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坂本忠雄
(さかもと ただお)
Mr.Tadao Sakamoto
 
元「新潮」編集長
ex-editor in chief of Sincho
1935年生まれ
開高健記念会 会長ほか
 
中島健一郎
(なかじま けんいちろう)
Mr.Kenichiro Nakajima
 
毎日新聞社 常務取締役
事業担当
Managing Director of the Mainichi Newspapers
1944年生まれ
 
選考委員長
Chairman
三浦朱門
(みうら しゅもん)
Mr.Syumon Miura
 
作家
Author
1926年生まれ
日本芸術院長ほか
著書:「冥府山水図」「箱庭」「武蔵野インディアン」「武蔵野ものがたり」「天皇」「わが老い伴侶の老い」他多数
 
 選考委員になってと突然言われ、その内容を十分理解しないままお引き受けしたのは5年前のことでした。そして、送られてきた「社会貢献者表彰」候補の分厚い資料を拝見し、こんなにも多くの方々が様々な分野で社会に貢献されていることを知り、驚くと同時に感銘を受けました。中には既に新聞等で報道されている方もおられましたが、殆どの方のご功績は初めて知ることばかりで、この中から限られた数の方々を選び出すのは大変な仕事だと思いました。その思いは今も変わりません。
 平成16年度は、222件の候補の中から受賞対象として26件を選びました。第一部門の「緊急時の功績」では、火災現場での人命救助が1件と、水難事故に際しての人命救助が3件、計4件を選びました。そのうち2件は、自らの生命を犠牲にしての人命救助という痛ましくも尊い功績でした。
 第二部門「多年にわたる功労」で選んだ11件のうち、国の内外を問わず何らかの形で子供の教育に関連した功績が4件を占め、これまでの障害者・福祉関連中心の傾向にやや変化が見られました。また、自然災害が多発する昨今、ボランティアの被災地救援活動の効率的なコーディネートの重要性が増しておりますが、その点で成果をあげてきた全国ネットワークが受賞団体に選ばれたことも本年の特徴と言えましょう。
 第三部門「特定分野の功績」では、「海の貢献賞」3件、「国際協力賞」2件、「ハッピーファミリー賞」3件、「21世紀若者賞」3件の計11件と、第三部門としては過去最多の件数となりました。中でもハッピーファミリー賞に3件が選ばれたことには、少子化の進展と家族の絆の弱化に対する各委員の危惧が窺われます。また、海の貢献賞では、所謂マイスターの方々3名が選ばれました。
 以上の選考にあたっては、各委員から忌憚のない意見が述べられました。対立する意見も議論を尽くしているうちに何とか自然に一つに纏まってゆくものですが、時には、どうしても結論が得られず見送られたケースもありました。しかし今年度は、概ね順調に各委員の意見が一致したのではないかと思います。
 戦前は新聞で殺人事件の記事は殆ど見かけませんでしたが、たまにあれば大変な騒ぎだったと記憶しています。それが、今や日常茶飯事。中には親が子を殺し子が親を殺すなど考えられない事件が多い中、社会の各分野で様々な貢献をされておられる方が大勢おられることは誠に喜ばしい限りで、これからもこの輪を広げるべく、事務局は勿論我々委員も心がける努力が必要ではないかと思います。
 
選考委員 犬丸一郎
 
「こども読書推進賞」選考を終えて
 諸外国と比較した日本の子供たちの学力低下などを危惧して、文部科学省が推進してきたいわゆる「ゆとり教育」が見直されるという。遅きに失した感がしないでもないが、学力も含めた最近の子供たちの生活ぶり全般を見ていると「ゆとり教育」による弊害は明らかで、見直し自体は歓迎されることだろう。考えて見れば、詰め込み主義の偏差値教育からの脱却を謳い文句に「ゆとり教育」が導入されたころから、皮肉なことに世の中には各種ゲーム機やワープロ、パソコン、そして携帯電話・・・などが次々に登場。新たに設けた“ゆとりの時間”がこうした機器の出現なども手伝って予期せぬ使われ方をされてきた。
 その結果何が起こったかというと、本来は子供のころに習慣として身につけておかなければならない『「読む」「書く」=「考える」』ことの大切さがないがしろにされ、「読み書き算盤」という基本的な訓練がないまま成長するいびつな形の若者が増えてきたように思う。そんな中、この「読み書き」という大事な要素をなんとか復活させなければということで全国各地の小中学校を中心にさまざまな形の「読書推進運動」が起きてきた。なかにはこの運動を普及させることが荒れる学校の非行防止にも有益だという“副産物”まで生まれ、最近は家庭、学校から周辺地域にまでますます広がりを見せている状況だ。
 社会貢献支援財団が33回を迎えた社会貢献者表彰に合わせ、こうした読書推進運動に貢献している団体や個人を表彰してその活動内容を広く知ってもらうために一昨年から設けた「こども読書推進賞」は時代の要請を踏まえたグッドタイミングな制度で高く評価されるべきものだと思う。選考委員の一人としてそんな活動に少しでも“貢献”できることをありがたく感じている。
 もっとも、第1回選考と同じように第2回の今回も受賞者を3組だけに絞るのはなかなか難しい作業だった。沖縄県の川平栄子さんは、個人で発足した文庫が15年の間に自然体の形で学校や地域に波及し一層広がりを見せようとしていることが審査員の共感を呼んだ。また東京都中野区の桃園第三小学校PTA親子読書会は、お仕着せでない親子の読書会という活動を35年の長きにわたって続けている持続力が高く評価された。さらに、岡山県の哲西町立野馳小学校は民話に力を注いでいるユーク性とビデオ(映像)を作っていることのオリジナリティーが注目された。このほかにも、学校と公民館が一緒になって図書ネットの輪を広げている紫波町図書支援グループほん太ネットなど是非参考にしていただきたい活動が多々あった。さらに、私が勤めている産経新聞社でも同じような趣旨で昭和29年以来毎年、すぐれた児童書の出版社や作家らに「産経児童出版文化賞」を贈呈しているが、近い将来に「こども読書推進賞」とうまくリンクできればと考えていることも付記しておきたい。
 
選考委員 大倉 明







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