アメリカや世界でのビジネスについて、いくつか紹介したいと思います。私達がアメリカで出版しているマンガ本は、ほとんどすべて日本の作品です。しかし、アメリカでは韓国のマンガも販売しています。私達が一から作ったオリジナルマンガもあります。
 『RAVE[レイヴ]』については、「レイヴ」だけではダンスのことになってしまいます。アメリカ市場では『Rave Master』(レイヴ・マスター)とした方がいいと考えました。私達の判断が正しかったかどうか、分かりません。その時点では、その方がいいと思ったのですが、どうでしょう。タイトルを変えることもありますが、「最遊記」の場合のように、「最遊記」という漢字を残し、その上にローマ字で「Saiyuki」と重ねるだけのこともあります。つまり、作品によって違いますし、編集者次第という場合もあります。私達の編集者がどう考えるか、ということですが、意見が一致しないこともあります。
 私達は、アメリカで年間約480タイトル、つまり480巻出版しています。ジャンルに関しては、幅広くカバーしており、コメディー、ロマンス、ホラー、SFなどですが、まだまだジャンルは日本に比べて限られています。
 
アニメ販売はテレビ放映をめざして
 
 アニメに関しては、DVDの販売だけでなく、アメリカでのテレビ放映を目指すようにしています。そうすることで、各作品について、ビジネスの可能性を最大化するよう努めています。例えば、『GTO』の場合、マンガを出版し、DVDも出しています。そして、ケーブルチャンネルの「SHOWTIME」でも、番組を放映しています。さらに、アパレル商品なども販売しています。これは、実際には、アメリカの製造メーカーとキャラクター商品販売について、二次ライセンス契約を結んでいます。『頭文字D』の場合、私達がマンガやDVDを販売し、MTVネットワークスで番組化しています。GASというケーブルチャンネルがありますが、ゲーム・アンド・スポーツの頭文字で、MTVネットワークス傘下です。このチャンネルで、もうすぐアメリカでの放送が始まります。さらに、カードゲーム、ビデオゲーム、アパレル、おもちゃなどに関して、アメリカの製造メーカーに二次ライセンスを与えています。
 『RAVE[レイヴ]』つまり『Rave Master』は、アメリカのカートゥーン・ネットワークで放送しています。人気上昇中で、マンガやDVDの販売を私達がしていますが、多くのキャラクター商品について、二次ライセンスも与えています。この作品は、現在ヨーロッパ市場に進出中です。おそらく、近い将来、このアニメをヨーロッパのカートゥーン・ネットワークで見られるようになります。また、ラテンアメリカのカートゥーン・ネットワークでも放送される可能性があります。
 
アメリカの書店での戦略
 
 ここにアメリカの商品陳列の例があります。これが、私達の一般的なディスプレーですが、アメリカの約3000の店舗に置かれています。おもに書店ですが、それだけではありません。本の販売を始めた時、特別ディスプレーのための陳列台を作りました。そこに本を並べ、たくさんの店に陳列台を置きます。2、3年前には、アメリカでは、このようなディスプレーやマンガ専用の書棚は見られませんでしたが、最近では、ごく普通になっています。実は、多くの店で、棚の上に「Manga」と書かれています。ですから、マンガは、普通に使われる言葉になってきています。書店の中には、マンガに膨大なスペースを割いているところもあります。その理由は、アメリカでは、マンガ部門しか成長していないからです。それに対し、他のすべての書籍や雑誌部門は、わずかながら縮小しています。ですから、基本的に、書店のマンガ売場はどんどん拡大しています。
 アメリカの店舗数を見てみましょう。少ないかもしれませんが、アメリカには、全部合わせると、おおむね7万4千軒の小売店があります。ウォールマートやターゲットなどの量販店、バーンズ・アンド・ノーブルやボーダーズ、ウォールデンブックスなどの書店、ゲームストップやレディオシャック、タワーレコードのような専門店、食料雑貨品店、コミックショップ、ドラッグストア、コンビニエンスストアなど、すべて合わせると7万4千軒の小売店ということになります。現在、私達が商品を置いているのは、書店を中心に、そのうち約1万6千店です。ウォールマートやターゲットにも進出中です。専門店でも販売していますし、私達の商品を扱う小売店の数を各部門で増やしています。また、ドラッグストアやコンビニエンスストアにも進出しています。
 
