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(5)蝋絞り
 舟型のドウと呼ばれる蝋絞り器の中央部の左右両側にカタと呼ばれる板を入れ、その間に蒸し上げた木の実を入れた麻袋をはさみます。カタの両側にヤを差込み、掛矢(杵)でヤを打ち込みながら蝋を絞る作業です。絞られた蝋は生蝋(きろう)と呼ばれます。
 掛矢の打ち方は最初軽く、ヤが落ち着いたところで強く打ち、締めていきます。この作業は二人が交互に打ちますが、とても力のいる重労働です。
 掛矢で締めると、ドウの真下にあるタメバコと呼ばれる箱に絞られた蝋が流れてきます。生蝋といいます。タメバコにはあらかじめ石鹸水を塗っておくと蝋が冷え固まっても逆さにすれば抜けます。(昔はサイカチの実を揉んだ汁を使用した)
 蒸した蝋の温度を下げないよう手早く行われなければなりません。絞りの作業は最も多くの労力と、高度の技術が必要とされます。
 
蝋絞り ヤを交互に打ちこむ
 
ヤで打ち締めると少しずつ蝋が流れてくる
 
 一日多くて十回実を蒸し、絞ることができます。蝋粉等の状態によりますが、一五〇〇グラム前後の蝋が絞れます。しかし、これだけの量では蝋掛けを始めることはできません。三日くらい絞ってから始めます。
 
絞り出された生蝋
 
 藩政時代、生蝋のまま菰に包み蝋年貢として藩や幕府に献上され、当時の蝋役人をたとえて、会津では最初いばりちらし、後からこそこそする人を「蝋役人のようだ」などという言葉もあります。







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