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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/01/05 読売新聞朝刊
[社説]新時代に挑む 「富強」を目指す中国の責任
◆目標は「総合国力」の増強
 中国はいったいどこへ向かっているのだろうか。
 世界、とりわけアジア太平洋地域の今後を考えるとき、その問いは切実かつ重要なものとなっている。中国の存在がますます重みを増しているからだ。
 中国自身の描く青写真によれば、二〇一〇年の国民総生産(GNP)を二〇〇〇年の二倍に増やすのが当面の目標だ。二十一世紀の半ばには近代化をなし遂げ、国民一人当たりのGNPで中進国の仲間入りを実現したいとしている。
 そのとき、「富強で民主的で文明的な社会主義国」ができあがっているという計算だ。日本を追い抜き、米国に肩を並べる経済大国になっているかもしれない。
 「富強」が国家目標である。経済力や軍事力、それに科学・技術力なども含めた「総合国力」を増強することだ。
 そこには、西欧列強や日本によって半植民地状態にさせられたという屈辱の歴史があり、その歴史に学んだ教訓がある。国力への信奉だ。
 中国は一九九七年の香港返還に続いて、昨年末にはマカオの返還を実現した。江沢民国家主席はマカオ返還に関して、「中国と中国人民の強大な力を物語る」と胸を張った。国力の躍進をもたらしたのは、過去二十年間の改革・開放だ。
 故トウ小平氏の功績に帰せられる改革・開放は、数千万人の餓死者を出した一九六〇年前後の大飢餓時代と、二千万人が「異常な死」を遂げたという文化大革命時代(一九六六年―七六年)の挫折から生まれた。
◆曲がり角に立つ改革・開放
 経済の発展を何よりも優先し、そのためには平和な国際環境が必要だとして、全方位外交が追求された。おかげで年平均10%近い高度成長時代が到来し、GNPは世界七位にまでふくらんだ。国民生活も総体として着実に向上した。
 だが、建国五十周年を祝ったばかりの中国は、大きな曲がり角に直面している。
 経済成長の減速に、それがまずうかがわれる。成長率は、アジア経済危機の影響も加わって、一九九二年以降ずっと右肩下がりだ。昨年は目標の7%を超えたとされるが、鈍化傾向に変化はない。今年の目標も同じ7%と言われる。
 所得格差、地域格差が拡大している。個人間で、地域間で、貧富の差がますます大きくなっており、経済発展に取り残された人々や地域の不満が増大している。
 「金もうけはいいことだ」という哲学に支えられた改革・開放は、私益追求・拝金主義の風潮をはびこらせ、礼儀や道徳を廃れさせた。
 昨年「邪教」として弾圧された新興気功集団「法輪功」が、一億人とも言われる人々をひきつけた背景には、金銭しか信じられなくなった中国社会への批判がある。
 経済は市場経済、政治は一党独裁という「社会主義市場経済」が内包する矛盾も深まっており、一党独裁を続ける共産党や各レベルの政府で、腐敗が蔓延(まんえん)している。
 国民の共産党離れ、共産主義離れも深刻で、利害や価値観の多元化は、経済発展のためには権威主義的支配が必要だとする開発独裁的な政治体制を掘り崩している。
◆望まれる持続的な経済発展
 安定した政治の下で、経済を引き続き発展させていけるのか。中国の前途を断定的に語るのは困難だが、中国は、国有企業改革と内陸部開発を、今後の経済発展の重要課題と位置づけている。
 国有企業改革は、今年中にめどをつけ、二〇一〇年までに完了するという構想だ。改革を進めれば、失業者が増えて社会不安を招く。改革を怠れば、赤字が増えて発展の足を引っ張る。難問である。
 これまで経済発展の機関車役を務めてきたのは、東部の沿海地域だった。発展の遅れている中西部の内陸地域の開発は、地域格差を縮小するためにも不可欠だ。その際、やはり外資が頼りとなろう。
 中国は、今年前半の実現が確実視されている世界貿易機関(WTO)への加盟が、国有企業改革や外資導入の促進剤となることを期待している。
 トウ小平世代を引き継いだ江沢民氏らの「第三世代」は、将来の発展に自信を示し、経済大国化した中国が脅威になるとの「中国脅威論」に対し、発展しないことこそが脅威だと反論している。
 昨年末に訪日した共産党内序列四位の李瑞環氏も、中国脅威論は「中国が発展しないようにするため」と批判し、経済が発展しなければ、「人々は飢餓や貧困のために国外へ逃げ出」し、かえって「脅威」になりかねないと指摘した。
 十三億に迫り、約四十年後には十六億近くに膨れ上がる人口大国、中国の持続的な経済発展は、地域の安定と繁栄にとっても肝要だろう。経済停滞による難民流出といったシナリオは悪夢に違いない。
◆責任大国か、覇権大国か
 ただ、脅威でないと言うのであれば、少なくとも、領有権をめぐる対立では事態を複雑化させる行為を慎むこと、増強を続ける国防力をより透明なものにすることが求められる。国防費は一九八九年以降、毎年二けたの伸び率で増えている。
 中台関係でも、平和的に解決すべきだとする国際社会の意向を踏まえた自制的な言動が求められている。
 三月には台湾の最高指導者を選ぶ総統選挙が行われる。四年前の前回選挙時、中国は選挙結果に影響を与えようとして、台湾周辺でミサイル発射演習を行い、台湾住民と国際社会の反発を招いた。
 私たちの期待は、中国が、地域の平和と安定に貢献する協調的な責任大国となることであり、懸念は、脅威と不安定をもたらす拡張的な覇権大国となることにある。
 
 
 
 
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