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平成16年度
社会貢献者の記録
The 2004 FESCO Awards for Social Contribution
 
社会貢献支援財団
Foundation for Encouragement of Social Contribution
 
まえがき
Foreword
 平成16年度も、皆様のご協力の下、29件の素晴らしい社会貢献者の方々を表彰させて頂くことができました。ご推薦者の方々、事業助成をいただいた日本財団、ご後援を賜った内閣府・総務省・外務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省ほか、ご協力くださった関係各位に厚くお礼申し上げます。
 本年度は「緊急時の功績、多年にわたる功労、特定分野の功績」の三部門222件と「こども読書推進賞」222件の候補者の方々をご推薦いただきました。受賞者の選考は表彰選考委員会において厳正に行われ、第一部門(緊急時の功績)4件・第二部門(多年にわたる功労)11件・第三部門(特定分野の功績)11件と、こども読書推進賞3件、計29件の方々の受賞を決定いたしました。平成16年11月、常陸宮殿下同妃殿下のご臨席の下、表彰式典を挙行し、受賞者の方々を表彰させていただくとともに、日本財団賞をお贈りいたしました。
 受賞者の最年少は24歳、最年長は92歳の方でした。第一部門の受賞者は、自らの危険を顧みず人命の救助に当られた方々で、そのために尊い一命を捧げられた方も含まれております。第二部門は、多年にわたり社会貢献活動に取り組まれ、著しい功績を挙げられた方々。第三部門では海に関わる功績を挙げられた方々や積極的に社会に尽くされている若者達などを表彰させていただきました。また「こども読書推進賞」として、こども達の読書活動の推進に成果を挙げておられる学校や団体、個人を表彰いたしました。
 受賞者の方々は、勇気を持って行動され、時として犠牲を払い、また多年にわたって困難を乗り越えて活動を続けられるなど、よりよい社会の発展のために尽くされました。この表彰によって、これらの方々の輝かしいご功績が広く知られ、社会をより豊かにすることができれば、これに優る喜びはありません。
 
社会貢献支援財団
会長 猪熊葉子
Chairperson of Foundation for Encouragement of Social Contribution
Yoko Inokuma
 
 
常陸宮妃殿下
 
常陸宮殿下のお言葉
 本日、ここに、社会貢献支援財団の平成十六年度社会貢献者表彰式典に臨み、栄えある表彰を受けられる皆さんにお会いできたことを大変嬉しく思います。
 皆さんは、よりよい社会をつくり明るい日本の未来を開くため、国の内外において人命救助を始め、多年にわたり社会福祉の増進や国際社会への貢献、青少年の指導育成など様々な分野で顕著な功績をあげてこられた方です。その尊い行いは、世の人々の立派なかがみであり、深く敬意を表します。
 なかでも、人命救助や災害防止のため、尊い一命を捧げられた方の勇気ある行いは、未来末永く語り継がれることと思います。ご遺族のお気持ちはいかばかりかとお察しし、心から御冥福をお祈りします。
 本日表彰を受けられた皆さんが、これからも一層活躍されることを期待するとともに、皆さんの立派な行いを手本として、われわれもまた、少しでも世のため人のために尽くしたいものであります。
 
委員長挨拶
 
 本日は常陸宮・同妃両殿下におでましをいただき、受賞者のみならず、そのご家族、ご友人、すべての方々のご出席を頂いて、こんなにも盛大に式を行うことができましたことを、心から感謝申しあげております。
 私はこの賞の選考委員の一人として働かせて頂いているのですが、この選考委員会ほど楽しくおもしろいものはありません。選考委員は皆さま一癖も二癖もおありの方々なので、意見も全く違う時もあるのですが、共通しているのは、尊敬の快楽を知っているということでしょう。こんなところに、こんなすばらしい方がおられるのか、ということを知ることは、純粋の快楽であり、幸福だと私は思っております。
 昨今の社会情勢を見ますと、世界は憎しみと対立を二つの主な情熱として動いているように見えます。一方、日本のマスコミの一部は、あたかも人の心の中に破壊的な情熱があることを認めることさえ罪であるかのようなポーズを取っておりますし、そのような虚偽的な認識が人道的だと思っているようにも見えます。
 しかし人間が二本の足で立っているその土壌は、実は愛と憎しみの双方からなる大地の上に、またがっているのが現実です。憎しみが荒れ狂うように見える戦闘の場にも、必ず小さな愛の証が燃え続ける現実を私たちはしばしば見聞きしますし、愛のぬくもりの中にも瞬間的に単純な増悪が入りこむことも日常生活の中で体験します。しかしいずれにせよ、憎しみが実在するところには同時に必ず愛も共生しています。この認識を持ち、その矛盾に苦しむことが、もしかすると人間の義務なのかと思う時もあります。
 私は始終信仰から離れがちなキリスト教徒なのですが、新約聖書の中の『使徒言行録』の中に、「受けるよりは与える方が幸いである」というイエスの言葉が記されているのを読む度に、いつも心が震えるのを感じます。戦後の日本は決してこのような真理を教えませんでした。「要求することが市民の権利である」ということしか言いませんでした。しかし聖書はいかなる時流にも乗ることなく、この言葉をまた変えることもありませんでした。そして今日、受賞された方々は、仏教、神道、キリスト教、ほかいろいろな信仰的心情をお持ちでしょうが―そしてまた私はそのお一人お一人の信仰を存じあげてもいないのですが―皆さまそれぞれの心の土壌の上に立って、この「受けるより与える方が幸いである」ということを実行して来られたのです。その意味で、宗教的な対立はなくて済むのだということが、ここでも実証されたのです。
 毎年申し上げていることを、今年も繰り返して申しあげます。今日の賞金は、立派なことにお使いくださらなくてよろしいのでございます。ご家族と小さな感謝の旅行をなさったり、失礼をも省みず申しあげれば、皆さまのお住まいがもう長年放置されて古くなっているようでしたら、どうぞお台所やお風呂場をきれいになさるのにお使いください。甘いもののお好きな方は、心ゆくばかりおいしいケーキを買ってお友だちと召し上がるのにお使いください。そして充分にお休みになって、再びお元気に、人生の最後の日まで、ご自分のお立場、貴重な才能、ご健康や体力に合ったお働きをお続けくださいますようにお願いいたします。
 皆さま、受賞者たちを励ましに来てくださいましてほんとうにありがとうございました。
 
2004年11月15日







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