日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/08/04 産経新聞朝刊
【主張】中国ミサイル 背後の意図を注視したい
 
 中国が新しいミサイルの発射実験をした。射程八千キロ、固体燃料方式で核弾頭を搭載する「東風31号」とみられる。中国は、この実験について「必要な国防力の開発は、国家の主権と領土を守るためで、いかなる国にも脅威となるものではない」としているが、周辺諸国にとって、中国の核戦力増強が脅威にならないはずがない。わが国には、北朝鮮ミサイル以上の重大な脅威と受け止めざるを得ない。
 中国の「国家主権を守るためだ」という論理は、北朝鮮の主張する「ミサイル開発は自主権の問題」と同じである。しかし、北朝鮮より何倍もパワフルな中国が、一方では先ごろの東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議で、東南アジア非核地帯条約の付属議定書(核兵器の使用、核兵器による威嚇はしない)への署名の方針を明らかにしながら、他方では核戦力を背景にした国家戦略をまっしぐらに突っ走っている現実が明らかになったのである。これでは、中国の主張を額面通りには受け取れない。それだけに巨大な脅威も意識しないわけにはいかない。
 「東風31号」に組み込まれている弾頭はことし五月、米下院のコックス委員会が「中国は米国の核弾頭小型化技術を盗み、それを新型ミサイルに搭載しようとしている」と指摘した問題の弾頭である。また、「東風31号」の射程は米本土の一部に達するため、米中関係はさらに複雑さを増していくだろう。アジアでも、領土問題などで核の能力を背景にしたパワーポリティクスが展開されていくと思われる。
 そうした流れのなかで、われわれの取るべき対応の第一は、まずこうした中国の隠された意図を見誤らないことである。そして、警戒感をもち続けることだ。
 スプラトリー(中国名・南沙)諸島のような力を背景にした領土紛争が、わが国に及ばないよう配慮する必要も生じる。尖閣諸島については、これまで以上に「日中間に領土問題は存在しない。尖閣諸島はわが国固有の領土である」という主張を、諸外国にアピールしていきたい。領土問題では、外国に乗ぜられるようなスキをつくってはならないのである。
 第二は、直接的な脅威である核ミサイルに備えるために、米国との戦域ミサイル防衛(TMD)開発に一層の努力を注ぐことだ。防御手段があれば、脅威が脅威でなくなるからである。中国はこれまでも、「TMD開発は、新たな軍拡を招く」と反対してきたが、中国流にいえば、これこそ「主権の問題」であり、しかもまったく攻撃性のない防御手段なのである。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら

日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
84位
(35,650成果物中)

成果物アクセス数
164,194

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2023年3月18日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
2.私はこう考える【天皇制について】
3.私はこう考える【国連について】
4.私はこう考える【ダム建設について】
5.私はこう考える【死刑廃止について】
6.私はこう考える【北朝鮮について】
7.私はこう考える【自衛隊について】
8.私はこう考える【憲法改正について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から