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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/11/18 読売新聞朝刊
[社説]「トウ以後」へ構造改革急ぐ中国
 
 中国共産党が市場経済化の加速に向けて大胆な制度改革に乗り出した。
 先日開かれた第十四期中央委員会第三回総会(三中総会)での「決定」は中国のいう「社会主義市場経済」の確立をめざす包括的な発展戦略の青写真である。
 「決定」で注目されるのは、経済運営での政府の役割を、直接管理から経済手段による間接的マクロ管理へ転換したことだ。市場経済化にとって不可欠なことだ。
 国有企業を法人化し、株式会社化する方向も打ち出した。国を含む出資者に資産運用の責任を負うが、経営は独立採算とし、国は直接、干渉せず、同時に無限責任も負わない。国有企業の活性化がねらいだ。現在、国有企業は三分の二が実質赤字で、その補てんが財政の足を引っ張ってきた。
 財政・税制では、地方政府が徴税し、一定額を国に上納していた制度を、徴収段階から国税と地方税に分ける「分税制」に改める。国と地方の取り分が国に有利になるだろうが、地方には還付金を出す。
 中国人民銀行を中央銀行として公定歩合など独立の金融・通貨政策をとらせ、開発銀行など政策銀行と自己責任の商業銀行を育成する。変動相場制を採用、統一ルールの外為市場を樹立する。価格自由化、養老、失業保険制度の整備、労働力市場、不動産市場、金融市場の発展もうたわれた。
 さらに、国際経済のルールに合致する対外経済体制の改革も強調された。
 これら多岐にわたる改革は、資本主義体制では当たり前のことが多いが、中国の経済体制が限り無く資本主義体制に近づきつつあることを示してもいる。
 では社会主義市場経済とは一体、何なのか。改革・開放の「総設計士」トウ小平氏によれば、社会主義の本質は生産力を発展させ、搾取を根絶させ、最終的には共に豊かになることである。中国の学者は政治で「共産党の指導」、経済では「公有制が主体」が社会主義とも言う。その公有制も手段の一つになることだってあり得よう。
 トウ氏は計画経済も市場経済も手段だと喝破した。トウ氏流の合理主義だが、市場経済が生産力の発展に有利なことは確かだ。
 「決定」はトウ路線の帰結でもある。トウ氏の権威の下で、「トウ以後」をにらんでトウ路線の構造的定着をめざすものだ。中国経済が陥りがちだった過熱、引き締めの振幅を小さくするねらいもあろう。
 基本的には中国の市場経済化の加速は歓迎できる。問題は過渡期の摩擦だ。構造改革には既得権益層や地方の抵抗もあろう。貧富の格差、地域格差の問題もある。インフレが社会的不満を醸成する恐れもある。民主化への欲求が内攻していないか。
 中国は開発独裁、権威主義政治下の富国路線を歩み出したかに見える。その先に民主化への軟着陸はあるのか。トウ以後の安定と発展は必ずしも保証されていない。党指導部は難しいかじとりを求められる。
 構造改革は来年から順次、実施に移される。来年には、トウ氏も九十歳だ。世界は高度成長の道を突っ走る十二億人の巨大な市場の行方を注視している。
 
 
 
 
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