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 東京財団研究推進部は、社会、経済、政治、国際関係等の分野における国や社会の根本に係る諸課題について問題の本質に迫り、その解決のための方策を提示するために研究プロジェクトを実施しています。
 
 「東京財団研究報告書」は、そうした研究活動の成果をとりまとめ周知・広報(ディセミネート)することにより、広く国民や政策担当者に問いかけ、政策論議を喚起して、日本の政策研究の深化・発展に寄与するために発表するものです。
 
 本報告書は、「朝鮮半島情勢の中長期展望と日本」研究プロジェクト(2003年4月〜2004年3月)の研究成果をまとめたものです。ただし、報告書の内容や意見は、すべて執筆者個人に属し、東京財団の公式見解を示すものではありません。報告書に対するご意見・ご質問は、執筆者までお寄せください。
 
2005年2月
東京財団 研究推進部
 
東京財団 「朝鮮半島情勢の中長期展望と日本」研究プロジェクト
プロジェクトリーダー 平田隆太郎
 
 本プロジェクトは平成15年度で2期目となる。1期目は、平成14年9月17日、小泉首相の訪朝直後に東京財団より緊急要請を受け、年度途中からスタートし、平成15年3月末に下記の緊急提言と論文を提出した。なお、本プロジェクトは、従来の金正日政権との共存を前提とする提言とは違い、共存を必ずしも前提としない提言を行うことを委員間で確認し、東京財団からも了承を得て研究を開始したが、この基本認識は第2期にも引き継がれている。研究体制および各期の提言および論文は以下のとおりである。
 
【研究体制】
プロジェクト・リーダー 平田隆太郎
(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための(研究代表者)全国協議会「救う会」事務局長)
 
プロジェクト・メンバー 惠谷 治(ジャーナリスト)
(共同研究者) 島田 洋一(福井県立大学教授)
西岡 力(東京基督教大学教授)
李 英和(リ ヨンファ)(関西大学助教授、RENK代表)
 
【第1期 緊急提言】(研究期間:2002年10月〜2003年3月)
 
第1部 緊急提言
1. 時間だけが金正日の味方
−政府は国家に対する潜在的な脅威についての正確な情報を国民に告知せよ
2. 経済制裁は効果がある
−拉致問題完全解決のため金正日政権に期限を切って制裁実施を通告せよ
3. 日米同盟強化で対抗せよ
−暴発カードに恐れを見せてはならない
4. マニュアルよりも人材を
−金正日政権崩壊に備え国内有事体制の整備を
5. コメよりご飯を
−北朝鮮への国際人道援助は炊き出し援助で
6. 避けられない難民流出に備えよ
−大規模難民流出促進政策が金正日政権の平和的崩壊を導く
 
第2部 論文
1. テロとの戦争と北朝鮮の「政体変更」
島田洋一(福井県立大学教授)
 
2. 北朝鮮の核兵器開発の実情
惠谷 治(ジャーナリスト)
 
3. 日本人拉致の概要と救出運動
西岡 力(東京基督教大学教授)
 
4. 北朝鮮の食糧・農業の現状と国際人道支援の諸問題
平田隆太郎(「救う会」事務局長)
 
5. 大規模難民の流出促進政策が金正日政権の平和的崩壊を導く
李英和(関西大学経済学部助教授)
 
 委員は引続き同じメンバー5名であるが、今期は、国際的視野を取り入れることに力点を置き、委員を各国に派遣し、分担して行った研究素材をもとに相互討論等を行った。その結果は、下記の提言と論文に反映されている。なお、提言については執筆者名を末尾に明示してあるが、相互の批判や助言を踏まえて作成されたものである。論文は提言と同じく相互の批判や助言を得て作成されたが、文責は執筆者にある。なお、東京財団の機関誌「日本人のちから」誌上で論文の趣旨の一部を既に発表したものもある。
 さらに、第3部として資料を付した。一つは、惠谷委員がロシアで行った聞取り調査内容で、北朝鮮の核開発関連の情報を多数入手することができた。二つは、安明進元亡命工作員を招いてのヒアリング資料で、「日本に工作員が200〜300名浸透している」などの本邦初の情報も含まれている。なお、安明進氏は、北朝鮮研究において多様な問いに答えてくれるばかりでなく、多大な助言を与えてくれる貴重な存在であり、3期には委員として参加してもらうこととなった。さらに、平成15年末に北朝鮮外務省要人と北京接触を行った時の西岡委員のメモも加えた。
 
 第2期の提言及び論文は以下の通りである。
 
【第2期】(研究期間:2003年4月〜2004年3月)
第1部 提言
総括提言
金正日政権に対する価値判断を下すべきとき
−政体変更を目指す日米韓朝諸勢力間の協力強化を
 
提言各論
提言1. 金正日の核武装の恐るべき実態を直視せよ
提言2. 日本は経済制裁を発動せよ 政府は対北朝鮮専門組織を作れ
提言3. 国連安保理決議1441号(対イラク)の規定を対北朝鮮政策にも適用せよ
提言4. 日米議会は「北朝鮮民主化法」(仮称)を早期に策定せよ
提言5. 韓国政府、中国政府にも圧力を行使せよ
 
第2部 論文
論文1. ロシアから見た北朝鮮の核開発
惠谷 治(ジャーナリスト)
 
論文2. 北朝鮮に取り込まれる韓国
西岡 力(東京基督教大学教授)
 
論文3. アメリカの対北朝鮮戦略と日中韓の対応
−本プロジェクトにおける訪米・訪中・訪韓を通じて
島田洋一(福井県立大学教授)
 
論文4. 最近の北朝鮮社会情勢と難民問題の動向
李 英和(関西大学助教授)
 
論文5. 国民意識が大きく変化した平成15年
−政府は対北朝鮮専門組織を作れ
平田隆太郎(北朝鮮問題研究家)
 
論文6. 金正日政権下の大量餓死について―餓死者300万人の根拠
西岡 力(東京基督教大学教授)
 
第3部 関連資料
1. ロシア取材報告  惠谷 治(ジャーナリスト)
2. 安明進氏聞取り  安 明進(元北朝鮮工作員)
3. 北京接触について  西岡 力(「救う会」常任副会長)







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