世界市場へ
 
 私達の製品ラインに関して言えば、基本的に、対象は三つのグループに分かれます。6歳以上、12〜15歳、16歳以上です。
 私達が独自に開発したレーティング(対象年齢指定)もあります。マンガの内容により、5つに分類しています。全年齢、年少、ティーン、ハイティーン、成人向けです。成人向けの作品の場合、ビニールフィルムで包装されていて、書店では開けないようになっています。このレーティングの本は、ウォールマートやターゲットのような量販店には置かれません。ですから、そのような本の流通は、非常に限られています。
 『GTO』はティーン向けです。そして、このレーティングの例は、『バトル・ロワイアル』ですが、非常に暴力的です。暴力シーンやセックスシーン、ヌードが合まれる他の作品は、成人向けになります。ハイティーンと成人向けの二つのレーティングの区別はとても難しく、各作品についてどちらが適切なレーティングか、いつも社内で議論しています。編集者がマンガのストーリーや絵に目を通し、レーティングを決定します。
 ビジネス面では、私達はヨーロッパに進出中です。現在、私達の主要市場はアメリカですが、今年、ハンブルグにドイツ支社を開き、10月から出版を始めました。また、ロンドンに作った支社は、6月から出版を開始しました。オーストラリアとニュージーランドについては、ビジネスパートナーがいます。ですから、全体としては、英語圏の全域とドイツで、現在ビジネスを行っています。また、最近、他のヨーロッパの国々ともパートナーシップを結んでいます。
 現在、ラテンアメリカでは商売をしていませんが、時々、ラテンアメリカ企業に関するビジネス講座を会社で開いています。ですから、現地企業と、何らかのパートナーシップを築くか、ライセンス契約を結ぶかもしれません。しかし、現在のところ、まだ主要市場ではありません。
 私達の世界的ビジネスパートナーの例は、こういったところです。日本では、すべてのマンガ出版社と取引があり、アニメ製作会社やテレビ局、ゲームソフト会社などとも関係があります。また、韓国でも一流出版社のすべてと取引があります。アメリカでは、基本的にすべてのハリウッド企業やメディア企業と関係があります。さらに、玩具大手のハスブロ社や出版大手のサイモン・アンド・シュスター社とも良好な関係にあります。
 
これからの構想 シネマンガ
 
 さて次に、我が社の将来の製品をいくつか紹介したいと思います。これは「シネマンガ」と呼ばれるものですが、実はマンガではありません。どちらかというと、日本のいわゆるフィルムコミックスに近いものです。日本で人気がありますが、アニメから画像や場面を抜き出し、本の形にしたものです。それを日本ではフィルムコミックスと言うのですが、アメリカにはこの種の本はありません。そこで、私達がアメリカで出版を始め、「シネマンガ」と名付けました。「シネマンガ」という言葉を使う大きな理由が、ひとつあります。それは、「マンガ」という言葉をアメリカで広めたいからです。ですから、「シネマンガ」という言葉を、意図的に使いました。シネマンガというフォーマットにして、アメリカで販売するのは、『スターウォーズ』のような超人気作品です。この作品はまだ発売していませんが、映画の最終作『エピソード3シスの復讐』の封切りが2005年ですので(アメリカは5月、日本は夏)、封切りと同時にシネマンガ本を発売する計画です。
 もう一つのシネマンガの形態は、スポーツ・コンテンツものです。このかたちの本をアメリカで出版したのは2004年10月だったと思いますが、実際の本のサンプルを持ってきましたので、これも皆さんに回します。手に取った時、中央折り込みページを見てください。これは靴の実際の大きさです。『スター・ウォーズ』の方は、まだ仕上がっていないため、本はありません。しかし、『ファインディング・ニモ』がここにありますので、これも皆さんに回します。
 
 さらに私達は、音楽コンテンツもシネマンガで出版しています。ここに、リンキン・パークの新曲『Breaking the Habit』のシネマンガがあります。この本にまつわるちょっとした話があります。リンキン・パークは自分達のプロモーションビデオを、日本のアニメ製作会社GONZOと作りました。ですから、そのプロモーションビデオは、アニメになっています。GONZOのプロデューサーが、私達TOKYOPOPとバンドのメンバーを引き合わせました。私達のスタッフがバンドと会い、シネマンガのプロジェクトの話をすると、彼らは大変気に入りました。そこで、彼らのアニメをシネマンガにして、アメリカで現在販売しています。
 
 私達が現在取り組んでいるもう一つのプロジェクトがあります。今、ハリウッド企業と手を組んでいます。私達は、『スタートレック』をマンガ化する権利を持っていますので、まず、マンガ版の新シリーズのストーリーをアメリカで書き、日本に持ってきます。そして、日本のマンガ家と協力して、まったく新しいマンガを作ります。実際には、このマンガの製作は、つい最近始まったばかりです。
 また別のプロジェクトですが、『ガーフィールド』のマンガを作ることになっています。まったく新しいシリーズです。そこで、『ガーフィールド』の作者ジム・デービスと協力して、ストーリーを書いているところです。そのストーリーをもとにして、日本のマンガ家を探し、『ガーフィールド』のまったく新しいマンガを作ります。
 これもまた別の例ですが、皆さんの多くは、『Warcraft』というゲームソフトを知っていると思います。私達は、そのゲームをマンガ化する権利を持っていますので、そのために、韓国のマンガアーティストと手を組みました。これらが、韓国人マンガ家が描いたマンガのサンプルです。
 最後になりますが、『Princess Ai』という私達のオリジナル作品があります。基本的に、ストーリーはコートニー・ラブと一緒に練り、キャラクターは彼女自身の特徴に基づいています。ストーリーにコートニーは登場しませんが、新しいキャラクターを、コートニーのキャラクター・デザインに基づいて作りました。それから、日本でとても人気のある矢沢あいが、キャラクター・イラストレーションを担当し、別のマンガ家が実際のマンガを描いています。ですから、この場合も、日米のアーティストの共同制作で、まったく新しいマンガを作っています。私達はそういう方向に向かっています。さらに多くのオリジナルマンガや独自プロジェクトを、日米のアーティストの共同制作で進めていきたいと思います。もしかしたらヨーロッパのアーティストも加わるかもしれません。
 
 我が社の最高経営責任者曰く、「すべてのバックパックに一冊のマンガを」。私達のビジネスの究極の目標です。







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